亡国の兵士達
今回葬り去られた魔法を二つ出します!
「リリー、足止めお願い!」
「分かりました!」
リリーはそう言いながら、氷縛を放った。氷は一番先頭にいる動く鎧騎士の足を固めたが、そんなことおかかまいなしにと無理矢理進んできた。だが、明らかに突撃してくるスピードは落ちていた。
「申し訳ございません!」
「いや、十分だよ!」
俺は一息深く吐き出すと、雪月花を握り直した。
「刀術【兜割】」
上段で構えた雪月花を動く鎧騎士の上から斬りつけた。それに対して動く鎧騎士は持っている剣を使って、刀身に沿わせるようにして下に受け流した。
「嘘でしょ?」
まさか魔物がこんな高度な行動をしてくるとは思わず、俺はその場で棒立ちになってしまった。
「ミラト様!」
リリーの声と共に、後ろにいた動く鎧兵の二体が剣を突き出してきた。俺はその場で跳躍し、リリーの横に戻った。それを見た動く鎧騎士たちは陣形を整えた。
「なんというか、魔物というより軍の相手をしているみたいだね」
「どうやらこの魔物達は相当未練の念が強いみたいですね」
「そうだね」
どうしようか。このまま一体ずつ倒してもいいいが、この連携は少々体力を消費しそうだ。
「しょうがない、一気に片付けるか」
俺は雪月花をしまうと、一歩前に出た。俺が何かをするのを察したリリーも武器をしまい、俺の一歩後ろに控えるように立った。
「君たちはこの迷宮に囚われてしまったようだね。 救うことはできないが、せめて少しでも未練が晴れますように……」
俺は魔力を貯めると魔法を放った。
「天象魔法【神之水】」
俺の目の前に人が百人は入りそうなほどの大きさの水球が現れた。その水球は海が波打つかのように流動し、目の前にいる動く鎧騎士達を包み込んだ。包まれた動く鎧騎士達は藻がいていたが、意味をなさなかった。
「天象魔法【神之慈雷】」
安らぎを感じさせるような、薄緑の雷が一直線に神之水の水球に向かっていった。そしてその水球に触れた瞬間、水球全体が見てわかるほど派手に感電を引き起こした。もちろん水球に囚われていた動く鎧騎士は跡形もなく消滅しており、魔石だけが水の中に浮いている。俺は魔法を解除して、魔石を拾った。
「じゃあ行こうか」
「分かりました」
俺たちは廃城の中の探索を再開した。
刀術 【兜割】
手にしている刀を上段から振り下ろし、相手の防御や鎧ごと切り裂く技。叩き切ると言ったほうが近い
天象魔法【神之水】
魔物を弱らせ、傷を癒す効果を持つ神水を生み出し、自由に形を与える魔法。殺傷能力は低いが、その代わりに捕縛などに適している。
天象魔法【神之慈雷】
痛みを共わない不可思議な雷。触れた相手やものに対して「痛い」と言った感情を与えずに屠ることができる。痛みを共わないため、威力は低いと思われがちだか、威力は非常に高く、龍ですら一撃で葬れる。