王が眠る時
今回の章、これだけ書いて前菜です、これ……あと今回の展開割と好みふんだんに込めてあるんですが、皆さん的にはアリですか?よかったらコメントしていってください!
「リリー、跳んで!!」
俺がそう言った瞬間、俺とリリーは左右に分かれるように跳躍した。俺たちがいた所にグリフの竜の口が開き、先ほどの腐食玉を吐き出してきた。
「魔法が効かないなら、これならどうだ!」
俺は雪月花を一度鏡の世界にしまい、そこから二つの武器を取り出した。一つは以前も使用した大鎌、機光鎌・集光だ。そしてもう一つというのが、ブーメランだ。俺が取り出したブーメランはまるで大空を飛翔する大鷲のようなブーメランだ。
「よいしょっと!」
俺はブーメランを投擲し、機光鎌・集光の能力である魔力刃を放った。投擲されたブーメランは投げられた直後に鳥が羽を広げるかのように刃の部分が数倍になり、グリフに向かっていった。そして魔力刃と一緒にグリフの足を全て切り裂いた。空間を揺らすような、大きな音と振動を立てながら地面にその巨体をつけた。
「リリー!」
「はい!」
俺とリリーはグリフ本体に向かってそれぞれの武器で斬りかかった。その瞬間、
ガキーーン
「な?!」
「リリー、下がって!」
「アァァァァァァァァア!」
「くっ……!」
俺たちの攻撃は結界によって阻まれた。リリーの武器はともかく、俺は神器の機光鎌・集光だぞ?! 先ほどよりも強くなっているのか。
「あの結界は、さっきの……」
「だろうね、しかもおそらく一つになったことで効果が上がったみたいだ」
「どう、しますか……」
「……」
リリーがそう問うてくるが、答えられない。切ったはずの足はすでに再生している。俺が考えを巡らせていると、途絶え途絶えで声が聞こえてきた。
「ttttタ、タスケttttttテ」
「この声は?!」
俺が声の下方を見ると、その視線の先にいたのはグリフだった。そうだ、人間が魔物になったなら、言葉を発することができてもなんら不思議じゃない。さっきもあったじゃないか。再生が終わったのに微動だにしないグリフはさらに声を上げた。
「ttttttツエwwwwwヲヲヲヲヲヲヲ………………アァァァァァァア!!」
そう言うと、まるで抑えが効かなくなったかのように、縦横無尽に至る所から骨の槍を生み出してきた。最初の時とは比べ物にならないほどの数だ。百近くありそうだ。俺は機光鎌・集光で骨を切り裂きながらリリーに近づいた。
「リリー、聞こえた?!」
「はい、しっかり私にも!」
「長くは持たない、俺はグリフの持つ錫杖を壊しに行く。 そこまでの露払いを任せていい?!」
「是非お任せください!」
「じゃあ行くよ!」
「はい!」
俺は機光鎌・集光をしまい、雪月花を取り出した。そしてグリフに向かって一直線に走り出した。
「アァァァァァァァァァァァァァァァ!」
グリフに近づこうとすると、俺を的確に刺すように地面から骨の槍が現れた。その瞬間、現れた骨をリリーが切り裂く。
「アァァァァア!」
グリフの竜の口から腐食玉が複数飛んでくる。俺は最初の一発を跳躍して避ける。
だがもちろんそれでは二発目は避けれない。跳躍の勢いがなくなったタイミングで俺の足の真下に氷で出来た足場が現れる。俺はそれを蹴り上げて、二発目を避けた。
「ありがとうリリー!」
「この程度、問題ありません!」
同じ要領で全て避けきり、俺はグリフの真上に着いた。そして渾身の力を込めて雪月花を振り下ろした。
ガキーーン
俺の渾身の一撃は結界によって阻まれる。だが想定通りだ。
「リリー!」
「はい!」
俺と同じ要領でリリーが俺の後ろから現れて、結界を飛び越えてグリムの持つ錫杖めがけて双剣を振り下ろした。
「アァァァァァァァァアア!」
グリフは嫌がり、骨の槍を伸ばしてリリーを刺し貫こうとした。その瞬間、一陣の線がその骨を切り倒した。
「アァァァ?!」
骨を切り倒した線は、俺の手元に戻り、その正体が明らかになった。そう、最初に投げて回収していなかったブーメラン、大鷲だ。大鷲の効果で遠隔操作により骨の槍は根本から斬られ、崩れていく。
「はぁぁぁあ!」
「アァァァァアァァァァァアァァァ!」
ビキビキと音を立てて錫杖にヒビが入り出した。嫌がるような声を上げるグリフは、後ろに下がろうとした。
「逃がさないよ!」
先に地面に戻っていた俺は氷魔法表面凍結で地面とグリフの足をくっつけた。
「アァァァァァァァァア!」
そしてついに、錫杖がパキンっと音を立てて真っ二つに割れた。それと同時にグリフの体は少しづつ塵になっていった。
「ア、リガ…………トウ」
「……あぁ。 おやすみ、悲しき王よ」
グリフが塵になると同時に、朝日が差し込みだし、玉座を照らした。
大鷲
ミラトが使用した鷲のような形をしたブーメラン。投げることで、刃に当たる両翼が肥大化する。
【帰巣】
ブーメランを投げたあと、戻ってくるのではなく、壁などに突き刺さる。その後、持ち主の意志で一度だけ自由に軌道を決めて、手元に戻ってくる。