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臨海都市マーレン

久しぶりの更新です。後期末近いので更新遅くなります

 寄り道をしたあの日から十日ほど経った昼頃、俺たちは目的地である、臨海都市マーレンに着いた。


「ここがマーレンかぁ……」

「潮風が心地いですね」

「キュ~」


 マーレンの町並みは王都とは打って変わって、レンガ造りの建物があちこちに見える。また、ちらほらと点在する屋台からは香ばしい焼き魚の匂いが漂っており、気づいたらその屋台に目を奪われていた。我に返ってリリーや、ミロを見ると、一見そこまで興味の無いように取り繕っているが、尻尾や鼻が反応していた。その微笑ましい光景を眺めていると、リリーが俺の視線に気が付いた。


「いかがなさいましたか……?」

「いや、リリーも食欲には勝てないんだなぁって思って」

「み、見てたんですか?!」

「うん、しっかりと」

「は、恥ずかしいです……」


 リリーが恥ずかしそうに照れている姿はとても可愛くていつまでも見ていたいが、そうもいかないので俺は話を続けた。


「じゃああの焼き魚、買ってくるね」

「え、そんな……」

「実をいうと俺も食べたいんだよね。 だから遠慮なんてしないでね」


 俺はそう言いながら、屋台に向かって歩いていき、屋台の主人に話しかけた。


「やぁ、ご主人。 あまりにも良い匂いで、釣られちゃったんだけど、これは一体なんて魚なんだい?」

「お、どうした兄ちゃんよそから来たのか?」

「えぇ、海とその海の幸が目的でね」

「なるほどな」

「それで、それは何て名前の魚だい?」

「こいつは油魚(ゆざかな)、漁師たちの間ではクロウオって呼ばれている魚だな。 見ての通り、手のひらほどの大きさの魚だが一度焼きだすとその身からは油がだらだらと垂れてくるんだよ。 んで、ついその油で焼きすぎちまうから漁師たちからは黒く焼け焦げた魚って意味でクロウオって呼ばれているんだよ」

「なるほど。 ではそのクロウオをとりあえず三匹いただけますか?」

「あいよ。 んじゃ合計で三百ルナだ」

「どうぞ」

「あいよ、ぴったり三百ルナ、確かに受け取ったぜ。 んじゃこれがクロウオだ。熱いから気をつけろよ」

「ありがとうございます」

「また来いよ~」


 屋台の主人と手を振って別れた後、片手に三本の串に刺された調理済みのクロウオをもってリリーとミロのいるところに戻った。


「買ってきたよ」

「ありがとうございます」

「キュ~イ」

「じゃあ」

「「頂きます」」

「キュ~キュ~」


 俺達はそれぞれのクロウオに齧り付いた。


「熱っ! でも、美味い……」


 ホクホクとした身から、黄金色(こがねいろ)の油がジワリと染み出し、身に振りかけられた塩の風味と絶妙にマッチして、口の中を瞬く間に支配した。そして俺は一分ほどで食べきってしまった。クロウオを食べ終えた俺は、ふと横を見るとリリーとミロもすでに食べ終えていた。クロウオを食べきったリリーとネロも満足げな様子をしていた。


「美味かったな……これはほかの海産物も期待が高まるな」

「ですね」

「キュ~!」

「さて、まずは海に行く前に冒険者ギルドに行こうか」

「何か依頼でも?」

「ほら、俺って一応階級S以上の人物じゃん? 普通の階級Sの冒険者なら特に問題はないんだけど、さらに俺の肩書がかかわってくると、いろいろとトラブルがあったとき大変らしいんだよね。 だからその町のギルド長に一報入れた方がいいってステアさんに言われてね」

「分かりました。 では向かいましょうか」

「確かギルドは、あっちだね」


 俺達はマーレンの冒険者ギルドに向かって歩き出した。

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