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悪夢

お久しぶりです。GW中は更新できなくてすみませんでした。


あと、今回はミラと視点ではありません。いつもなら〜〇〇視点〜としますが、今回はそのキャラの視点で終わるので〜〇〇視点〜とはしてません。ご理解くださると嬉しいです

 たまに夢に見る。あの日のことを。


 薄暗い夜だった。月は雲に遮られその淡い光は私たちには届かなかった。なのに突然、そんな薄暗い夜が照らされた。目が開けられない程の眩しさと暑さを伴った炎が、私の目の前で燃え盛っている。その炎は辺りを燃やしていき、私たちはすぐに炎に囲まれてしまった。


「に、逃げなさい!」

「や、やだよ……」

「ここにいたらお前まで死んでしまう!」

「だ、だからって……」


 私の肩を掴む父様と母様の手が、今までの優しい手つきとは打って変わって、痛いぐらい強くなっている。私はその力の強さからくる痛みなのか、恐怖なのか分からないが、涙が止まらなかった。その涙も周りの炎のせいですぐに乾いてしまう。


「父様も母様も一緒じゃなきゃ……私、いやだよぉ……」

「あぁ、私もだ。 愛しい我が子と別れるなんて……心臓が張り裂けそうなほど苦しいよ」

「えぇ、私もよ。 あなたと離れたいなんて思うわけがないじゃ無い」


 私の肩を掴む手が次第に震えてくる。その震えから、父様と母様が心から私のことを大事に思っていることが伝わってくる。


「じゃあ一緒に……」


 ゴウゥ!


 私の発言を無慈悲に否定するかのように、炎を纏った壁や柱があたりに降り注ぐ。その炎により、あたりはさらに熱くなった。


「もう持たないようだ……」

「えぇ、そうね……」


 父様と母様は辺りを見渡してそう呟いた。


「二人とも、こっちに」


 父様は母様と私を呼び寄せると、今までに無いぐらい強く、優しく抱きしめた。私も負けじと二人を強く、強く抱きしめる。


「あぁ、もっとこうしていたいな……」

「あなた……」

「愛しい我が子が大人になるまでは生きて、孫を拝むまでは死ぬつもりなどなかったのだがな……」

「えぇ、そうね……」

「父様……母様……」


 そう語る父様の声は震えていた。抱きしめられているので顔は見えないが、どんな顔をしているか容易に想像できてしまう。


「……もうお別れだ」


 そう言って私を抱きしめていた父様の腕の力が抜けた。


「愛しい愛しい我が子よ。 私達の分まで幸せになってくれ」

「きっと辛いこと、泣きたくなることは沢山あるわ。 でも大丈夫よ。 私達は何があってもあなたの味方よ」

「ここから遠い場所に、万が一のために建てた小さな小屋がある。 ここから逃げたらすぐにそこに行きなさい」

「嫌だよ! 私はまだ……まだ父様と母様と居たい!」

「それは私達もだよ……まだまだ愛し足りない」

「でも私達はあなたに死んでほしくないのよ……わがまま言ってごめんなさい」


 あたりはさらに激しく崩壊していく。すぐ近くまで燃えた壁や柱がある。だが、そんなことなど気にしてる暇すらない。


「どうか幸せに……愛しい我が子」


 父様は悲しそうな声色でそう告げると、私をまだ燃え尽きていないところに投げ飛ばした。


「っ! 父様! 母様!」


 私は投げ付けられた痛みを無視して、父様と母様の元へ向かおうとした。だが、炎がそれを遮る。


「すまないな……こんなところで死なせて」

「私は貴方の妻です。 死に場所は貴方と同じと既に決めておりますわ」

「全く……私にはもったいない良い妻だ」

「そんなこと言わないでくださいな。 私が貴方を選んだのですから」


 崩壊がより進む。間近にある炎のせいで目を開けてるのも困難になってきた。


「最後にこれだけは伝えさせてほしい」

「貴方だけを生かしたことを、許してとは言わないわ」

「「ただ……」」


 父様と母様は手を繫ぎながら、とても優しい笑顔を浮かべた。


「愛している。 いつまでも」

「たとえ世界があなたを嫌ったとしても、私達はあなたを心から愛してるわ」

「「どうか……どうか、幸せに。 愛しい我が子、()()()()

「嫌だよ! 父様! 母様!」


 私は必死に手を伸ばす。だが、それを遮るように天井が完全に焼け落ち、私の目の前で、父様と母様の姿が見えなくなった。


「うわぁぁぁぁぁぁあ!! 父様ぁ! 母様ぁ!」


 私は激しく轟々と燃える館を見ながら泣き続けた。涙が枯れても、声が枯れても、この絶望の叫びを止められなかった。


「大丈夫?! キユリちゃん!」


 そんな聞き慣れない声で、私は夢から現実に引き戻された。

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