寄り道
マーレンに向けて歩き出して、三日が経った。
「あとどれぐらいでマーレンに着くのかな」
「このままのペースだと、後十日ほどですかね」
「思ったよりも遠いんだね」
「ですね」
そんな話をしながら話していると、俺のすぐそばのわき道から、一人の少年が、自分の二倍ほどはありそうな釣竿を持ちながら走ってきた。その少年とぶつかりそうになったが、ぎりぎりで避けることができた。
「危な……君、大丈夫?」
「あ、はい。 すみません」
「ちゃんと周りは見ないとね?」
「この辺りはあまり人が通らなくて大丈夫だと思ってました。 すみません」
そう素直に謝ってきた少年は、肩紐ワイドパンツに、自身の髪や瞳と同じ、青色をしたロングTシャツを着ている。そして何よりも目を引くのは少年の表情だ。出会った時から常に笑っている。まるで何かを楽しんでいるように。
「君、ずっと笑っているけど、何かいいことでもあったの?」
「あ、えっと、僕はこの近くにある村に住んでいるのですが、双子の兄以外の人と話すのは久しぶりで」
「そうなんだ」
「あ、そろそろ兄と合流する約束があるので失礼します!」
「気を付けてね」
「はい。 あ、あとその脇道の先に湖があるのでもしよかったら寄ってみてください」
「ありがとう、寄ってみるよ」
「では失礼します」
そして少年は走り出した。
「さて、寄り道して平気?」
「はい」
「じゃあ行こうか」
俺とリリーは先ほどの少年が走り出してきたわき道を歩きだした。
そのわき道を十分ほど歩くと、その先には水没の湖の最下層を思わせるような大きな湖が、俺たちの眼前に広がっていた。
「おー、思ったより大きいなぁ」
「ですね」
「少し休憩していこうか」
「分かりました」
俺は移り鏡で鏡の部屋に戻ると、ミロと軽い焼き菓子などをもって戻ってきた。そして、布を床に敷いて、
その上にリリーと一緒に座り込んだ。ミロは俺の頭の上に乗っている。
「いや~静かでいいね……」
「ですね……」
「キュ~……」
俺達は焼き菓子を食べながら話し込み、休憩をした。
「さてと、十分に休憩もしたし、そろそろ行こうか」
「そうですね」
「ミロも、たまには一緒に行くか」
「キュ~イ」
ミロは一鳴きすると、俺の頭の上に乗った。
「相変わらずそこなのかミロは……」
「キュキュ~」
「まぁまぁ」
「まぁ、ミロがいいならそれでいいけどね」
「キュイ!」
「さて、じゃあまたゆっくりのんびり行きますか」
俺とリリーとミロはマーレンに向けて歩みを再開させた。