マーレンへの道中
絶賛スランプの途中です。あと、ほんわか回になります
俺達は朝食や軽い鍛錬を終えた後、さっそくマーレンに向けて出発した。別に急ぐ必要性もないので俺たちはゆっくりとマーレンまでの道中を楽しむことにした。
「なんか、久しぶりだね。 こんなにゆっくりと歩くのって」
「そうですね、ここ最近は何かと忙しかったですもんね」
「ハハ、そうだね」
今でも鮮明に覚えている。ここ、ネイシスに来てからとにかく忙しいとしか言いようのない日々を送ってきた。今のように、のんびりと話しながら二人きりで歩いたのってもしかすると、ネイシスに来るまでの道のり以来かもしれない。
「リリーは、どうしてマーレンに行きたかったの?」
「実は……海を、海を見てみたくて」
「海?」
「はい。 実は生まれてから一度も見た事は無くて……」
「そうなの?」
「はい。 海の存在も、両親から聞いただけで……その、実は海を見るのが、私の小さな夢の一つでしたので」
と、恥ずかしそうに話してくれた。
「なるほどね」
「おかしい……ですか?」
少し照れてリリーは聞いてきた。
「いや、いいと思うよ。 それも立派な夢だと思うよ」
「……ありがとうございます」
俺達は雑談を交えながら、歩き続けた。
「はぁ……なんでこうなるかな」
「ハハ……お疲れ様です」
俺はため息をつきながら、雪月花を鞘にしまった。今俺たちの足元には十人程度の山賊が、手足と口を紐で縛られている。
「まぁ、どうせ目当ては十中八九リリーだろうけどね」
贔屓目なしに見ても、リリーは絶世の美女と言っても差し支えない。捕まえて貴族に売りでもすれば、それはそれは死ぬまで遊べるほどの金額がつくことだろう。ただ彼ら山賊の誤算は、リリーと俺が冒険者の中でも最上位と言ってもいい実力を持っている事だろう。
「それでミラト様、彼らはどうします?」
「そうだな……連れて行くのも嫌だし、とはいえ鏡の部屋や鏡の世界にも入れたくないしな……とはいえ、死なれるのも目覚めが悪いしな……」
どうしたものか。こんなことに時間も使いたくないしな。
「そうだ、こうしよう」
俺は鏡の部屋から紙を取り出すと、紙に【私たちは山賊です】とだけ書き、山賊たちをひとまとめにしている紐に張り付けた。
「後はこいつらを人目に付きやすい通りのすぐそばに連れて行けばいいか」
俺は山賊たちに重力魔法反・重力領域をかけて浮かせて、引っ張り出した。
「私も手伝いますよ」
「いいよ、リリーの手にこんな奴らを触らせたくないからね」
俺達は山賊たちを、人が良く通るであろう大通りに置いた後、マーレンに向けて歩くのを再開した。