閑話:新年の始まり
来訪者便利すぎる
「お、みんなもういるんだね」
「すみません、遅れました」
「いや、時間通りだ」
俺たちは年が明けて、みんなで教室に集まっていた。別に授業があるわけではなく、どうせならみんなで新年のあいさつをしようと、シンラが提案してきたのだ。
「ミラト達で全員いるな?」
「そうみたいっすね!」
「では改めて……みんな、あけましておめでとう」
「「「「「「「「「あけましておめでとう!」」」」」」」」」
「どうか、今年もよろしく頼む」
「「「「「「「「「こちらこそ、よろしくお願いします!」」」」」」」」
「さて、堅苦しい挨拶はこれで終わりにして、今日は楽しもうじゃないか」
シンラがそう言って、にっこり笑った。それからシンラは待機させていたであろう数人の給仕をよび、簡単な軽食や飲み物を教室に運び入れた。教室が小さなパーティー開場のようになり、みんなもそれぞれ好きなものを食べ歩いたりしていた。
俺が自分の席に座り、お皿に軽く盛りつけた軽食をつまんでいると、俺の横にシンラが座ってきた。
「今日はありがとうね、シンラ」
「いえ、こちらこそ私のわがままに付き合ってくださりありがとうございます」
「みんな楽しそうだね」
「ですね」
「……よし」
「ミラトさん……?」
俺は席を立つと、俺以外のクラスメートが全員視界に収まるような場所に立ち、みんなに声をかけた。
「みんな聞いてくれ。 俺からのささやかな新年の贈り物だ。 ぜひ受け取ってくれ!」
そうして俺は鏡の世界から九枚の小さな紙袋を取り出し、一人一人に手渡ししていった。そして最後の一人に行き渡ったのを確認して、俺はみんなに中を見るように促した。中にはというと、
「これは……大金貨に金貨?!」
アリーシアが中身を見て一番最初に驚きの声を上げた。そう、袋の中には第金貨一枚と金貨が五枚、計十五万ルナが入っておる。
「これはどうしたんすか?!」
「これは来訪者たちの新年の文化の一つでお年玉というらしい。 俺も初めて渡したからどのくらいの金額か妥当かわからなかったけど」
「き、貴族のみんなならともかく……じ、自分たちには少し多い気が」
「え、そう?」
「そうね。 来訪者から伝わったお年玉文化は知っていたけれど、こんな高額なのは予想外だったわ」
「そうなのか。 でも俺はみんなを肩書で分けるようなことはしたくないんだ」
「肩書で分ける?」
「そう。 貴族や平民や鏡魔術師である前に。だって俺らはみんな普通の人間で友達じゃん」
俺がそう言うと、みんなうれしそうな顔をした。
「確かにな。 私たちはここですでに長い時を共に過ごした。 ならせめてこういう場ぐらいは肩書なんてものは無視しよう」
「私も殿下の意見に賛成だ」
「わたくしもそう思いますわ」
「いいとミラは思う」
「ミナもいいと思った」
シンラが俺の意見に賛同すると、それに続くように貴族であるガネス、レナ、ミラとミナも賛同した。
「じゃあ仕切り直して、続きと行こうか!」
「「「「「「「「「おぉ!」」」」」」」」」
そして俺たちは日が暮れだすまでみんなで楽しんだ。
皆さん新年あけましておめでとうございます。昨年はお世話になりました。
本年も私が楽しく思い思いの作品を書き、皆さんを楽しませることができるように努めていくつもりです。
どうか本年もよろしくお願いいたします