進行
「にしても、暗いな」
「だね」
今ここにある光源は、はるか上空に見える俺たちが下りてきた穴だけだ。
「じゃあ光を用意しようか【ライトベール】」
俺が魔法を唱えると、俺たちの小規模部隊を包むように、光の薄い膜のようなものが現れた。
「これでこの範囲内は大丈夫だけど、この魔法の範囲外からの攻撃や敵は見えないから、索敵魔法や魔力感知が使える人は優先的に使用してくれると助かる」
「あぁ、分かった」
俺が周りを見渡しながらそう言うと、何人が頷いてくれ、すぐに詠唱に入ってくれた。ちなみにリリーも索敵魔法は使えるが、今回は魔物の迎撃に専念してもらっている。
「よし、じゃあ改めて……気を引き締めていくぞ!」
「「「「「「「「「「おぉ!」」」」」」」」」」
俺たちは慎重に洞窟内を歩き出した。
「なかなか進展しないなぁ……」
歩き始めてから数十分が経った。未だに魔物に遭遇する様子はない。どうにもダンジョンの中を無理やり洞窟にしているようで、一本道だが、足場が悪く歩きにくい。それに壁越しに魔物の鳴き声がいたるところから聞こえてる。
「索敵魔法に反応があったぞ!」
「よし、皆戦闘準備! 騎士の方は主に防衛を、魔法が使える人は詠唱構え! それで数は?!」
「数は……ざっと、せ、千……」
「「「「「「「「「「千?!」」」」」」」」」」
「数が多いなぁ……」
流石にその数は聞いてない。それにこの一本道だから逃げ道がない……ん、待てよ?
「逆に罠を張れば一網打尽にできる……?」
「どうしました?」
「皆、ちょっといいかな?」
「どうしたミラト?」
「ちょっと試してみたいことがあるんだけど……」
俺は思いついた作戦を伝えた。
「確かに、それなら消耗を抑えれるな……」
「試してみましょう」
「私もいいと思います」
「俺もいいぜ、ミラトを信じるぜ」
皆、肯定的な意見をしてくれた。ならばここはしっかりと成果を残したい。
「では俺がここで罠を張ります。 罠が発動した後、俺の合図で突撃してください」
皆、それぞれ自分の手に武器を構えて待機している。
「黄金魔法【黄金宮之罠】」
俺が魔法を唱えると、俺の足から、黄金が侵食していき、一定のラインで、浸食が止まると壁や天井まで侵食していき、浸食しきると黄金が消えていった。
「これで大丈夫のはずです」
「ほ、ほんとに大丈夫かそれ?」
「え、じゃあメネリアスかかってみる?」
「や……辞めとくわ……」
「そろそろ来そうだ!」
「よし、皆さんでは一度、【ライトベール】を解除します。 突撃するときに、もう一度使うので、目をやられないように注意していてください」
俺は魔法を解除しながら、皆にそう伝えた。
【ライトベール】
光の性質を持つベールが一定範囲を覆い、ベール内を照らす。一度多く魔力を払い展開後、余剰分の魔力を消費して維持する。余剰分の魔力を消費しきると追加で魔力を補充する必要がある。
黄金宮之罠は次話で解説します