壁の中
お久しぶりです
検問を終えた俺たちはラービスの中に入った。
「おぉ……これはすごいな」
「ですね……」
「キュッキュ」
壁に入った俺たちを出迎えたのは、整備された一本道に、その道のわきに所狭しと並ぶ冒険者にとってありがたい装備や宿屋などがあり、一本道の先には大きな広場の湯女場所と、その真ん中に一際周りの建物より大きく作られた構造物がある。
「あれが迷宮か」
通路の先の構造物の正体は冒険者ならほとんどの人が知っているであろう、この都市の名物であり財源でもある【迷宮】だ。迷宮は一見ダンジョンとよく似ているため同一視されるが、実際はかなり違う。迷宮の中は一定の階層すべてが同じ階層となっており、その階層の最後に階層主と呼ばれる魔物がいる。主とは言いつつもダンジョンのように内部を変更したりすることはできず、また一定のエリアからは出ることのできない。
さらには魔物を倒すとその死体は魔石と持っていた武器や体の一部などを残して完全に消失する。そのドロップアイテムはほとんど品質に差がないため、冒険者にとってもラービスにとってもありがたい存在となっている。
「もしかしてラービスは初めてですか? よろしければ私がギルドまでご案内させていただきます」
「ではお願いします」
「はい承知しました。 私は冒険者ギルドラービス支部職員のミーシャと申します。 どうかよろしくお願いします」
俺たちが入り口のあたりで立ち尽くしていると、ミーシャと名乗るヒューマンのギルド職員が声をかけてきた。どうやらギルドまで案内してくれるようなのでありがたくその厚意に甘えることにした。チラッと周りを見渡すと、数人のギルド職員が初めてラービスに来たであろう冒険者の人たちの相手をしている。
「お二人の目的もやっぱり迷宮なんですか?」
「えぇ」
「まぁ、ラービスと言ったら迷宮ぐらいしかないですからね」
「確かにそうですね」
「ちなみにお二人はパーティを組まれてるんですか?」
「はい」
「見た感じお二人ともお若いのにすごいですねぇ」
「そうですかね?」
「実は私も一時冒険者をやっていたんですがやっぱり私にはどうにもダメみたいで。 それで私はギルド職員を試しにやってみたらこれが性に合っていて、今はこの仕事が大変ですけど気に入ってるんですよ」
「へぇ。 なんかそういうの良いですね」
「ありがとうございます。 さて、つきました。 ここが冒険者ギルドになります」
「え、ここ全部ですか?」
「はい」
「本当に?」
「本当です」
到着した場所は通路の先の広場に見えた場所だった。
「ここの円状になっているところ全部が、ラービスの冒険者ギルドです!」
これは……想像以上だ。
「簡単にギルド内部を紹介させていただきますね。 まず右手側はすべて受付になっています」
そういってミーシャが右手方向を見るように視線を誘導した。その先には軽く二桁を超えるであろう受付があった。
「こちらではほかの支部と同じように登録や依頼、移転届などの提出に加えてラービスに入るためのギルドカードとは別に通行証を発行できます。さらにその通行証があればだれでも迷宮に入ることができます。 ですが、迷宮内での事故等は基本的にギルドは不干渉とさせていただきます」
そういいながらミーシャはギルドの中心に向かっていった。ギルドの中心は吹き抜けになっているようで日差しが迷宮の建物を照らしている。
「こちらが迷宮になります。 この建物の中には巨大な階段とその上に魔物があふれてこないようにしている結界があり、階段を下っていくことで迷宮に入ることができます。 また、階層主を倒すとその階までの記録が通行証に自動で記録され、結界に触れながら通行証に記載された階を選択することでその階まで転移することができます」
ミーシャは説明を終えると左側に歩いて行った。俺たちもその後をついていく。
「こちらが素材の買取と休憩所となっております。 私たちが歩いてきて側である、手前側が素材の買取で反対側に休憩所、まぁ俗にいう酒場があります」
左側は両手いっぱいに素材を持った人や、酒を飲んでる人たちであふれていた。
「何かご質問はありますか?」
一通り説明の終えたミーシャが問いかけてきた。
「いや、とくにはないよ」
「分かりました。 ではまずは受付で通行証の発行をお願いします。 それではご武運をお祈りします」
そういってミーシャは歩いてきた道を戻って行った。
「じゃあリリー。 まずは受付に行こうか」
「はい、分かりました」
俺とリリーは手をつないで受付のほうに歩いて行った。