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銀治「居たぁああああああああああああああああ!」

前回のあらすじ:銀治は自ら地下図書館へ赴いた!

 ――銀治、見失いかけていた目的を思い出し立ち上がる! だがしかし! 世界は残酷である!


「バカなぁ……」


 三限目が終わった瞬間、俺は机に両肘を着いて頭を抱えて絶望した。


「くぅ……」


 なぜ俺は連絡先を交換しておかなかったんだ……!

 高校と同じ気分で「どうせ一日一回は同級生と顔合わせするんだろ」と油断していたのが間違い立った。


 思っていたよりも大学は広いし同級生と被る授業も少ない……。受ける講義が一緒の奴も居るが挨拶を交わしたことは未だに無い。いや、そもそも同級生なのかも怪しい気がする。


「えー、芥川君」


 教卓から丸眼鏡をかけたおばさんに呼ばれた。


「はい」


 いやいや返事を返して立ち上がり、おばさんの元に向かう。


「どうしましたか?」

「いや、そのですね……」


 呼ばれるようなことはした覚えがない。授業中、貰ったプリントの裏側に落書きをした覚えはあるが、特に怒られるようなものではないはずだ。


「あのー、絵が上手いのは分かったんだけど、提出するプリントに美少女描くのはやめてね……」


 先生が言いづらそうに忠告する。目線を下げると教卓に置かれたプリントには俺が描いた銀髪美少女がいた。


「すみません、つい」

「ついって……授業中ずっと真剣に書いてるから真面目な子だなって思ってたんですけどね……」


 先生も絵を見つめながら悲しそうな表情をしていた。むしろ、せっかく書いた絵が回収されたことが俺にとっては一番悲しかった。


「……」


 先生と俺は無言で絵を見つめる。

 彩芽の特徴を記憶にある限り思い出し描いた絵。せっかく描いたのに回収されるなんて……別の紙に描けば良かった……。


「ま、まぁ、反省しているみたいなので、次からは気を付けてくださいね」

「え? いや、俺は悲しかっただけで――」

「はい、ではお疲れさまでしたー」

「あ、先せ――」


 プリントをひとまとめにした先生は颯爽と立ち去って行った。

 あぁ……銀髪美少女が……彩芽の絵が……。


「はぁ……帰ろう……」


 悲しみに暮れながら荷物をまとめて鞄のベルトを肩にかける。帰宅開始だ。


 本館の三階、白パンの名残を惜しみながら階段を踏みしめる。初日に舞い降りた天使は何処に行ってしまったのだろうか。


「俺の天使と女神は一体……」

「え、キモッ……」

「しっ……変な人だったらどうするの……」


 下から上がってきた二人組の女学生がすれ違いざまに暴言を吐いたがスルー。


 一階まで下り、本館の目の前の扉を開けると、未だに中央の広場ではサークル勧誘が盛んに行われていた。


「バレー部入りませんかー!」

「男子バスケ興味ありませんかー!」

「野球しませんかー!」

「皆で打ち上げしませんかー!」


 バレー、バスケ、野球と青春真っ盛りと言った季語のようなものが聞こえてくる。打ち上げに関しては意味が分からん。あれか、よくテレビで見かけるやらかす連中の集まりか。関わらないようにさっさと帰ろう。


「……」


 目の前に見える群衆を避けるように左に曲がって歩く。


 そういえば、朝大学に来た時に宗教おばさんが北入口に居たんだっけ……。いや、さすがに五時間も経った今は居ないだろう。もし居たら逆に日ごろ何をしているのか聞いてみたい。宗教勧誘するよりもパートで働いた方が堅実だろうに。お、そろそろ自由というなの校門が見えてくるぞ。


 正面に見える食堂を先程と同じように左に曲がり、北出入口までの最短距離を行く。


「ん?」


 俺の最短距離コースの少し先には金髪と茶髪の男が立ち止まっていた。


「ねーねー、一緒にどっか行こうよー」

「カラオケとかさ、どう?」

「いや、そういうのはちょっと……」


 これが俗に言うナンパという奴か。女の子たちも迷惑だろう。こちらからは男二人の背中で向こう側にいるであろう女の子の姿は窺えない。すまない、俺は銀髪美少女にしか興味がないんだ。君たちを助ける労力は使いたくない。男二人の背中に向かって歩いて、その手前で曲がれば最短帰路だな。


「えー、いいじゃんいいじゃん。隣の綺麗な子も一緒に行こうよー」

「俺ら、君たちみたいな子と遊びたいんだよー」

「……」


 チャラい奴の声は何故こんなにも耳に残るのだろう。卒業研究にしても良いくらいかもしれない。

「チャラ男、声の通り」というタイトルで何か出来そうだな。

「妹が嫌がってるんでごめんねー」

「っ!」


 妹と言うフレーズに白パンが脳裏を駆け巡る。それにあの声、優しくも天然っぽいこの声音はどこかで聞き覚えが……。


 男一人の真後ろから顔だけをひょっこり覗かせて確認。


「おーおひさだねー」


 女神と言う名の彩香が微笑みながらこちらを見つめていた。


「居たぁあああああああああああああああ!」

銀治「ふむ……」

作者「銀治さん、何してるんですか?」(*´ω`)

銀治「……」

作者「銀治さん(*´ω`)?」

銀治「今ちょっと集中してるんで……」

作者「( ;∀;)」

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