おまけ:その後のネロ達
おまけ話の第一弾です。
今回はネロ視点となります。
酷く冷たい牢獄に俺とリナとアナは入れられた……らしい。
俺はそれどころではないのだ。
「あぁ! うるさい! うるさい! うるさあぁぁぁぁぁぁあい!」
耳を塞いでも頭の中で声が響く。終わり無く続くこの亡霊達の囁きは俺の正常性を失わせていく。
「ちょっとネロ~! 五月蠅いんだけど?!」
「ほんと、ちょっとは静かにしてくれない?」
と、隣の牢獄に入れられたリナとアナが叫んでくる。
「うるさい! あぁぁぁあ! もうだまれぇえええ!!」
くそ、あいつら、これをくらったことが無いから言えるんだ。
頭の中で響き続ける声で頭が割れそうだ!
カツン……カツン……
と、石造りの階段を下る音が聞こえてきた。
その音はだんだんと近づいてきている。
「罪人、ネロ。リナ。アナ。でろ」
と、近衛兵らしき人が俺達の牢をあけた。
「進め。国王がお待ちだ」
と、背中を押された。
俺達はミラトにやられた後この国、【イーリス王国】の、王都である、【イーリスの街】に運ばれた。
「お主達が我が国の利益となり得る存在を逃がしたのだな。」
と、国王が威厳たっぷりに言ったつもりだろうが、お世辞にも美しいと呼べるような顔はしてなく、醜く肥え太っている。
「が、がぁぁぁぁぁぁああ!! 頭が! 頭がぁぁあ!」
だがそんなことお構いなしに亡霊達は俺に囁きかける。
「えぇい! 黙らんか!」
と、国王が俺に向かって怒鳴るがそれどころではないのだ。
「お言葉ですが国王。こやつはあの亡霊の囁きのせいで常に死者の囁きが聞こえるようになってしまっております。これは仕方の無いことかと」
と、俺達を連れてきた近衛兵がそう進言した。
「えぇい! 魔法消失の部屋にでもこやつは入れておけ!」
と、俺を近衛兵が連れて行った。
そして魔法消失と呼ばれた部屋に入ると、俺に囁きかけていた声がピタリと止まった。
「あ、あぁ、囁きが! 囁きが聞こえない!」
俺は何日ぶりか分からない感覚につい喜びをあらわにしてしまった。
「のちに国王が仰せになられる。それまでここで待機するように」
そんな声を残して衛兵は部屋の外に出ていき、
ガシャン!
と重厚な音を響かせて鍵が閉まった。
「久しぶりに亡霊共の囁きが聞こえなくなったな。この部屋のおかげかな」
と、俺は周りを見渡す。特にこれと言った調度品は無く、牢獄の環境より少しはマシという程度だ。それでもあの亡霊共の囁きが無いだけで、とても気分が楽だ。あいつがこんな魔法かけなければ!
「ちっ、あいつのせいだ! おれにこんなことしやがって!」
と、俺にこんな呪いをかけたミラトが、頭に浮かぶと無性にイライラとしてきた。
端から見ればただの逆ギレでしかないのだが。
すると、国王と先程の近衛兵がやって来た。
そして近衛兵は俺の後ろに無言で回ってくると、俺に向かって手刀を首に打ち付けた。
「ガハッ!」
と、俺は倒れ込み、薄れゆく意識の中で首に何かをつけられるのを感じた。
そして今日俺達はこの国の文字通り奴隷となった。
2話目は逃がされたファナと目覚めたアナの話となります。(予定)