ひと時の休息
思っていたより長くなってしまいました……蟻の話がこんなに伸びるとは……
「大丈夫か?! ミラト?!」
「うん、まぁ何とか?」
「そ、そうか……だがあれほどの魔法を四つも放ったのだ。 辛かったら遠慮なく言ってくれ」
「そうさせてもらうよ……」
俺は魔力を一気に消費してしまったため、リリーに支えてもらいながら立っている。
「にしても……まるで災害だな……」
「まぁ……その分使いすぎると、今の俺みたいになるけどね」
シンラが周りを見渡してそう呟いた。確かに原形が分からないほど粉々になっていたりしている。体の一部が残っているのはまだいい方で、ひどいものは灰すら残っていない。
「ミラト、もう移動可能か?」
「ごめんあとちょっとだけ」
「分かった。 じゃあみんなもここで一度休息をとろう」
シンラが皆に指示をして、皆床に座ったり、壁に寄りかかったりなど思い思いの休息をとっていた。
「にしても光源が炎なのは辛いな……熱くなってくる」
「そうだね、じゃあこうしよう」
皆に手伝ってもらい、焔の街道の炎を消した後、別の魔法を放った。
「【光源】」
俺の左の人差し指から、フヨフヨと魔力が飛び出していき、止まったと思うと、光を発し始めた。
「これで多分大丈夫かな……後、よければこれを使って」
俺は鏡の世界から布のようなものを人数分取り出した。
「これは……布?」
案の定みんなこれを布だと思ったようだ。
「これに魔力を流してみて」
俺がそういうと、冒険者の一人が魔力を流し始めた。すると数秒後、
「うわぁ?!」
という声と共に、その冒険者の手から、先ほどまで魔力を流していたものが落ちた。
「これは……クッションか?」
「そ、魔力を流すことで簡易的なクッションを作り出すんだ。 ただ残念なのは使いきりなんだよね」
クッションだとわかると、皆魔力をすごい速さで流し始めた。そしてすぐにそのクッションに座ったり、クッションを枕にして寝転がったりし始めた。
俺はさらに鏡の世界から、しっかりとした二人用のソファを取り出した。俺達だけ豪華になるが、それは持ち主という事で許してほしい。
「じゃあリリー、俺たちも休もうか」
「い、いえ……私はそこまで疲労があるわけではないので大丈夫です……」
「もしかしてだけど、俺達だけ豪華だから遠慮している?」
「うっ……そ、そういうわけでは……」
どうやら図星のようだ。するとそこに、シンラがやってきた。俺たちの近くにほかの人はいない。
「どうしたんですか?」
「リリーが遠慮してて休んでくれなくてさ」
「そうなんですね。 リリーさん、私たちには気にせずしっかりとお休みください」
「で、ですが……」
「お恥ずかしい話ですが、ミラトさんに合わせられるのはきっとリリーさんしかいないんです。 なので、しっかりとお休みください」
「……わかりました」
納得したリリーはようやく俺の横に座りだした。俺は声には出さず、手を合わせてシンラに感謝の意を示した。それを見たシンラは、一度頷いてから騎士たちの元に戻りだした。
「じゃあリリー、何か少し食べようか」
俺は鏡の世界から出来立ての鮮度を維持したサンドイッチを取り出した。
「あ、ありがとうございます」
「これからいつ食事ができるか分からないからね。 しっかりと食事はとっておこう」
そして、俺たちはサンドイッチを一つづつ食べ終えてから、休憩して過ごした。