初めての海
二学期が始まり、指定校に向けての活動が活発になるため、さらに投稿頻度が下がると思います。どうか気長に待ってくださるとうれしいです
「見てくださいミラト様! 一面水です!」
「うんうんそうだね」
「水没の湖の地底湖も大きかったですが、それなんて足元に及ばないぐらい、あたり一面水だらけです!」
「うんうん」
「しかもキラキラとして、宝石と見間違えてしまいます!」
「はしゃいでるねぇ……」
海に来てから十分ほど経つが、リリーはさっきからずっとあの調子だ。尻尾がブンブンと振り回され、海水をパシャパシャと飛ばしている。
「キュ~」
「あ、ミロ。 駄目だよ舐めちゃ!」
俺の肩に乗っていたミロが、フラフラと飛んでいくと、舌先で海水を舐めた。
「キュ~?!」
「ほら、そうなるから……」
「キュキュキュ~!!」
「いや、怒られても……」
「ミロちゃん、この水を飲んだんですか? じゃあ私も……」
「え? あ、ちょリリー?!」
ミロが海水のしょっぱさに対してなぜか俺に向かって文句を言っている様子を見て興味を持ったのか、リリーも、手のひらで海水を掬って、それを舐めた。俺はミロの相手で反応が遅れ、制止が間に合わなかった。
「ん~?!」
「間に合わなかったか……」
「しょ、しょっぱいです……塩舐めたみたいです」
「だから止めたのに……」
「す、すいません」
「キュ~!」
「いや、だからそれに関しては俺に怒られてもどうしようもないって」
「キュ~? キュキュ!」
「今はそれで良いっていうけど、本当にどうしようもないんだってば……」
海の水がしょっぱいことに関して、一応納得したような態度をするミロ。それを見て、リリーはクスクスと笑っている。
「まぁ納得したみたいだから、ちょっと早いけど昼食の準備でもしようか」
「はい!」
「キュ!」
俺はログハウスから持ってきた、台の中に、これまた家の中にあった炭と発火材を入れてから、小さな火球で着火した。それから空気を送り続けていたら、数分で十分な火力となった。
「これでいいかな」
「何をなさっているんですか?」
俺が火を起こしている間は無言だったリリーが、火おこしが終わったタイミングで問いかけてきた。
「肉や魚、野菜とかを焼くBBQだよ」
「ばーべきゅー?」
「そう」
「それって、普段の焼き肉や焼き魚と何が違うんですか?」
「料理の内容としてはたいして差はないけど……」
「ないけど?」
「この海を見ながら焼いて、海を見ながら食べるっていう、特別な時間ってのがいいんだよ」
「そうなんですか?」
「まぁ、聞くより体験したほうが早いか。 もうちょっと待っててね」
俺は、台の上に鉄網をかぶせて、その上に串刺しにされた肉を乗せて焼きだした。少しすると、すぐに肉の焼ける香ばしいにおいが漂いだした。
「あ、いい匂い……」
「もうちょっとだよ」
俺は網の上にある肉をひっくり返して、また焼きだした。そして数分後、香ばしい匂いを漂わせている、肉が出来上がった。
「はい、リリー」
「ありがとうございます! いただきます!」
「召し上がれ」
リリーは串にささっている肉を一口食べた。その直後、目をキラキラとさせながら俺のほうを見てきた。
「お、美味しいです!」
「でしょ?」
「はい!」
「キュキュ!!」
「ちゃんとミロの分もあるよ。 ほら熱いから気を付けてね」
「キュ! キュ~!」
「そうかそうかよかった」
俺はおいしそうに食べているリリーとミロを見ながら、自分も焼いた肉を食べた。そしてその後も、肉だけでなく、魚や野菜などを焼いて、心行くまで堪能した。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様です」
「ちょっと食べ過ぎちゃったかもしれません」
「え、じゃあデザートはいら『要ります!』わ、分かった……」
要らないと言っている途中に、割り込むようにリリーが近寄ってきた。やっぱり、デザートは別腹みたいだ。