閑話:Sクラスメンバーでハロウィン
皆さん、今年もやってまいりましたハロウィンです!ということで閑話です
「え、みんなでパーティー?」
俺たちは学校に来て朝一番にシンラにそんなことを言われた。
「そうだ。 Sクラスのメンバー全員でパーティーをするんだが、ミラトたちも来れるか?」
「まぁ、特に予定はないけど……パーティーって何するの?」
「何するといわれても……まぁ食事とかプレゼント交換とかだな」
「あ~分かった。 じゃあ授業後にでもプレゼント買ってくるよ。 どこに何時?」
そう聞くと、シンラは少し困ったような顔をしていた。
「いや、時間は決めてあるのだが……どうにも場所がまだ決まって無くてな」
「なんで?」
「元々は王城の一室で行おうと思っていたのだが……」
「あー、分かった。 みんなが断ったんでしょ?」
「その通りだ」
まぁ、みんなの気持ちも痛いほどわかる。俺も鏡魔術師になる前までの状態だったら王城に行くのは何とかして阻止したい。
「だが困ったな。 場所は王城で行うつもりだったから……」
シンラは顎に手を当てて考え出した。
「家来る?」
「いいのか?」
「俺はいいけど……リリーは平気?」
「はい、私も大丈夫です」
「だってよ」
「そうか、助かる……」
場所が決まったことでシンラは一安心といった様子をしていた。
「それで、時間はいつ?」
「日が傾いたころに学校の前に集まる予定だ。 だから申し訳ないがその時間に来てくれ」
「了解」
そして俺たちはいつも通りに授業を終えた。
「さてと、じゃあリリー。 俺たちもパーティーに向けてプレゼントを買いに行こうか」
「はい!」
「でも何買えばいいか分かんないんだよなぁ」
「お恥ずかしことながら私もわからないんですよね……」
「うーん、この場合は……自分がもらったらうれしいものを買えばいいのかな?」
「うぅ……私だと、戦闘向きの魔法道具ぐらいしか思いつかないです」
「うん、今度なんか買いに行こうね」
「え? あ、はい」
リリーの新たな問題が一つ見つかったが、今はスルーしておこう。この話は今後しっかりと解決していかないと。
「あ、じゃあこうしようリリー。リリーがいいなと思ったものを買おう」
「わ、分かりました」
そうして俺たちはあたりを見て回った。
「あ、これ……」
リリーが立ち止まったのはある魔法道具だ。
「どれどれ? 香る木花か。 うん、いいものを選んだねリリー」
「そうでしょうか……」
リリーの選んだ香る木花は戦闘用の魔法道具ではなく、嗜好品の一種だ。手のひらサイズの木でできた花の置物で、花の真ん中に好きな花の蜜を垂らすと、その蜜の香りを周囲に広めてくれるというものだ。
「うん、いいと思うよ」
「で、では買ってきますね!」
リリーは香る木花を大事そうに持って、それを買いに行った。
「さて、俺はどうするか」
俺はリリーが買いに行っている間にプレゼントを選ぶことにした。
「でも何買えばいいのやら……」
俺はあたりをふらついていると、目に留まったものがあった。
「これは鏡か?」
店の露店に売り出されていた鏡を見て俺は驚愕した。
「なんて細かい装飾なんだ……」
両の手のひらほどのサイズにもかかわらず、円形の鏡を覆うように作られている装飾はまさに見事としか言いようがない。
「お兄さんや、これが気になったのかい?
俺が鏡を見ていると、露店で物を売っていた商人の男性が話しかけてきた。
「あ、はいそうです」
「すごいでしょ。 なんでも来訪者が作った装飾だからねぇ」
「来訪者がですか?」
「そう。 それが各地を渡り歩いてきて、ここにあるんだ」
「へぇー、そうなんですね」
「で、買ってくかい?」
「はい、これを買います」
「まいど!」
俺は買った鏡をお願いして包装までしてもらった。その鏡を鏡の世界にしまった後、先ほどの場所に戻ると、ちょうどリリーも買い終わったようだ。
「あ、ミラト様」
「リリー。 そっちも買い終わったみたいだね」
「はい」
「じゃあそろそろ時間だし行こうか」
「はい!」
俺とリリーは移り鏡で約束の場所に向かった。
「ごめん、待った?」
「いや、我々も先ほど来たところだ」
俺たちが移り鏡をでると、既にみんな集まっていた。
「じゃあさっそく行こうか」
俺は移り鏡でみんなを鏡の部屋に向かった。家に入った俺は料理の支度をしながらみんなに声を変えた。
「じゃあ俺は料理を作っとくから、その間にみんなで飾り付けとかしといてよ」
「私も手伝ってもいいか?」
「ガネスが?」
「あぁ、実はたまにたしなむ程度に作っていてな」
「そうなんだ。 じゃあ頼んでもいいかな」
「あぁ」
「あ、じゃああたしも手伝うよ!」
「アリーシアも?」
「こう見えても私、料理できるんだよ」
「ならお願いしようか」
「任せて!」
俺たちは料理をするメンバーと、装飾をするメンバーで別れて作業を行った。一時間程度したところで、全ての準備は終わった。
「じゃあ料理運ぶよ!」
「待ってたっす!」
「我慢がミラにはもう無理です」
「ミナはもう待てません」
「はいはい、落ち着いて落ち着いて」
俺たちは両手で複数の料理の皿を持って、テーブルの上に運んだ。
「よし、じゃあ乾杯しよっか」
「そうですわね」
「そ、そうだね」
「じゃあ私が……さて、本日は集まってくれてありがとう。 今夜が良い一日になればと思う。 乾杯!」
「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」
シンラはコップを持って立ち上がると、大きな声で乾杯の挨拶をした。その挨拶を皮切りに、みんなは思い思いの料理を食べていた。そして、料理があらかた食べ終えた後、プレゼント交換の時間になった。
「さて、みんなプレゼントは用意してきてくれたか?」
「してきたけど、どうやって決めるの?」
「それは大丈夫っす!」
レオは自信満々に十枚の二枚折にされた紙と、その紙を入れた箱をいつの間にか用意していた。
「この箱の髪を順番に引いて、最後にみんなで開けるっす! プレゼントは序列順に番号を振ってあるっす!」
「なるほどねぇ」
「さぁ、ひくっす!」
そうして、プレゼント交換が始まった。みんな誰のプレゼントで何がくるのかワクワクしているようだ。ちなみに俺のプレゼントはシオルが、リリーのプレゼントはアリーシアにわたった。そしてリリーはガネスの用意したティーカップだった。俺はというと……
「ク、ククク……に、似合ってるっすよ……」
「……」
「ア、アハハハ!もう無理っす!」
「レオ……これは何……?」
俺の頭の上でピョコピョコと猫耳が動いている。そう、俺はレオの選んだプレゼントで、来訪者が無駄に時間をかけて作ったといわれている猫耳カチューシャというものだ。ご丁寧に付けたら一時間は外れないらしい。その様子を見ているレオは大爆笑している。
「レオ……覚悟はいい……?」
「え、あ、ちょ……お、落ち着くっす。 ね? ミ、ミラトさん?」
「今すっごく冷静だよ?」
「そ、その割には顔が……」
「ちょっと外行こうか」
「え、あ、いや……って、力強いっす! ちょ、みんな助け……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!」
こうして、レオの叫び声と共に今年のハロウィンの夜は終わりを迎えた。