話の内容
今回奴隷に対する暴力描写などが含まれます。嫌な方は飛ばしてくださっても構いませんが、その後にあるキャラの正体も分かるのでもしよかったら頑張ってみてください。お願いします。
「アザレアを探して、連れてきて欲しいのです」
「探して欲しいのはわかりましたが、なぜ冒険者を?」
「そ、それはですね……そ、そう! ア、アザレアが迷宮の中に入っていくのを見たというものが居ましてですね……」
「なぜ迷宮に? 保護するのであればアザレアという少女は迷宮に行く必要はないのでは?」
「それはぁ、そうなんですけど……」
サマリの返答がしどろもどろになってきた。これは何か隠しているな。
「もしかして、アザレアという少女は逃げている……?」
「な、何をおっしゃって……」
「正当な領主の後継であれば逃げる必要はないし、もし少女だからだとしても、保護を求めればいいはず。 つまりそれが出来ない何かしらの理由があった……と考えるのが自然だ」
「っ……!」
「さて、サマリさん」
「な、何ですかな?」
俺は僅かな殺気を放ちながら目の前にいるサマリを睨みつけた。
「何か、隠してませんか?」
「なっ!」
睨みつけられたサマリは、まるで蛇に睨まれた蛙のようにすくんでいる。その様子を見た俺は殺気をおさめた。殺気がなくなったことで、サマリは過呼吸を起こしながら足を震わせていた。
「今日はこのくらいにしておきましょうサマリさん」
「そ、そうですな、ミラト殿……」
「アザレアという名前の少女の捜索はこちらも独自で進めてさせていただきます。 いいですね?」
「え、えぇ……」
「では、これで失礼します」
俺とリリーは席を立ち、そのまま来た道を辿り外に出た。その道中にバラートさんとすれ違った。
「おや、もうお帰りですか?」
「まぁ、はい」
「では、お送りいたします」
「いえ、大丈夫です」
「左様でしたか。 ではお気をつけくださいませ」
「ありがとうございます」
俺は軽く会釈してからバラートさんと別れた。
「くそッ! あのクソガキが! 私を下に見やがって! クソ生意気なガキが!」
「お、おやめくださ!」
「クソクソクソクソ!」
「イ、イヤっ!」
「許さん、許さんぞクソガキが!」
ミラトが居なくなった屋敷で、サマリは鬱憤を吐き出すかのように自分の部屋で奴隷の女性を殴り続けていた。奴隷の女性は辞めてもらうよう懇願するが、怒りに支配されているサマリの耳にはその声は届かず、逆にイラつきを増長させてしまっている。奴隷の女性は顔を隠しながら恐怖でへたり込んで動けない。
「落ち着いてください、サマリ様」
女性を殴り続けるサマリの腕を、バラートが掴んで静止させた。
「あなたは早くこの場をさりなさい」
「あ、有難うございます!」
「貴様、雇われの分際で私に逆らうのか?!」
「今のサマリ様は正気を失っております。 少し落ち着いてくださいませ」
「貴様!」
「組織との契約まで、まだ時間はあります。 もう少し視野を広めてください」
「だ、だが!」
「いいですね?」
その瞬間、バラートから殺気が漏れた。まるで首元にナイフを当てられたような錯覚に陥ったサマリは、首を抑え、過呼吸になりながらも平静を取り戻した。
「っ……! わ、わかった」
「分かっていただけて何よりです。 では、お休みなさいませサマリ様」
そう言ってバラートはサマリの部屋を出た。
サマリの部屋を出た後、バラートは自分用に用意された部屋に向かっていた。
「さて、いくら仮初の主人とはいえ、あのように怒りやすい性格だと困りますな。 全く……殿下の命令でなければ即刻始末していたんですけどねぇ」
バラートは立派な髭を撫でながら、一人ボヤいた。
「しかしこれも殿下からの命令。しっかりと果たして見せましょう。 【終焉之救済】、【十二之円卓】が一席、【隠者】ロスティトリアの名に懸けて…………おや?」
バラートが部屋に入ると、そこには先ほど逃した奴隷がいた。先程の独り言が聞こえていたのか、奴隷の女性はまるで殺人を目の前で見たような表情を浮かべながら震えている。
「あ、あの……その、わ、私は何も……」
「おやおや、これはいけませんな。 私も歳、ということなのですかな」
バラートは自らの口髭を撫でながら鋭い眼光で奴隷の女性をみた。怯える彼女を睨みながら、髭を触っていない方の手を軽く動かした。
「イッ……」
ドサッ……
それだけで奴隷の女性の頭と胴体は離れ、頭が地に落ちた。そしてその刹那、切り離された肉体は倒れ込み、血を流し出した。その血を遠慮なく踏みながらロスティトリアは自室の窓に向かいながら歩き出した。
「鏡魔術師のミラト……まさか【狂気】からの報告の後、このような短期間で相見えるとは。 これも不思議な縁ですかね。 精々計画の邪魔にならなければ良いのですが……」
そんなことを言いながら、ロスティトリアは窓を開け、その近くにある小さなテーブルの上の食器に紅茶を注いだ。湯気の立っている紅茶を窓の近くにあるテーブルに置き、テーブルの近くにあった椅子に腰掛けながら一口紅茶を飲み、その後不敵に笑いながら呟いた。
「全ては殿下のために、最後の救済の時はいづれ訪れる……フフフ」
後書きでよく書いている、キャラ解説のように、ロスティトリアの解説をみたい方はいますか?もしいたらコメントしてください。
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