おまけ:メアとファナの旅4
もう少しおまけ話が続きます
あれから何日も日が過ぎた。私たちは王都を中心にいろいろなところに足を運び、ミラトの情報を集めて回った。そのおかげで、いろいろと分かってきた。それでもミラトには会えてない。
「ミラト、何してるの……」
ついそんな言葉が漏れてしまう。ただあって一言謝るだけだから、こんなに苦労するなんて思ってなかった。
「まぁまぁ、前に比べれば分かったことも増えてきたんだから、十分進展してるんじゃないのぉ~?」
「そうだけど……」
この数日で分かったこと。まずはミラトは正式にネイシス国王に認められて鏡魔術師になったこと。その時の映像は私たちも見ていた。ほかには王立魔導学園に生徒として通っている事。これは制服で街を歩いているところをいろんな人が見ていたっぽい。さらには私たちがギルドを訪れた後、ミラトたちも来ていたらしい。そこで絡んできた【竜の瞳】を無傷で返り討ちにしたらしい。
そして何より一番の問題、それはミラトと常に一緒にいる獣人がいるという事だ。ディエナさん曰く、ディエナ商会でもほとんど見ることのない美少女で、まさに目麗しいという表現が合うとかなんとか。それを裏付けるように街ですれ違った人も皆口をそろえて、
「美しかった」
や
「お似合いの二人組だな」
など語っていた。
「今までミラトの隣は私だったのに……」
何だろう、考えただけでこの胸の奥の方がモヤっとする。今までに感じたことない感情だ。
「まぁまぁ、この調子ならいつかは会えるわよぉ~」
「うん……そうだね……」
ファナにそう言われて、私は顔を上げて、気持ちを切り替えた。すると、その瞬間、
「キャァァァァァァァァァア!!」
と、女性の叫び声が聞こえてきた。私とファナは顔を見合わせると、すぐに頷き、叫び声のした方に走り出した。
「何、事……」
私たちが駆け寄ると、そこには信じがたい光景があった。
「なんで、兵隊蟻が、町中に……」
広場の床を砕くように現れた数十匹の兵隊蟻が、近くにいた女性や青年、お年寄りに子供まで、見境なく襲っている。そしてそれに対応するように近くにいた冒険者らしき人たちが戦っている。その光景を呆然と立ち尽くしながら見ていると、後ろから背中を叩かれた。
「メア、行こう!」
「……うん、そうだね!」
私達は逃げ惑う住民の人込みをかき分けながら戦闘が行われているところまで走った。そこでは傷を負っているのにもかかわらず、立ち向かう冒険者たちがいた。
「メア、私は負傷者の手当てに行ってくる!」
「うん……こっちは任せて」
私達は一旦別れた。
「くそ、こいつらどんだけ湧いてくるんだよ!」
「メネリアス、もう盾がそろそろやられちまいそうだ!」
「もう少し耐えてくれ! ユファ、ガナスに付与をしてやってくれ!」
「分かってます!」
「騎士団はまだ来ないのか……くそ、人手が足りない」
「手伝う……」
「おい、お嬢ちゃん危ないから下がってな!」
メネリアスと呼ばれた剣士らしき人に、下がるように言われたがそんなつもりはない。
「おい、聞こえなかったのか?!」
「……風よ吹け一陣の刃として【強風刃】」
周りの人たちの髪や服をバサバサと激しく揺らすほどの強風が吹き、その強風が約十匹ほどの兵隊蟻を切り裂いた。
「マジか……」
「……これでも階級S。 私も戦える……」
「そっか、そりゃあ済まない。 じゃあ遠慮なくあんたの力、借りさせてもらうぜ」
そういってメネリアスと呼ばれた青年は目の前にいる兵隊蟻に斬りかかりだした。
大体時間軸はミラトたちが広場に到着する前になります。