廃城に佇む王
今回も少し長いですが、お付き合いください
扉を開けると、そこは今までに見たことのないぐらい破壊された部屋だった。
天井を支えていると思われていた柱は何本か破壊されており、豪華なカーペットや垂れ幕は無惨に引き裂かれて、よく見るとところどころ赤黒いシミができている。
さらに最も目を引くのは半分ほどなくなり、部屋の中に月明かりを差し込ませている天井と、その月明かりに照らされている玉座だ。
「リリー……」
「はい、わかってます……」
俺たちが進んでいくと、徐に玉座の下が怪しい光を発し出した。そしてそこから階層主が姿を現した。
「アァアア……」
「……【映し鏡】」
俺は現れた魔物に映し鏡を使った。
名前:グリフ=フォン=レスシティカ
レベル:100
性別:不明
種族:不死ノ王
スキル
炎魔法
水魔法
風魔法
土魔法
闇魔法
召喚魔法
痛覚無効
再生
支配
王の威厳
負のオーラ
礼儀作法
称号:【亡国の王】【摂理に反す者】
「やっぱり予想通り、亡くなった王が……」
「アァァァァァァァアア!!」
グリフは召喚魔法で虚空から杖を呼び出した。黒く、灰を被り、ところどころ欠けているが、誰が見ても元は美しい錫杖であったことが伺える。
「アァァァァァァァァア!」
「リリー避けて!」
グリフが持っていた錫杖を天に掲げると錫杖の先が赤と青と橙色の光を纏い出した。そしてその数秒後、三つの魔法が俺たちに向かって放たれた。
「一気に三つかよ!」
俺たちは一つ目の炎魔法炎弾を避けた。だが、それを見越していたかのように俺らが避けた先に残り二つの魔法は向かってきた。
「【風刃】!」
「刀術【一閃】」
リリーは風刃で自分に向かってきた水弾を切り裂いた。俺は雪月花で俺に向かってきていた土弾を切り裂いた。
「アァァ……」
「予想通りってか? じゃあ次はこっちの番だ」
俺は、右膝を地につき、刃が上に来るように雪月花を担ぐように構えた。
「刀術【空裂】」
「アァァァァァァァァア!」
雪月花が振り下ろされる。その瞬間に錫杖が光だした。
「遅い!」
あたると思った。
ガキィィィン!
だが、何かがそれを阻んだ。
「な?!」
「ミラト様、後ろを!」
そう言われて後ろを見た。するとそこには召喚魔法にて召喚された魔物がいた。
「【映し鏡】!」
名前:ジャック
レベル:65
性別:不明
種族:知性ある死兵
スキル
体術
痛覚無効
結界魔法
称号:【死せし帝国兵】
「あれは……アーレインの記憶の中に出てきた帝国兵じゃないか!」
「ウァァァァア」
呼び出されたジャックが結界を張ってグリフを守ったのだろう。
「どうやらかなりの結界魔法の練度らしいな……」
本気ではないにしろ、雪月花の攻撃を防ぐなんてかなりの練度じゃないとできないぞ……。
「アァァァァァァァァ……」
グリフはモウ一度召喚魔法を発動した。すると今度は俺の後ろではなく、俺とグリフの間に位置するように魔物が現れた。俺は映り鏡をもう一度使用した。
名前:アゴニー
レベル67
性別:不明
種族:動く死兵団長
スキル
槍術
体術
水魔法
痛覚無効
魔法耐性
礼儀作法
称号:【裏切り国家の兵団長】
「…………」
アゴニーは何も言わないが、手に持っていた槍を固く握りしめた後、こちらに槍を向けてきた。さらに周りを見回すとたくさんのスケルトンや死兵などが俺たちを囲っていた。
「うーん、ちょっとまずいか?」
「アァァァァァァァァア!」
グリフが咆哮を上げると、周りを囲っていた死兵たちが一斉に動き出した。
刀術空裂
体を低くした状態から徐々に体をあげ、上から空を裂くように無秩序に切り付ける技。点ではなく線で物を押し切るような技。




