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銀治「お、お前、まさか……」

前回のあらすじ:男の娘の涙でも銀髪美少女に見える不思議。

「分かった……分かったから……」

「ほんと……?」


 涙目であざとく見つめてくるミハイル。


「くそ……分かったから大人しくしてくれ……」

「わーい♪ ギン君大好きー♪」

「うっ……」


 首に巻かれた腕のせいでミハイルの全体重が一点に……。苦しい……かと思ったがこいつ軽いな。


「ギンくーん♪」

 そんなことよりもこんな所を誰かに見られたらマズい……早く中に入らねば……。

 ミハイルに抱きつかれたまま玄関に引きずって鍵をかける。


「ギン君……もしかして……今日は返さないつもりなのかな……♪」


 視線がこっちに向けられている気がするが、とりあえず無視だ。


「ねー、ギン君ってばー♪ そういうツンな所も好きだよ♪」

「帰って欲しいのは山々だが、警察にパトカーとか言われたら無下に扱えないだろ……ほら、さっさと靴脱いでくれ……」

「はーい♪」


 足を後ろに曲げてスニーカーを脱ぐミハイルの後ろ姿は完全に女の子そのものだった。

 振り返ってこちらを向くミハイル。


「やっぱり相変わらず優しいねー♪ ギン君じゃなくってお兄ちゃんって呼んであげよっかなー♪」


 手を後ろに回し、下から覗き込むように見つめてくるミハイルに、思わず心が揺らぎそうになる。

 危ない……危ない……。


「ムッフー♪ どしたのかなー?」

「……」


 なんか改めて見ると彩芽と彩香を足したような奴だな……。


「あ、ちょっとギン君っ、置いてかないでよー♪」

「あぁ……憂鬱だ……」


 頭を抱えながら居間へと向かい、八畳ほどの空間にミハイルが遅れてやってきた。


「わー! 男の人の部屋だー♪」

「いや、お前も男だろ……」

「男の娘だもーん♪」

「はいはい……適当に座って――」


「銀治の布団だぁー!」


 ミハイルが端っこに敷かれた布団に飛び込み、枕に顔を埋めていく。


「銀治の匂いだ~♪ んん~♪」


 あぁ……俺の布団がもみくちゃにされていく……汚されていく……男に汚されていく……。


「……」


 布団は諦めよう……。


 俺は諦めて布団の隣に敷いているカーペットの上に座った。


 布団ともつれ合うミハイルのスベスベの太ももが目に焼き付く。あんなミニジーンズのどこにアレがしまってあるのか地味に気になるが、出来れば会話はしたくないので黙っておく。


「ハァ……ハァ……♪」

「……」

「ムフ……ムフフ……ハァ~ン……♪」

「おい、変な息漏らすな……」

「だって久しぶりなんだもーん♪」


 布団に絡まったままこちらを向くミハイル。


 あぁ……これが女の子だったらどれほど良かっただろうかと顔を手で覆った。


「はぁ……」

「ギン君♪」

「なんだ……」

「一緒に寝転ばないの?」


 女豹のポーズで可愛らしい小悪魔フェイスの……男。


「いや、お前、昔はそういうキャラじゃなかっただろ……」

「いやーん♪ ちゃんと昔のこと覚えてくれてたんだねっ♪」


 ミスった……。思わず自然と言葉を返してしまった……。


「んで、何しに来たんだ……」

「だからギン君に会いに、だよ?」


 目をキラキラさせながら布団に抱きついた状態で見つめてくるミハイルから視線を逸らす。


「ムッフー……ギン君変わってないなー♪」

「……」


 笑い方が誰かに似ているような気がしたが、気のせいか……。


「ねぇー、聞いてるのー? ギン君ってばー」

「え――」


 四つん這いで近寄ってきていたミハイル。足を伸ばせば丁度当たるくらいの距離まで近付いていた。


 近い近い近い……。シャツ……シャツが垂れ下がって胸元が危うい……。

 くそっ……男相手に何を焦っているんだ……無い胸に何を興奮しかけているんだ銀治よ……。いやまぁ、それはそれでアリなんだが、この場合は相手が違う……。


「おい、シャツ……」

「えー、聞こえなーい♪ なになにー♪」


 にんまりした顔でそのまま近寄ってくるミハイル。

 絶対聞こえてるだろこいつ……。


「だから、その姿勢やめろって……」

「ムフフー、見せてんのよーってやっ――」

「無いものを見せてつけてくるんじゃない……」


 ニコッと笑っていたミハイルの顔をなんとか手で押しのける。


「ミュミョミョゴミョゴミョゴミョゴ……!」


 押しているのに無理に張り合ってくるせいで何を言っているのか分からん……。


「もう近付かないと約束するか?」


 コクコクと、頬を手にめり込ませながら頷くミハイルに、俺はゆっくりと手をどけた。


「ぷはぁっ……♪」


 漏らす吐息が妙に艶めかしいのが鬱陶しい……。

 その辺の男なら今ので何人か昇天してしまっていただろう……。だが、男にそのような感情を抱くわけがない。


 自己防衛を兼ねて俺は後ろに少しだけ下がってからミハイルに話しかけた。


「それで……色々聞きたい事があるんだが……」

「ん? いいよー♪」


 こちらを向いて笑顔で女の子座りするミハイル。露骨にアピールしている細身の太ももと胸元が目にチラついて――


「くっ……」


 いかん……落ち着け……落ち着くんだ銀治……。


「なんでお前、女装なんてしているんだ……」

「んー、男の娘だからー♪」


 にゃははと無邪気に笑うミハイル。


「すまん、意味が分からない……」

「女装趣味が高じて男の娘になりましたー♪ なんちゃってー、えへへ♪」


 ミハイルはそう言いながら両手を股の間に置いてニコニコ笑った。


「いくら男の娘って言ってもその顔も体格も……」


 いくら女装趣味が転じたからと言っても、頭から足元まで、男らしくない体つきが一番引っかかる。


「ああ、顔は整形してないよ♪ まじまじ見つめられると照れちゃうよー♪」


 両手で顔を隠して指の隙間からチラチラこちらを見つめるミハイル。


「顔は……って?」

「えー、それ聞いちゃうのー♪ やだー♪」


 キャッキャと上半身を左右に揺らすミハイルに、俺の精神も揺らいでいた。

 こいつは男こいつは男こいつは男……男男男……オネエ、オネエ、オネエ……。


「一応……聞いておこう……」

「ボクはねー……♪」


 ニヤッと笑みを浮かべてもったいぶるミハイル。


「な、なんだ……?」

「竿や~竿だけ~♪ なのだよっ♪」


 ミハイルがウインクをしながら親指を立ててグーサインしている。

 が、そんなことよりも口にした言葉の意味が分からずに俺は固まっていた。


「……」

「ん? どしたのー♪」


 竿や~竿だけ~……とはつまり……。


「お、お前……まさか、た……玉を……」

「やんっ♪ 玉なんて恥ずかしいよぅ♪」


 なななななな…………。


「つまりお前――」

「本気で男の娘だぜいっ♪ ムッフッフー♪」



 ――六年ぶりに出会ったミハイル、まさかのニューハーフであった。

銀治「作者さん」

作者「あ、はいっ!」(*´ω`)。・〇(やっと呼ばれた)

銀治「この回いつ終わるんですかね……」

作者「えっと……」(;・∀・)。・〇(やっべ、夜までとは言えない)

銀治「夜までなんですね……」

作者「( ;∀;)見えてたんですね……」

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