21階層
今回お色気要素少し含みます
サマリと会った次の日、俺たちは早速迷宮に来ていた。
「お疲れさん、精が出るねぇあんたらも」
「お疲れ様です。 まぁこれが目当てで来ているんで」
「そうか、俺は当たり前過ぎて慣れちまってるが、ラービスの外の奴らにとってはこの迷宮は名所みたいなもんなのか」
「そうですよ」
「なんともまぁ、随分と血生臭い名所なこった」
「同時に宝の眠る場所ですからね」
「俺にはいまいち理解しきれんがな。 まぁあんたらには似合わんかもしれんが、気をつけてな」
「えぇ、どうも」
俺たちはいつもの受付と軽い雑談をした後、21階層に転移した。
転移してすぐ、俺たちは21階層から始まる密林階層の洗礼を受けた。
「あっついな……」
「なんていうか、すごくジットリとした暑さですね……」
「そうだね……休憩を多めにしながら進んでいこうか」
「はい、わかりました」
密林階層はとにかく暑かった。前回来た時は階層登録をしただけで長時間いなかったのでわからなかったが、予想以上に暑かった。俺たちは密林を歩き出してから十分もすると、体からは汗が止まらなかった。ここに更に、密林特有の視界の悪さと移動を阻害する草木が合わさって、想像より遥かに体力を消費させられる。
「ふぅ、まだ少ししか経ってないけど休憩しようかリリー」
「あ、はい」
俺たちは密林階層で見つけた小さな洞穴のようなところに入り、腰を掛けた。洞窟の中は幾分かマシで、俺は入ってすぐに荷物を鏡の世界にしまってから、頭から水魔法で生み出した水を浴びた。
「ふぅ、まいったな。 この暑さはどうにかしないと……ねぇ、リリー?」
「え?! あ、はい、ですね」
「リリー?」
「は、はい?」
リリーに声をかけたが何やら挙動不審な返事が返ってきた。しかも何故かいつもより距離が遠い。俺が一歩近づくと、リリーは一歩下がってしまう。もしかして俺、嫌われた?!
「え、俺何かしちゃった?」
「い、いえそうではなくてですね……」
リリーの視線が泳いだ。俺は少しの間の後、自分を見て気付いた。
「もしかして俺、汗臭い?」
確かに21階層に来てから今までにないぐらいの汗をかいている。今まで気づかなかったけど、確かに自分で自分の匂いを嗅いだら汗臭い。これはリリーが距離を取るのも納得だ。
「ごめん気がつかなくて。 離れるね」
俺は笑ながら少し距離をとった。そうだよな、リリーも年頃の女の子だし、その辺りは気を遣ってやらないとな。
「い、いえ……あの、その」
「ん?」
「ミラト様の汗が嫌というわけではなくてですね……その、私の汗が……」
とリリーは恥ずかしそうに訂正した。言われてみると確かにリリーもすごい汗をかいており、多量の汗でインナーが肌にぴっちりと張り付いている。そのせいでリリーの魅力的な体のラインがしっかりと浮かび上がってしまっている。幸い周りに人がいないようで、この姿が見られることはない。
「一旦鏡の部屋に戻ってお風呂に入ろうか、リリー」
「す、すみません」
「いいのいいの、気持ち悪いもんね」
俺は移り鏡を鏡の部屋に繋いで、転移するためにリリーを呼び寄せた。
「じゃあいこうか。 対策はゆっくり考えよう」
「はい」
「あ、あと」
「はい?」
「俺はリリーの汗の匂いも恥じらう姿も含めて全部好きだよ?」
「なっ?!」
俺はそれだけ言って先に移り鏡をくぐった。
一緒に入浴したかどうかはご想像にお任せします。入浴時間は二時間以上かかったとだけ言っておきます。