廃城の中
講義中に更新です(笑)
「広いね……」
「ですね」
俺たちは廃城の中に足を踏み入れた。その中は凄惨というに相応しかった。広々とした大広間は壁の至る所に切り裂いたような跡や、大きな穴が空いている。元は綺麗だったであろう垂れ幕やカーペット類も引き裂かれている。そんな不気味な空間を歩いていると、俺の足に何かがぶつかった。
「ん? これは?」
俺はそれを拾い上げた。一見するとひどく歪んだ鉄塊にしか見えない。だがどこかで見たことがある。俺ではなく、俺の中にあるメシアさんの記憶が既視感を覚えた。
「ミラト様?」
俺は下から見上げてくるリリーの声を聞いてハッと顔を上げた。リリーを見ると不思議そうにこちらを覗き込んでいる。
「……いや、なんでもないよ。 行こうか」
「はい」
俺は拾い上げた鉄塊を鏡の世界にしまうと、大広間を進み出した。
(にしても……メシアさんはいつこれを見たのだろう……確か、メシアさんのいた頃にはこの迷宮はなかったはずだ……)
「まぁ、いいか」
「何がです?」
「ん? いや、ただの独り言だよ」
「もしかして、何か隠してませんか?」
「い、いや?」
俺がそう言いながらそっぽを向くと、リリーは拗ねた子供のように頬を膨らませた。
「まぁ、別に言いたくないなら言ってくれなくてもいいですけど……」
そしてこの廃城に似つかないほどの笑顔を浮かべながら告げた。
「私は何があろうとミラと様のそばにいます!」
俺はそう告げたリリーの頭を撫でながら、お礼を言った。
「うん、ありがとう」
「いえ、この程度」
「じゃあ改めてさっさとこの層を終わらそうか」
「はい!」
「じゃないと、リリーが怖がっちゃうもんね」
「ミラト様っ!」
「アハハ! ごめんごめん」
俺たちは和やかな空気のまま進んでいたが、上の階で聞き慣れていた音によって遮られた。その音とは鎧が擦れる、ガシャンガシャンといった、金属音だ。
「リリー」
「わかってます」
俺たちは武器を抜いて構えた。ガシャンガシャンと言った金属音は次第に大きくなっていき、ついにその姿を捉えた。
俺たちの前には一際豪華な鎧をした動く鎧と、その後ろに五体の動く鎧がいた。しかし俺は違和感を覚えた。
「動く鎧なのか? でも上の階と見た目が少し違うぞ?」
俺は映し鏡を使った。そこにはこう書かれてた。
名前:無し
レベル:35
性別:不明
種族:動く鎧兵
スキル
剣術
痛覚無効
称号:【亡国の兵士】
名前:無し
レベル:41
性別:不明
種族:動く鎧騎士
スキル
剣術
痛覚無効
統率
礼儀作法
称号:【亡国の騎士】
と出てきた。
「亡国の兵士と騎士……か」
「ミラト様! きます!」
俺が映し鏡を見ていると、目の前にいる動く鎧騎士を先頭に、俺たちに向かってきていた。