銀治「銀髪美少女でツンデレで天然で可愛くて小悪魔とか何処の最終兵器なんですかね」
前回のあらすじ:甘ぁあああい!
「ま、まぁ、その、成り行きで……」
近寄っていた彩芽がそそくさとベンチの端までこじんまりとしながら移動する。
「ま、まあ、双子だし、下の名前で呼んでくれた方が分かりやすいし私はそれで別にいいしというか名前呼ばれなきゃ分かんないし……」
「そ、そうですよね」
なんだこの初々しいカップルみたいな空気は……。このままでは爆発してしまいそうなので早く帰ろう。よし、そうしよう。
「「……あの!」」
彩芽と視線が重なり硬直した。
一気に体温が上がった感覚を覚える。
「……」
なんだか恥ずかしくて、俺はぎこちない動作で立ち上がった。
「そ、そろそろ帰りましょうか」
「そ、そうね!」
「もう立てそうですか?」
「う……うん、多分だい、じょうぶ……よこしょ……」
彩芽はおぼつかない足取りで一歩二歩とゆっくり前に歩いていく。
「あ……ごめん荷物っ」
「気にしないでください、持ちますから」
「あ、ありがと……」
なぜいちいち照れるのか……。あれか、これが噂のあざと可愛いという奴なのか?
うん、多分違う気がする。銀髪美少女でツンデレで天然で、小さくて可愛くて……これを例えるならなんだろうか。やっぱり天使としか言いようがないのでは?
芝生の上を歩く彩芽の後ろを熟考しながらついて行く。
「……」
そういえば……男の人が苦手なのにさっき頭を触ってしまったから泣きだしてしまったんだろうか……。謝っていた方がいいかもしれない……。
「あ……彩芽さん」
「はひゃいっ!」
ビックリしながら振り返る彩芽の顔はまだ赤かった。
「さっきは触れてしまってすみません」
「……ん?」
何のことか分からないといった顔で首を傾げる彩芽。
「さっき頭に触れてしまったのでその謝罪を……」
「ああ、それなら大丈夫みたい……」
彩芽は照れくさそうに目線を泳がしながら呟いた。
「大丈夫……?」
「だって――」
言いかけた瞬間に急激に彩芽の顔が沸騰した。ボンッと音を立てたかと思える程の勢いに心配になる。
「大丈夫ですか?」
「だ、だだ……大丈夫だしっ!」
頬に手を当てて隠そうとする彩芽。
「でも顔が真っ赤ですよ?」
「だ、大丈夫って言ってんでしょ! 気にすんなバカっ!」
「でも、顔が茹でたタコみたいに真っ赤で……」
「だ、誰が茹でたタコだバカ! こっち見んなバカ!」
「振り向いたのそっちでは――」
「知るかバカ! ふんっ!」
振り向き直してプンスカ怒って歩いていく彩芽の後を追いかける。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」
「知るかバカ! 散りくたばれバカ! バーカ!」
顔だけこっちに向けながらめちゃくちゃ罵倒された……。
何かしてしまったのだろうか……。
結局、怒ってしまったままの彩芽の後ろ姿を見つめながらアパートまで帰って行った。
アパートの階段を二人で上がっていく。そろそろ荷物を返した方がいいかもしれないな。
「彩芽さ――」
数段先の彩芽に目を向けようと顔を上げる。足元から上へと視線を上げていくその途中、太ももの間――スカートの中に白いレースの下着が……。
「なに……」
振り返る動作でスカートがふわりと微かに舞い上がる。白いレースの下着を直視してしまう。いや、俺は紳士だ。買い物袋を渡すかどうかを聞くだけだ。決して目に映った景色の事なんて口走らないようにせねば――
「いや、その……どう考えてもラッキーだなーと」
間違えて本音が漏れた。
「ラッキー?」
階段の上で耳にかかる髪をかき上げながら首を傾げる彩芽。
かき上げる仕草に思わずドキッとする。わざとか、その動作はわざとなのか……自然体でこれをしているなら小悪魔だぞ……。天使で小悪魔なのか、それとも小悪魔で天使なのかどっちなんだろうか。
「角度とか向きとか完璧だなーと」
意味不明な思考回路のまま、口から本音が勝手に零れていく。
「角度とか向き……?」
「ええ、グッジョブだなと」
「さっきから何を言って……はっ⁉」
スカートを両手で押さえて赤面する彩芽だが、見えそうで見えないというのもまた悪くない。スカートと太ももの間ってハイソックスが無くても絶対領域なんだなと感心する。
「ちょ、こっち見るな! 見上げるなバカ!」
「そうは言っても――」
「目閉じて動くなバカ!」
「はい……」
名残惜しみながらゆっくりと視界を閉じていく。
彩芽に命令されて素直に従ってしまうあたり、俺はもしかしたらMなのかもしれない……。でも、なんだかMって嫌だな……。
視界がゼロになる。風が吹いているので多分、本来であればスカートがひらひらしているはず……。
あれ……でも、そもそも階段で目を閉じるって危なくないか?
「彩芽さん、危ないので目開けても良いですか」
「絶対ダメ!」
視界が塞がっているからかさっきよりも彩芽の声が鮮明に聞こえる。いや、そんなことよりも、階段だし目を閉じて立ち止まってる場合じゃないだろう。
「危ないんで目開けますね――――って何を……?」
「はひっ……」
なぜか数段上に居た彩芽が二段ほど上の位置に下りていた。差し伸ばされる手が俺の頭に触れる手前で止まっている。
「何をしているんですか?」
「な、な……」
わなわなと震える彩芽の顔がまた赤く染まった。
「どうしたんですか?」
「な、なんでもないっ!」
振り返って階段を勢いよく駆け上がっていく彩芽。
「あっ、彩芽さん――」
「気安く呼ぶなバーカ!」
「さっきと言ってることが違うんですが……」
「ふんっ!」
タンタンタン……と急いで駆け上がる彩芽のスカートの中に自然と目が行く。さっきはスカートを押さえていたのに、やはり天然か……。
ふむ、紳士らしい気構えが戻ってきた気がする。
アパートの玄関前で鍵を開けようとする彩芽に声をかける。
「彩芽さん」
キッと睨んでくる彩芽に買い物袋を差し出す。
「荷物を」
「あ……そか……」
きょとんと袋を見つめながら呟く彩芽。
「もしかして忘れて……」
「は、はぁ⁉ 忘れてないし! ここまで運んでもらおうと思ってただけだし! さっさと渡しなさいよバカ!」
掴み取ろうとした彩芽の手が触れる。
「「っ……!」」
またさっきの感覚が……。忘れようとしていた胸の高鳴りが舞い戻ってくる……。
気持ちが揺れ動く前に早く帰ろう……。
「そ、それではこれで……」
「そ、そうね……!」
玄関を開ける彩芽がすっと中に消えていく。
俺も帰ろう。
扉が閉まりかける手前で後ろを振り向く。
「……銀治っ」
不意に呼ばれて振り返ると玄関の隙間から彩芽が顔を覗かせていた。
「はい」
「きょ、今日は……ありがと……」
もう耐えられない――
「グハァッ……!」
彼女が居ない歴イコール年齢の俺にとって、このツンデレの破壊力は耐えがたい……耐えがたい……。
「だからなんでそうなるのよ!」
「……彩芽⁉ ちょとどこ行ってたのさ! 心配したんだよー!」
扉の向こうから彩香の声が聞こえる。
「彩芽、顔赤いけどどうしたの?」
「なんでもないっ! バカ!」
バタンと閉じる扉。
俺は数分間動けないまま、アパートの廊下で四つん這いになっていた。
作者「銀治さん、銀治さん!」(*´ω`)
銀治「テンション高いですね……」
作者「次、銀治さんの幼馴染が出演です!」(*´ω`)
銀治「あいつが出るなら俺はやめます」
作者「そんなこと言わないで( ;∀;)」




