激闘
今日2話投稿です!
「リリー、無事?!」
「はい、なんとか」
「よかった……さて、どうするか……」
グリフが放った魔法は断魔結界で俺たちには届かなかったが、周囲を激しく燃やしている。スケルトンたちも耐えきれずに焼け崩れ始めている。
「あ、暑いですね……」
「鎮火しないとまずいな」
魔法自体は防げても、熱気そのものを防ぐことはできない。周囲が燃やされたことで激しい熱気と腐敗臭があたりに立ち込めている。
「リリー、俺は鎮火するから、その後に風魔法頼んでいい?」
「お任せください!」
「ありがと」
俺はリリーの頭を軽く撫でると、断魔結界を解除した。
「天候魔法【浄聖の五月雨】」
俺が魔法を天に放つと、たちまち空全体を白い雲が支配した。そして、ポツリ、ポツリと雫を降らしていき、直ぐに火を鎮火し出した。
「風魔法【廻り風】」
リリーが魔法を放つと、部屋の隅々まで風が駆け廻り、廻り終わると天に昇り霧散した。
「アァァァ……」
どうやらこれで終わると思っていたようで、嫌そうな唸り声をあげた。
「もう終わりにしようか」
「アァァア!」
俺の問いかけに返答するように、短く唸り声をあげた。そしてその直後、グリフの持つ錫杖が鈍い光を放ち出した。
「何を……?」
俺の問いは直ぐに答えが返ってきた。グリフは召喚魔法で先ほど破壊した配下たちを限界まで呼び出し、吸収しだした。
「まさか、さっきの蒼炎竜の本当の目的は、召喚数のリセット?!」
ニヤリと不敵にグリフは笑った。その直後、グリフは禍々しいモヤに覆われて姿が見えなくなった。
「リリー、離れて!」
「は、はい!」
俺とリリーはその場から跳躍し回避した。するとその直後に俺たちのいたところにモヤの中から何かが飛んできた。飛んできた足場はドロドロに溶けている。
「毒……いや、腐食か」
「アァァァァァァァァァア!!」
モヤが晴れるとそこには地竜に似た姿をしたグリフがいた。死肉と骨で地竜のような姿を作り、地竜の頭上に錫杖を持ったグリフの上半身がある。
「これは少しまずいな……」
「?! ミラト様!」
リリーがおもむろに俺の両横に氷の壁を生み出した。その直後、足の下から骨でできた槍のようなものが十数本現れ、串刺しにしようとしてきた。
「助かったよ、リリー」
「気をつけてください、あまり長くは持たないみたいです」
リリーの言う通り、骨自体に先ほどの腐食の効果があるのか、リリーの生み出した氷の壁は骨に接したところからだんだん溶け始めている。
「これはどうだ」
俺はバックステップで下がりながら、グリフに向かって白炎の矢を十本放った。白炎でできた矢はグリフの体に幾つもの風穴を開けた。しかし、少しづつ傷は埋まり出している。
「さて、どう攻略しようか……」
変わり果てたグリフを俺は睨みつけた。
天候魔法 浄聖の五月雨
下位の死霊系の魔物を弱らせる効果を持つ雨を降らす。また、死霊系に侵された腐敗臭を浄化する効果も持つ。
風魔法 廻り風
手のひらほどの大きさの風の塊があたりを移動し、霧などを晴らすのに使用される魔法
炎魔法 白炎の矢
炎の矢の上位に当たる魔法。白くなるまで熱せられた炎を矢の形にし対象に飛ばす魔法