マーレン支部のギルド長
書き溜め投稿です
俺達が受付に向かって歩いていくと、並んでいた人たちがどいていき、なぜかスムーズに受付まで来れてしまった。
「なんか、申しわけないな……」
「ですね……」
「まぁいいか。 とりあえず用事を終わらそう」
「そうですね」
俺達は受付に着くと、受付嬢に話しかけた。その時、ステアさんに書いてもらった手紙も同時に渡しておいた。
「失礼」
「な、何でしょう?」
「アポはないのだが、ギルド長と面会できないか確認してもらうことはできないだろうか? こちらに王都のギルド長からの手紙もあずかっている。 確認してくれ」
受付嬢は俺から手紙を受け取ると、名義を確認した後すぐに受付の奥に走っていった。そして数分もしないうちに、受付嬢の代わりに身長二メートル以上はありそうな筋骨隆々なスキンヘッドの男が出てきた。あまりにも筋肉があるため、ギルドの制服がパツパツになっており、今にも破れそうになっている。
「す、すみません! お待たせしました!」
「いえいえ、お忙しい中急に訪問してしまった此方が悪いですので、お気になさらず」
「そう言ってもらえると助かります。 さぁ奥にどうぞ」
俺達はギルド長に案内されて、奥にある個室に案内された。
「申し遅れました。 私はこのマーレン支部のギルド長を務めさせていただいております。 ワミツと申します」
「存じ上げておりますよ。 かの有名な階級Sパーティー【霞の拳】の元メンバーのワミツさんですよね」
「なに、昔の話ですよ。 今は現役を退いた身です」
「にしては筋肉は衰え知らずのようですが?」
「ハハ、筋トレは趣味ですからね」
「なるほど」
「それで、姉さ……いや、ステルクロニアさんに手紙を書いてもらってまで私に何か要求がおありで?」
ん? 今姉さんって言いかけて無かったか? まぁそんなことは置いといて、話を進めよう。
「いや、特に何かあるわけではなくてですね」
「というと?」
「私は鏡魔術師という国家権力をも超えた存在です。 そんな私が長期間滞在するとなった場合、何か事件が起きるとギルドや街を治めている貴族の方にも影響が出る可能性が高い。 そのため、事前に足を運ばせていただいたというわけです」
「なるほど、把握いたしました」
「わざわざ業務を止めてしまい申し訳ない」
「いえいえ、お気になさらないでください」
「そう言ってくださるとこちらとしても気が楽です」
「つかぬことをお聞きしますが……」
「どうしました?」
「なぜマーレンに?」
「それはですね、観光ですよ」
「観光というと?」
「海を目当てにしてきました」
「なるほど……」
「私の隣にいる彼女、リリーはどうやら海を見たことがないみたいで、初めての海はとびっきり美しい海を見せてあげようと思いましてね」
「左様でしたか。 ではお節介になりますが、こちらから貸し切りビーチの方に話を通しておきましょうか?」
「してもらえるととても助かるのだが、いいのか?」
「まぁ正直に言ってしまえば友好関係を気づきたいという思惑はあるのですが、それ以上に思い出を素敵なものにしてほしいのです」
「なるほど……では、お願いしてもいいかな?」
「分かりました。 こちらで話をつけておきますので、少々お待ちください。 話がつき次第、職員を向かわせます」
「分かりました、感謝する」
そして俺たちは一旦エントランスに戻った。