勧誘
お久しぶりです。今回は完全に惰性でさぼってました。すみません。
あ、あと今年の四月から大学生になりました。
換金を終えた俺たちは、その場を離れた。そして俺は敢えて人通りの少ない道を選んで、そこに歩いて行った。
「それで、君たちは何の用かな?」
俺が後ろを向かずに話しかけると、数秒の沈黙の後にガタイのいい男たちが十数人曲がり角や物影から姿を現した。
「……気づいていたのか」
「あんな分かりやすい視線を向けられたらいやでもわかるよ」
「分かってて誘い込んだのか」
「まぁね。 それで、何が目的で俺たちの事を付けてきたのかな?」
男たちは顔を見合わせた後、軽く頷いた後にリーダーらしき男が一歩前に出てきた。
「取引をしようじゃないか」
「取引?」
「あぁ。 さっきのあんたの換金する様子を見させてもらったぜ」
「いや、勝手に見ただけでしょ」
「そんなことはどうでもいい。 俺はアンタらの実力を確信した」
「あ、そう。 それで?」
「お前ら、俺たちの元に来い」
「え、嫌だけど」
「俺たちは全員が実力者で知名度も申し分ない。この俺たちの仲間になれるなん……え?」
「だから、嫌だけど」
「い、いいのか?! 俺たちはラービスじゃそれなりに名が通っているんだぞ?!」
「知らないし興味ないよ。 リリー、行こうか」
「はい、ミラト様」
「おい待て!俺たちを無視したらあの方が黙ってないぞ!」
「だったらその彼の方とやらを連れてきなよ」
「いいんだな?! この町でお前の居場所がなくなるんだぞ?!」
「出来るもんならしてみて欲しいね」
そう言い残して、俺とリリーは通路を抜けて行った。最後までリーダーらしき男がなんか叫んでいたが、興味はこれっぽちもないので聞き流した。
その日の夜、とある屋敷にて先ほどミラトに絡んできた男が跪きながら眼前にいる男に話していた。その男は数人の女性を自らの周りの世話をさせながら、細かい細工の施されたグラスでワインを飲んでいた。
「なんだと? もう一度言ってみろ」
「は、はい。ですから本日もいつも通り優秀そうなやつを見つけて勧誘したのですがそいつが断り、挙句には話をしたければ貴方様を連れてこいとほざいたのです」
「舐め腐りおって……冒険者風情が?!」
男は手に持っていたグラスを力強く地面に叩きつけた。グラスはパリンッと音をたてながら砕け散り、残っていたワインをカーペットに撒き散らした。その様子を見て周りにいる女性たちがびくりと震えた。
その様子をまるで意に介さず、男は冒険者にあからさまに不機嫌な声で話しかけた。否、命令をした。
「そいつを連れてこい。 いいな?」
「は、はい! で、ですがもし従わなかった場合は……?」
「多少の乱暴はかまわん。 何があっても連れて来い! いいな?!」
「しょ、承知しました! し、失礼します!サマリ様!」
慌てた様子で部屋から出て行った男をサマリと呼ばれた男はフンっと鼻息を一つ挙げると、新しいグラスでワインを飲み始めた。