閑話:ハロウィンの日の城下町
バイト先からの更新です!
「いやぁ~今日は皆元気だね」
「ですね」
俺達は今、街に買い物に来ている。いつもこの町は活気にあふれているが、今日はさらに一段と活気にあふれている。なぜならそれは今日が【仮装祭】通称、【ハロウィン】と呼ばれる日だからだ。この日は、町中の子供たちが魔物の仮装をして、大人たちに訪ねていき、お菓子や、その他もろもろをもらえる日なのだ。
「なーなー、そこのお兄ちゃんにキレイな獣人のお姉さん」
そんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「どうした?」
「えーとね、えーとね」
「なんて言うんだっけ」
「あれだよあれ」
と、三人の子供たちが声をかけてきたが、何を言えばいいかわからず、ひそひそと話し出した。
「「「トリックオアトリート! おかしくれなきゃ悪戯するぞ!」」」
何とも微笑ましい光景だ。満面の笑みでそういってきた。隣でリリーも笑みをこぼしている。
「じゃあ、これを上げよう」
俺は鏡の世界から、お菓子を取りだして、三人の子供たちに分け与えた。
「「「ありがとう!」」」
「気を付けなよ~!」
「「「うん!」」」
そして子供たちは走り出していった。俺たちは子供たちが見えなくなるまで、手を振っていた。
「いやぁ~かわいかったね」
「かわいかったですねぇ」
「懐かしいなぁ」
「懐かしいですねぇ」
「リリーもしたことあるの?」
「ありますよ。 ミラト様は?」
「もちろんあるさ」
「やっぱみんなしたことあるんですね」
「それは有名だからね」
「でも、誰が広めたんですかね?」
「この祭りのほかにも、いろいろな祭事や、年越しの概念なんかは、はるか昔にこの世界とは別の世界から来た、【来訪者】たちによって広められたらしいんだ」
「【来訪者】ですか?」
「そう、【召喚者】とか、【異世界人】とかも呼ばれてる人たちで、共通してこの世界とは違う世界から来ているんだ」
「【異世界人】って聞いたことあります!」
「【異世界人】が一番聞くかもね。 それで、面白いことに彼らはみんな同じ世界から、こっちの世界に来ている事がわかっているんだ」
「そうなんですね!」
「そして彼らの世界の文化の中の一つに、今や当たり前となっている【仮装祭】などがあり、それをこの世界で広めたんだ」
「じゃあ、昔私がお菓子をもらえたのって……」
「異世界人のおかげだね」
「偉大ですね! 異世界人!」
「ほかにもいろいろと彼らのおかげで、この世界は発展したとされているから、本当に感嘆の声しか出ないよね」
そんな話をしながら俺たちは、買い物を続けた。そして俺は途中で、高価なお菓子を一つ買って、ひっそりと鏡の世界の中にしまった。夕食後の驚く顔が今から楽しみだ。
トリック・オア・トリート!