黄金宮之罠
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ…………
悪寒がしてきそうなほど、多くの独特なは歩行音が聞こえてくる。段々と近づいてくるのは、軽い恐怖体験だと思う。
「ま、まだなのか?」
「もう少し堪えてください」
上位階級の冒険者や騎士たちは皆落ち着いているが、階級Cの方々はまだ俺たちに比べて経験値が足りなすぎる。こういう時、恐怖で怯え切っている。
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ……
段々と近づいてくる、もうそろそろ罠のあるあたりに差し当たる。
「皆さん、そろそろです」
「おう、分かった」
「分かった」
「分かりました」
「は、はい」
カサカサカサカサカサカサ……
来た!
「キシャァァァァ……? キシャア?! キシャァァァァア!」
後方にいるであろう上位種が、何か感じ取ったらしく、鳴き声を上げて進軍を一時停止させようとしているみたいだがもう遅い。
ザシュ、ドシュ、ザシュザシュドシュドシュドシュドシュザシュザシュザシュザシュドシュドシュと、切り裂いたり、突き刺すような音が、洞窟内に響きだした。その音に重なるように、断末魔や鳴き声が聞こえてきた。
「「「「「「「「「「キシャァァァァァァァァァァァァァア!!」」」」」」」」」」
「かかりました! 行きます!」
「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」」
俺は【ライトベール】を展開して、雪月花を抜きながらほかの人と同様に飛び出した。
「なんだこれ……」
「皆さん困惑してないで早く!」
「す、すまん!」
主に兵隊蟻で構成された大群は、二百匹以上の兵隊蟻が、天井や床、両側の壁から突き出た、先端が反対側まで面行くほどの巨大で鋭利な黄金の杭のようなものや、いたるところから飛び出している無数の刃によって、体のいたるところから貫かれていたり、原形が分からないほど切り刻まれていたりしている。また、何とかその攻撃を軽症で躱した奴らも傷口から急激な速さで黄金が侵食していき、あちこちで躍動感溢れる蟻の黄金像が出来上がっている。
「これ、俺たちも攻撃できないんじゃ……」
「もうすぐ効果切れるのでご心配なく!」
俺のその発言の数秒もしないうちにまるで夢のように黄金が消えうせ、貫かれてた死体や黄金像も同時に黄金が溶けていき、宙に浮いていた死体や、黄金像はドサドサと地に伏せ始めた。
【黄金宮之罠】
葬り去られし魔法の黄金魔法の一つ。
ある一定空間に黄金を染み込ませて、ある一定の場所を踏む、もしくは一定量の魔力を持つ者の通過など、使用者がその都度自由に発動条件を設定し、条件が満たされると数秒の間、杭や刃、場合によっては槍や矢などが魔法効果範囲内に展開される。黄金に触れると触れた箇所から黄金化していき、全身が黄金化すると死に至る。