長期休暇の予定
ここから四章に入ります
「明日には長期休暇かぁ~」
「何か予定でもあるのか?」
「今のところは……まぁしいて言えばダンジョン攻略かな。 とはいえ、そのダンジョンも別に急ぎじゃないしなぁ……」
「本当に何もないんだな……」
俺は隣を歩くシンラ達とそんな会話をしている。兵隊蟻襲撃事件と名付けられたあの日が終わってから一か月が経った。俺たちの通う王立魔導学園は、明日をもって長期休暇を迎えるところまで来ている。
「シンラは予定あるの?」
「私は公務があるからな」
「へぇ~。 皆は?」
「私も父の公務の手伝いが」
「わたくしは領地に戻る予定が」
「ミラ、領地でいっぱい食べる」
「買い物を領地でミナはする」
「俺は鍛冶修行があるっす」
「ぼ、僕はダンジョン攻略を」
「私は家業の手伝いがあるわ」
「皆いろいろあるんだね」
「というか、ミラトが特殊なだけだと思うぞ?」
「え、そう?」
「「「「「「「「うん」」」」」」」」
なんと全員から即答されてしまった。と言っても本当にすることがないんだよなぁ……どうしたものか。そう悩んでいるとリリーに声をかけられた。
「では、臨海都市マーレンはいかがですか?」
「臨海都市マーレンか……いいじゃないか」
「え、そうなの?」
「あぁ。 マーレンは臨海都市の通り、都市のすぐ横に広大な海が広がっていてな、バカンスの名地でもあるんだ」
「私も何度か行ったことがありますが、海がとてもきれいでしたよ」
「海産物もおいしい」
「そ、それに海の魔物とかもいるから、珍しい素材とかも多いよ」
なるほど、そう聞くと確かに魅力的だな。それにリリーから何かを言いだしたりするのは珍しいしな。
「よし、リリー。 長期休暇が始まったらマーレンに行こうか」
「はい!」
にしてもマーレンか……海なんて何年ぶりだろうか……
「それでミラト様、お願いがあるのですが……」
「ん、何?」
「あの……マーレンに行くにあたってですね……あの、水着を新調したいのですが……」
「なるほどね。 じゃあ学園が終わってから買いに行こうか」
「ミラト、ちょっといい?」
「ど、どうしたのアリーシア」
「リリーちゃんのその買い物、私たち女性陣に任せてくれない?」
「え、なんで急に……」
「どうせお披露目するならちゃんとした場所の方がいいでしょ?」
「な、なるほど……?」
「それにリリーちゃんの水着、海で見た方がかわいさ三割増しよ?」
話の途中で急に近づいてきたアリーシアにそう耳打ちされた。でも考えてみれば確かにそうだ。景色というのは確かに重要だ。どんなに美しい宝石でも、ボロボロの木箱の中にあれば価値は下がるという物だ。
「だからさ、私たちに任せてくれない?」
「そうだね……じゃあ、任せたよ?」
「任せてちょうだい。 最高の水着を仕立ててくるわ!」
俺とアリーシアは、強く手を握りながら話を終えた。近くに居たシンラからやれやれと聞こえた気がするが、気にしない気にしない。
今回話題に上がったリリーシャの水着姿はTwitterにて見れます。
興味ある方は@naroukyoukaまで