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迷宮の果実

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「大変お待たせしました、二名様でよろしいですか?」

「えぇ、そうです」

「はい、ではこちらに」


 俺たちは店の中に通された。通された店の中には丁寧に飼育されたであろう植物が様々なところに見受けられる。優しい照明も相まって、まるで森の中にいるような心地よさを感じる。


「では、品物が決まりましたらお声がけください」


 そういって果実水を二つおいて行った、人間の青年は厨房の方に戻って行った。


「さて、どうするリリー?」

「どうしましょう?!」


 りりーはキラキラとした目をしながらメニューを開いている。何度も前のページに戻ったり、次のページに行ったりを繰り返している様子から、すごく悩んでいるようだ。


「悩んでるね、リリー」

「は?! すみません、すぐ決めますので…」

「焦らないでいいよ、ゆっくりで」

「あ、ありがとうございます」


 それから数分後、リリーは決めたようだ。俺は近くを通りかかった先ほどの青年を呼び止めて注文した。

 頼んだ品物がくるまで俺たちは雑談をしていた。十分ほどで、頼んだ品物は出てきた。


「それではごゆっくり」


 そういって青年はお辞儀をして厨房に戻って行った。


「美味しそうですね!」

「そうだね」


 俺は二種類の果実を正方形に切り、パイの上に交互に並べて焼いたスイーツ、ダイスフルーツパイを頼んだ。サクサクとしたパイ生地と、酸味の強い黄色の果実と甘みの強いオレンジ色の果実がお互いを引き立てあっており、とてもおいしい。


「ミラト様が頼んだお品物も美味しそうですね」

「そういうリリーのも」


 リリーは八つの果物の盛り合わせを頼んでいた。大きな食器の上には色とりどりの果物が並んでいる。そして食器の真ん中には生クリームが添えられている。それを次々とおいしそうにリリーは食べていく。


「美味しい?」

「はい、とっても!」


 それから十数分後には俺たちは食べ終わっていた。


「美味しかったね」

「そうですね」

「確かここに使われている果実は全部迷宮でとれるやつなんだっけ?」

「そうさね、あんちゃん」


 俺とリリーが話していると厨房から一人のエルフの女性が出てきた。


「もしかして店主さんですか?」

「そうさね、あたしがここの店主のルーカだよ。 よろしくな」


 そういったルーカは二かっと笑った。


「見たところ、冒険者だろ? しかも凄腕の」

「凄腕かどうかはわかりませんが、少なくともこの街で後れは取らないとは思ってますよ」

「いーねその自信。 そんな自信家のお二人に頼みたいことがあるんだけど、いいかい?」

「頼み事ですか?」

「そう。 知っての通りこの店は迷宮でとれる果実を使ってるんだけど、最近ギルドに売られる果実の数が少なくてね、困ってるんだ」

「そうなんですか」

「あぁ、なんでも植物に異常があるとかなんとか。 幸い果実の味や見た目に問題はないんだけどね。 っと、話がそれたね。 ここまで言えばわかると思うけど、お二人には迷宮に行ったときに果実をとってきてほしんだ」

「それは構いませんが、私たちは不定期に迷宮に行きますし、安定した数をってのは少し難しいですよ」

「あぁ別に平気さ。 物のついでぐらいでいいからさ、頼むよ」

「分かりました」

「本当かい?! いやー、助かるよ。 お礼と言っちゃなんだけど、今度から優先して店に入れてあげるよ

 」

「それはありがたいです! ミラト様、頑張りましょう!」

「そちらのお嬢さんはすごく乗り気みたいだね。 じゃあ、頼むよ」

「はい、こちらこそ」


 俺たちは会計を済ませた後、店を出た。


「じゃあ、明日は迷宮に行こうか」

「はい!」


 俺たちが話していると、目の前から執事服に身を包んだ初老の男性が歩いてきた。


「失礼。ミラト様とリリーシャ様でお間違いないですか?」

「そうですけど、何か?」

「失礼いたしました。 私はサマリ様に使えるものでして、本日お二人にこちらをお渡しするよう、遣わされた次第です」


 そういって執事は二つ折りにされた紙を手渡してきた。いろいろと書いてあるが、要は公式に面会がしたいということだ。


「ご都合のつく日で構いませんので、なにとぞよろしくお願いいたします」

「リリー、いい?」

「はい、大丈夫です」

「ありがとう。 えっと……」

「私のことはバラートと」

「バラートさん、今日の夜にそちらにお伺いすることをお伝えしてもらえますか?」

「承知いたしました。 本日の夜ですね。 お伝えさせていただきます」

「えぇ、お願いします」

「では、私はこれで失礼いたします」


 そういってバラートさんは来た道を戻って行った。

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