操蟲師
新たな役職が出てきます。
気絶したネロを俺は冷めた目で見つめていた。
かつての仲間がここまで屑だったなんて思いもしなかったが。
「まぁ、これで縁は切れるだろう。こいつらには心残りなんてものはないしな」
と、完全にかつての仲間に対して興味をなくした。
「まぁ、心残りがないわけではないが……」
それは一人抵抗したメアの事だがそれについては、
「おい、ファナ」
「っ! な、何かしら」
流石にいつものおどけた口調はなかったがこちらもそちらの方がありがたい。
「お前は見逃してやる。特に何かしたわけでもないからな。代わりと言ってはなんだが一つ頼みを聞いてくれ」
「この状態で言うなんて実質命令じゃないかしら?」
「さぁな。と、まぁべつに慰めものになれってわけじゃない。メアのことを頼む。それだけだよ」
「それぐらい頼まれなくてもするわ……」
「そうか、ならよかった」
俺は話を切り上げると近くにいた階級Bほどと考えられる青年に声をかけた。
「君、少しいいかな?」
「は、はい! な、何ですか?」
ビクッ! としながらも答えてくれた。う~ん、少し周りに殺気を漏らしすぎたかなぁ……
まぁ、後悔してもいいことないし、用件を伝えるとしよう。
「悪いんだけど衛兵を呼んできてくれないかな?.これで足りるかな?」
と、俺は三万ルナを手渡した。
「こ! こんなにもらえません!」
「まぁまぁ、迷惑かけたお詫びとしてもらってくれ」
と、無理矢理手渡して彼を送り出した。
「さてと、ギルド長、話がある。そこにいるんだろ?」
と、人ごみの一番後ろの列……の上を指さした。
誰もが上を見上げた。そこには一匹の虫がいた。
「なぁ、虫越しじゃなくてしっかりと話そうぜ」
すると虫はどこかに飛んでいき、そのあとに一人の老人が下りてきた。
「ったく、お主一体いつから気づいておったんじゃ?」
「いつからって、あんたの虫が来てからだが?」
あ、爺さんも驚いている。
「あそこまでキレており、周りが見れてないと思ったんじゃがの」
「常に周りの状況を理解するなんて当たり前だろ?」
怒りで周りが見えないなんて三流かよ。
「アンタがあの有名な操蟲師のレントルさんでいいんだよな?」
「もう現役は引退しとるがな。いかにもわしはレントルじゃよ」
あの爺さん、現役は確かに引退してるかもしれないけど、身に纏うオーラが凄まじい。一見ただのじいさんにも見えなくもないが、まったくスキが見えない。これが冒険者階級Sの元最高峰パーティー【幻想】の一員か。
「いきなり呼び出して申し訳なかった。今回俺が申し出たいのは素材の買取と活動拠点の移転届が欲しいからだ」
「ふむ、移転届は後で発行しよう。して、素材とは? 査定士のところではいかんのか?」
まぁ、普通はそうなるよな。
「少なくとも俺は初めて見たからな。査定士に見せるより、あんたに見せる方がいいと思ったんだよ」
「ふむ。わかった。では出してもらえるかね?」
「あーかなりでかくてな、どっか倉庫とかないか?」
結晶龍馬鹿みたいにデカかったからな。
「そうか。では、第四倉庫に行くとしよう。ついてきたまえ」
と、言われ俺はレントルの爺さんについていった。後から聞いたがこの時に衛兵が来て、ネロ達を連れて行ったらしい。
「ここでどうかね?」
「うん、これぐらいなら入りそうだ。」
ここには俺と、レントルの爺さん、そしてベテランの査定士の方だ。
高さもそれなりにあるからきっと入るだろう。
「よし、出すぞ。【鏡の世界】」
するとそこには一匹の大きな結晶でできた龍が現れた。
その姿は死してなお、王者の貫禄があった。
「驚いた……結晶龍とは……」
意外にもレントルの爺さんは知っていたようだ。
まぁ、査定士の方は唖然としているが。
「知っているのか? レントルの爺さん?」
「あぁ……わしも一度見ただけだがな。よくもこの状態を保てたもんだ」
「まぁ、そこは伊達に伝説の職業じゃないってことだ」
「なるほど……この大きさと状態。さらには討伐難易度に素材の希少性も入れると……」
「どうだ? レントルのじいさん? いくらになりそうだ?」
「そうじゃのう……恐らく九百億ルナくだらんじゃろう。しかしそれは恐らくこの国の出せるぎりぎりの金額。世界でたった一つの大国、ネイシスに行けば数千億、いや、数兆ルナになる可能性もある」
まじか……かなりの大金に化けるのか。だがちょうどいい。ネイシスには行くつもりだしな。
「悪い、レントの爺さん。査定してもらってなんだけど、ネイシスには用事があるから、そっちに売るよ」
すると爺さんは
「うむ、それがいいじゃろう」
と、あっさりと快諾してくれた。
「あ、そうだ。路銀が欲しくてな。このぐらいのアダマンタイトを、売ってもいいか?」
と、俺は俺の腰の高さほどの量のアダマンタイトを、取り出した。
「この量だと、十億ルナほどじゃな」
「もう少しあげれないか?」
アダマンタイトの希少性を考えればもう少し高くてもいいはずだ。
「なら、十三億」
「もうすこし!」
「十六億」
「まだいける!」
「なら、十九億」
「あとちょと!」
「はぁ~わかった。二十億。これが限界じゃ」
「まぁ、妥協点か、よし! 売った!
と、俺は路銀にしては多すぎるほどのお金を手に入れた。
Twitterのフォロワー様に応援されたので少多めにしてみました。