彩芽「上から見下ろしたら滝じゃないかコレ……」
前回のあらすじ:彩香締め出される!
鍵かけてチェーンかけてっと……。
「ふんっ」
ちょっとは反省してもらわなきゃね。
――銀髪美少女、彩芽は軽くSであった。
先にお風呂入ろうっと。
「ふんふふーん♪」
浴槽は綺麗だけど念のためスポンジで擦るかぁ。
「彩芽ー、お願いだから開けてよー……」
玄関からお姉ちゃんの声が聞こえるけど……まぁいいや。
よしできた! フロ自動開始っ。
「…………」
浴槽にお湯が溜まっていくのってずっと見てられるよなぁ。じわじわ溜まっていく感じが良い感じ。
「……うん?」
洗ってる間にスカート濡れちゃってるじゃんか……足も濡れちゃってるし……。うーん。お湯が溜まるのを待ってるのもなんだし、シャワー浴びようかな。
「しょっ……っと」
服を脱いでスカートのチャックを外してパンツを脱いで……。
「うっ……」
手に持ったパンツが忌々しいあの出来事を思い出させる……。
ピンク色のリボン付いてて可愛かったけど、あんな事があったらもう履けないよね……。
「よし、捨てよう……」
パンツだけ洗面所の横にあるゴミ箱に――
「シュゥウウウトッ!」
豪速パンツがゴミ箱に華麗に入りガッツポーズ!
「よしっ!」
――お気付きの通り、姉が姉だけに銀髪美少女の妹もまた少しおかしいのである。
お風呂場でシャワーを頭から浴びると長い髪が肌に張り付いてく。
髪の毛長いなぁ……。カットしたいけど美容室行くの恥ずかしいし、男の人だったら嫌だし……髪切ったらチビ彩香って言われるし……。現状維持しかないか。
「よこしょっ」
下を向きながらシャンプーを泡立てていく。
「ぺ、ぺたん……ぺたんこ……」
真上からすとんと真下の床が見えるほどの絶壁……まな板……銀治……パンツ……。
連想ゲームみたいに今日の嫌なことが思い浮かぶ……。でも、そもそもお姉ちゃんが居れば良かったのに居なくなっちゃうんだもん。そりゃイライラして飛び跳ねたくもなるよっ。
「……」
思い出したら顔が熱くなってきた。
「うぅ……」
あんなの恥ずかしすぎて死んじゃう……。
「……」
でも、ちょっとカッコ良かった気も……する……。いや、気のせいかな。うん、気のせいだよ気のせい。あんな変態紳士みたいなのは関わっちゃいけない奴だ。
「むぅ……」
抱き上げられた時の感覚が残ってる……。お姫様抱っことかお姉ちゃんにしかされたことないなぁ。男の人にされるとか初めてかぁ……。
「軽い、可愛い、美しい、とか……」
嫌ではなかった……のかな。まぁ、あの性格じゃ近寄りたくないけど……。あ、お湯ちょっとだけ溜まってきた。
「よこしょー……」
シャワーを止めてまだ浅い湯船に浸かる。
「……お湯少なっ」
やっぱりちゃんと待ってから入れば良かった。へそより下までしかないじゃんか。
「む……」
自然と目に入った自分の胸に手を当ててみる。
「ま、まあどっかには需要あるでしょ……」
目に入らないように後ろに回していた髪を前に垂らしてみる。スッとしたまで流れる髪が水中でふんわり広がっていく。
「上から見下ろしたら滝じゃないかコレ……」
もう何をしても変わらなさそうだから諦めよう……。
「はぁ……」
私もお姉ちゃんみたいに大きかったらなぁ。身長とか胸とか。
身長があったら一緒にスポーツ出来たかもしれないし、胸だって大きかったら自信も、もう少しあったかもしれないし……。
「いいよなぁ……」
いつの間にか湯船が上の方まで上がって来ていた。お湯が胸に当たる感覚で分かるのが悲しすぎる……。
「……芥川銀治」
大学初日に階段から飛び跳ねて男の人の顔に股から突っ込んで……。
「うぅ……」
背中を丸めて浴槽を滑るように顔を沈めていく。
「ブクブクブク……」
お風呂のサイズはお姉ちゃんに合わせてて良かった。多少お湯が少なくても肩まで浸かれるのは私の数少ない利点だなぁ。
「極楽じゃぁ……」
湯船から上がったらオムライスが待っているっ。お姉ちゃんのオムライスッ……。
「……うん? お姉ちゃん?」
…………。
「やばっ……チェーンかけたの完全に忘れてた……」
かなり時間経ってるしっ!
「やっちゃったよ、やっちゃったよぉ……」
慌てて湯船から上がって軽くシャワーを浴びてから急いで寝間着に着替える。
玄関は閉まってる。けど、近付くと泣き声が……。
チェーンを外してそっと開けてみる。
「お、お姉ちゃん?」
「うぅ……うぐっ……ひぐっ……」
玄関横の壁に持たれて体操座りで泣く姉が……。
「ご、ごめんね……」
気まずすぎる……。
「彩芽ぇえええええ……」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を向けてこちらまで一直線にっ――
「うぐっ……」
頭一つ分違う体格差の彩香が勢いが勢いよく胸に……。くぅ……胸があれば跳ね返せたのかな……。
「うぇえええん……彩芽ぇ……」
「もー、ごめんってば……ほら、よしよし……」
泣いてるから慰めるけど、胸板で泣かれるこっちの身にもなって欲しい。
「……ひぐっ……うぅ……」
「ほらほら、よしよーし」
彩香の頭を優しく撫でる間、さっきからずっとでかい胸が地味に当たってるんだよなぁ
……。嫌がらせか、嫌がらせなのか。
「うぐっ……」
「ぁ……」
せっかく着替えた寝間着がびちゃびちゃに……もー最悪だぁ……。
と、とりあえず玄関で泣かれ続けても困るし。
「もー、早く中に入って」
「だっでぇ……彩芽がぁ……彩芽が閉めるからぁ……」
「どんだけ泣くのよ……」
「だっで……うぅ……独りは怖いんだもん……」
「……もー、分かったから。お風呂出来てるから入って」
なんとかその場から動かそうとしてみる。
「……よこしょっ!」
「……うっ……うぐっ」
当然のように運動してないこの貧相な体で姉を動かすのは無理だった。びくともしない。
「独りやだぁ……」
胸に顔を押し付けられ、背中の方にまで腕を回されて身動きがとれない……。
「もー、いっつもお姉ちゃんらしく振る舞ってるのになんでこういう時だけ……」
見上げている姉の顔が目に映った。ま、まぁ、今回は私が悪いわけだし仕方ないか。
「だってぇ……うぐっ……」
「もー……んじゃとりあえず一緒にお風呂入ろう。彩香の顔すごい事になってるし……私もこの寝間着もう着たくないし」
こんなびしょ濡れにされたらもう一回入らないと正直やってられない。
「へ……?」
途端に泣き止んで見つめてくる彩香。
「なに?」
「お風呂……?」
あぁ……もう、めんどくさいなぁ……。
「……だから、彩香に服びしょ濡れにされて嫌だから一緒にお風呂入るって言ってんのっ」
「ほんとに入ってくれるの……?」
泣いてせがまれたら断れないっての……。
「ほんとだから早く入ってよ。隣の人とかに見られたら恥ずかしいでしょ」
「彩芽とお風呂……」
抱きついたまま彩香が小さく呟いた。
「彩香?」
「一緒にお風呂……妹とお風呂……」
不思議なお風呂の呪文を唱え始めたことに何か背筋に悪寒が走る。
「あ、彩香ちょっと待って……ひゃっ!」
「そうと決まれば話は早い! お風呂だお風呂ー!」
気が付いたら私の身体はお腹に腕を回されて宙ぶらりんになっていた。
「ちょ、ちょっと!」
「おっフロ、おっフロ~♪」
「放して! やだ! なんかやだ!」
既に彩香には聞こえていないようで、私の必死の抵抗は無駄に終わった。
作者「彩芽さんお疲れ様です!」
彩芽「……」
作者「これ、良かったら!」(;・∀・)つ旦
彩芽「いえ、大丈夫です……」
作者「( ;∀;)」




