攻守逆転
「お帰りなさいませ殿下!」
「どうだ、何かあったか?」
「いえ、特に何も起こりませんでした!」
「ならよかった。 では、人を集めてくれ」
「と、言いますと?」
「今度は、こちらから攻める番という事だ」
「は! 承知しました!」
騎士たちに帰ってきてすぐにそう指示し、数十分後にはけが人や、けが人の治療をしている人を除いて全員集まっていた。
「みな、私の名前はシンファルラ=フォン=ネイシスだ! 知っているものも多いと思うが、この国の第一王子である! まずは皆、この異常に勇猛果敢に立ち向かっていただき感謝している!」
そこで、シンラは一度当たりを見渡した。そして俺の方を向いてから軽く頷き、演説を再開させた。
「先ほどの防衛の後すぐで、疲労があるのは重々承知ではあるが、この国の民を守るためにどうか、私に力を貸してほしい。 次は我々が攻める番だ!」
「「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」」」」」」」」」」
「殿下、ありがとうございます。ではこれより、此度の異常解決に向けての作戦をお伝えします! まず、鏡魔術師ミラト様をリーダーとした小規模の精鋭部隊を編成し、巣に向かいます。 そして、地上に残った人らは万が一のために待機となります! それでは、名前を呼ばれた方は、ミラト様のところに集まってください!」
数十分後、俺をリーダーとした小規模部隊の編成が終わった。主なメンバーは俺に、リリー、シンラ、メネリアス。 それに騎士がリュエンやソルを含めた五人、階級Aの冒険者が四人、階級Bの冒険者が七人、階級Cの冒険者が二十人といった計四十人。
そして、地上待機組がガナス、ユファさん、残りの騎士団の方々を中心とした、主に階級D以下の冒険者が待機することとなった。
「では、行ってきます!」
「お気をつけて」
「地上は任せとけ!」
心強い返事をもらった俺たちは、穴を飛び降りた。
「ところで、ミラトさん」
「ん?」
「着地はどうするのですか?」
下を見る限り、まだ底が見えないからそれなりの高さがあるのだろう。
「まぁ任せといて」
俺は近づいてきた地面に向かって一つの魔法を使った。
「重力魔法【反・重力領域】」
俺が魔法を唱えると、俺の手から、渦巻いた魔力の塊が飛び出し、地に着くと、底を覆うように広がった。
「ミラトさん、これ大丈夫なんですか?!」
「大丈夫大丈夫」
俺達のすぐ真下に地面が近づいて、ぶつかると思われた瞬間……
「う、浮いた?!」
「な、何だ?!」
「ね? 大丈夫だったでしょ?」
周りの人たちも自分たちが浮いていることに驚いているようだ。俺が魔法を解除すると皆の足が地に着いた。
「じゃあ、行こうか」
俺は、皆に声をそうかけて、穴から続く、洞窟と変わり果てたダンジョンの通路を見据えた。
【反・重力領域】
魔法が展開された場所の重力を反転させ、物体などを浮かす魔法。エンチャントした場合、物体を浮かせて移動できる