女王の死
俺の目に映る鋼鉄女王蟻はすでに満身創痍といった言葉が似合っている様子だ。
「立っていられるはずはないのに……何故……」
体はいたるところに穴が開いていたり、抉られていたり、灰へ変貌していたりと本当になぜ生きているのか不思議で仕方ない。
「ギ、ギシャァァ……」
そういえば、スキルって詳細が見られるんだったはず。恐らくだが、何かしらのスキルが辛うじて生かしているとしか考えられない。
「【映し鏡】」
映し鏡で先ほど見た鋼鉄女王蟻ステータスが現れた。
「さて、どれが鋼鉄女王蟻を生かしているんだ?」
一番ありえそうなのは【王の威厳】なのかな……。詳細を見るとやっぱりそうだった。
スキル名称:王の威厳
悦明:王の存在感により、格下の相手に威圧の効果を与える。
また、一度だけ生命力が危機に瀕している時にのみ、隷属している生命体の生命力を消費してダメージを肩代わりさせる。
なるほど、このスキルの効果か。どれほどの部下がいるか把握しきれていないが、恐らくとてつもないほどの数の部下の命を消費したのだろう。
「あなたは確かに素晴らしき女王だった。 だがそれもここまでだ」
俺は雪月花を構えながら、ゆっくりと歩みを進めた。鋼鉄女王蟻は何かを悟ったかのように、微動だにしない。
「刀術……【死突】」
俺は鋼鉄女王蟻の脳天に向かって一度だけ雪月花を突き刺した。雪月花は何の抵抗もなく刺さっていき、俺は脳天に突き刺した雪月花を抜いた。その数秒後に、鋼鉄女王蟻のその巨体を支えていた足の力が段々と抜けていき、その巨体を地につけると同時に、息絶えた。
「お、終わったんですか……?」
「あぁ、お疲れ様」
俺は雪月花をしまいながら、リリーのところに戻っていった。ちなみにもう白銀のドレスは着ていない。
「これで、もう大丈夫なんですよね……?」
「あぁ、恐らくね」
心の底からリリーは安心しているようだ。
「では、皆さんのところに戻っていきましょう」
「そうだね……でもその前に、鋼鉄女王蟻の死骸の回収と……」
そこで俺は壁の片隅を見つめながらこう発した。
「そこに隠れてるやつ、出てきたらどうだ?」
「隠れている、やつ……?」
リリーは分かってないようだ。だが、俺は気づいている。戦闘開始前からずっといた、今もなお隠れている者の存在を。
「フ、フハハハハハ! やはり伝説の鏡魔術師様には隠し切れませんでしたか!」
壁の一部が抉り取れ、その奥から一人の男が姿を現した。




