哀しい一騎打ち
本日2度目の更新!この迷宮内の戦いかなり長引きますが、この章はこれでは終わりません!(笑)
長くなりますが、お付き合いくださると嬉しいです!
あと今回の後書きかなり長いので、辛い方は読み飛ばしてください!
「とにかくまずは数を減らそう!」
「はい!」
俺たちは周りを取り囲むスケルトンや死兵たちを最初に対処することにした。
「……」
「うわっ!」
「ミラト様?!」
俺が動こうとした瞬間、俺の目の前にいたアゴニーが槍を突き出してきた。俺はそれを体を大きく逸らすことで回避した。
「お、お怪我はありませんか?!」
「うん、大丈夫……ただ」
アゴニーは槍を構え直して、俺を凝視している。そんな気がする。
「どうやら見逃してくれなさそうだね……」
俺は雪月花をもう一度構え直した。
「リリー! 俺はこいつを相手にするから、周りは任せるね」
「はい! お任せください!」
リリーは俺と距離を取るように跳躍して場を離れた。
「さてと、一騎打ちと洒落込みますか」
「……」
言葉は発せないが何を言っているのかはわかるらしく、アゴニーはコクリと頷いた。
「刀術【一閃】」
「……!」
俺が放った攻撃をアゴニーは槍の柄を添わすようにして回避した。
「……!」
「おっと」
アゴニーはお返しと言わんばかりに槍術【牙突】を放ってきた。俺は穂先が俺の目の前に来た瞬間に、上に弾くことで無効化した。
「そりゃまぁ、元はと言え一国の兵団長だったんだ。 こんなもんじゃないよな」
「……」
アゴニーは何も言わずにまた槍を構える。
「でもまぁ、悪いけどあんまり時間をかけれないんだ。 だから早いけどこれで終わらさせてもらうよ」
「……」
俺の発言に呼応するようにアゴニーは槍を固く握りしめた。その直後、槍がバチバチと雷を纏い出した。さらにアゴニーは水でできた矢の様な物をアゴニー自身の周りに十本ほど生み出した。
「出来るのであれば、もう少し君とは戦っていたかったよ」
俺は雪月花を一度鞘に収めた。そして魔法を発動させた。
「精霊魔法 【剣の精霊】」
俺が魔法を発動させると、周囲に十本ほどの魔力によってできた剣が現れた。その剣たちは誰かに持たれているわけでもないのにフヨフヨと宙を漂っている。
「刀術【雪輪抜刀・纏:聖光】
俺はゆっくりと歩きながらアゴニーに近づいた。アゴニーは微動だにせず、水の矢を放ってきた。それを剣の精霊で生み出した剣で一本づつ無効化していく。アゴニーも無効化されるのは想定済みだったようで、驚いたりはしていない。あくまで自身の渾身の一撃のための時間稼ぎ程度にしか考えてないのだろう。
「……!」
アゴニーは槍術【空割】を放ってきた。おそらく彼の最大威力の技だろう。
「……君に、敬意を」
ザシュ……
鉄を切ったとは思えないほどの音がした。激しい戦闘の音がする中、その音は澄んで聞こえた。
「……」
アゴニーの渾身の一撃は俺には届かなかった。俺は接近時にわずかに体を逸らし、空割を避け、上から半円を描くように雪月花で切りつけた。ただそれだけで、アゴニーは簡単に両断された。
「わずかな時ではあるが、せめて安らかに……」
俺は地に転がっている、アゴニーの持っていた槍をしまいながらそう呟いた。
槍術【牙突】
槍の穂先を獣の牙に見立てて突く技。刀術における一閃と同じく基礎中の起訴とも言える技
槍術【空割】
勢いのつけた槍を急激に止めることでまるで空気を割るかのような一撃を放つ。慣性の法則により、刺突後に衝撃を与える。
精霊魔法
葬り去られた魔法の一つ。あらゆる事象、物質に存在している精霊に語りかけることで発動する魔法。精霊の力を借りて行使するため魔力消費は非常に少ない。
また、事象や物質の具現化ともいえるため魔法名ではなく精霊の名前を呼ぶことで発動させる。たとえば火の精霊であれば火でできることは大体なんでもできる。
精霊魔法【剣の精霊】
物質剣の精霊。呼びかけに応じて両刃の刃物であれば、大気中の魔力を利用して創作できる。しかし、一度何か他の物質にぶつかると崩れ落ちてしまう制約付き。両刃の刃物限定であるため、細剣や刀などは生み出せない。
(クシスの由来は古代ギリシャ語で剣を意味するクシフィスと意志を意味するブーレーシスの二つを組み合わせたオリジナルの造語です)
【聖光】
神聖魔法であり、物体であれば基本的にどんな物でも、一時的に死霊系に絶大な効果をもたらす光を纏わせることができる。
アゴニーの持っていた槍
成人男性並みの長さの柄に菱形の穂先のついたありふれた見た目をしている。
【発電】と【刺突強化】を持つ。発電はチャージ時間に比例して、威力の高い電撃を生み出し纏う。【刺突強化】は名前の通り刺突時に与えるダメージを大きくする。