21 エピローグ 創作部は今週も絶賛活動中です
6月18日(月)
一学期期末テストまで、あと2週間。
どの科目の学習も、テスト範囲修了へ向けて収束しつつある。
神田先生は登校を再開。校長には、高熱が出て、一人暮らしのアパートから動けなくなっていた、と説明したそうだ。
テストが近いので、創作部の活動もあと一週間ほどで停止となる。それまでの数日を有効に使うべく、部員は今日も頑張っていた。
「えっと、テスト前なんだが、新入部員がいるんで、紹介しておきます」
バラバラと座る部員の前、教壇に立って話し始めたところ、食い入るような、痛いような視線が飛んできた――炎上、ならぬ円城咲耶から。
俺の隣で、色白のほっそりした女生徒がペコリ、と頭を下げる。
「結城琴美です。美術部と兼部ですが、こちらの活動を通じて、より表現の幅を広げたいと思いました。よろしくお願いします」
「――はぁ?」
円城のツッコミ方に、遠慮がない。結城は、あくまで落ち着いた歩みでスタスタと進み――円城の隣にすとん、と座った。
「琴美、あんた、美術部で油くさい絵の具塗ってたんでしょ。なんで創作部くんの?」
「美術を志すものとして、魅力的な人に触れるのは勉強のうちです。咲耶、エロイラストのデッサン直してあげよっか?」
橘が、うわー、しゃれになってねぇーと、和ませたいのか、荒立てたいのかわからないコメントをしている。
「あの二人、小学校からの腐れ縁なんですよ。ずーっとあのノリでやりあいますよ」
――まったく初耳なんだが。
快速なペンと鉛筆の音にまじり、ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ――
「……あっちダメでこっちとか、サカったネコかしら」
「執着はもうやめるの。あっちはちょっとカタすぎかなって。売約済みだし……」
「ほんと惚れやすいよね。すぐハマって。またボロ泣きするつもり?」
「ボロ泣きはあなたかもよ?私、欲しいものはもう遠慮しないから」
「……あたしのだけはやめなさいよ、恩知らず。取ったら、マジ許さねぇし……」
「こわいこわい。あたしのとか言って、どうせまだ何もしてないでしょ。お・姫・様」
「勝手にそう思ってなさいよ。私だってセンセイと……」
……
…
「とりあえず!」
顧問として、はっきり言わねば。
「……お願いだから、仲良くやってくれ。お願いだから」
円城と結城が、くふ―――っと、柔らかくて毒のある笑みを浮かべた。
舞姫編、あと一回更新します。
次回、もう一つのエンディング「補講」です。
正真正銘「舞姫編」の最終回となります。