銀治「大学生活が始まって一週間、なぜ俺は図書館の地下に居るのか……」
前回のあらすじ:基本的に授業には真面目な彩芽!
――昼休憩が始まり、銀治は誰も居ない講義室を探して歩き続けていた。
くそっ、朝から宗教勧誘されるとはツイてない。何が「貴方にとっての神はここにあります」だ。俺にとっての神は「銀髪美少女」だけだ。
あれから会えてないしやっぱり夢か幻だったのか……。いや、でも確かに白パンの記憶とムチムチな太ももの感触は覚えている!
「……」
ここもダメか……。
どこの教室もボッチが点在して教室内で昼食を食べている。食堂はヤンキーやらリア充で埋め尽くされ、俺は一体どこで飯を食べればいいんだ。
「……はぁ」
今日も図書館で時間を潰そう……。
本館から中央広場を通り抜けてまっすぐ図書館へと向かう。右も左もリア充や友達と楽しそうに会話をしている。銀髪美少女は見当たらない。銀髪美女も見当たらない。
大学広すぎるだろ……高校なんかと比べものにならないくらい広いじゃないか。高校三年間で鍛えたボッチ生活が惨めに思えてしまう……。
こんな広い都会のサバンナみたいな所でどうやったら友達が出来るんだ。何をすれば友達になれるのかサッパリ分からない。
図書館に入り、目の前の受付をスルーして奥の方へと進んで行く。図書館の壁側には数人がミーティングに使える小部屋が並び、中では学生と先生らしき人物が話し込んでいた。俺も銀髪美少女たちとああやって話すことが出来れば良いな。
図書館の奥にある地下へと続く階段を下りていく。図書館の一階ではまだ仲良しグループが居るが、ここまで来ればボッチの世界。階段を下りた目の前の壁面には、ボッチの為に作られたようなカウンターテーブルの前に椅子が並べられ、一つ二つ抜かしで俺と同じボッチが勉強やスマホに夢中になっていた。
右手に曲がれば古い資料や文献が並べられた書庫が広がっている。
……お、ここだな。
両隣の人との距離が一つ分空いている席の真ん中の椅子に腰掛け、ようやく一息つけた。
「……」
大学生になってからというもの、ちゃんと昼飯を食べてないな……。中学高校には「自分の席」が辛うじて存在していたから食べられたものの、まさか自分が食べる場所を探すために大学の中を彷徨う羽目になるとは思ってもみなかった。なんてボッチに冷たい世界なんだ。
「……」
ポケットに入れていたスマホを取り出して時間を確認……。あと四十分は時間を潰さなければならない。
左右の学生の作業をチラリと確認してみる。
左に座る女生徒は必死に小説のページを捲り、右に座る眼鏡をかけた細身の男は「フンスフンス……」と鼻息を立てている。鼻息が果てしなく鬱陶しい。
無音に近いこの空間ではイヤホンなしに過ごすのは愚行、雑音が耳に入ってきて非常に気になるので耳を保護せねばならない。
鞄の中からイヤホンを取り出しスマホに繋げて曲を流す。数年前に流行ったアニソンの曲が耳を癒していく。
――ホレホレ! ドレドレ⁉ 世界はダァアアアアアアクッ♪
やっぱアニソンは良いな。心が洗われていくようだ……。
――フーン! ダーッ! フーン! ダーッ……♪
そういや、このアニメのヒロインも銀髪だったな。彩芽を大きくすれば似ているような気がする。リアルにゃる子さんじゃないか。
午前の日もあるから週三回はここで過ごすしかないのか……。
「……」
いや、冷静に考えろ……大学に入って一週間目にはボッチ生活確定の図書館の地下行きって、何の為に俺は生きているんだ……。せっかく出会えた銀髪美少女と銀髪美女に会えず仕舞いでこのままで良いのか?
腕組みして考えた後、俺は目を見開いて目の前の壁を見つめた。
「……否っ!」
思わず声に出してしまったせいで、視界の両端にこちらを見つめる視線を感じる。
だが、そんなことよりも、図書館の地下で引きこもりなんてやってられない。残りの大学生活全ての昼休みをここで過ごすなんて軽い刑務所と一緒じゃないか。
まだ銀髪美少女を一度も守れていない。探しに行くしかない!




