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【書籍化】辰巳センセイの文学教室【ネトコン受賞】  作者: 瀬川雅峰
終章 こころの時間_2020年3月編
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27 エピローグ それぞれの門出に

3月14日(土) 卒業式


 仰げば尊し、の歌声が、今年は一際心に響く。

 生徒それぞれに、思いのこもった歌声、と感じてしまうゆえか。


 結城、尾上、円城……一人一人が卒業証書を受け取っていく。

 式の締めくくり、答辞を読み上げたのは、首席……円城咲耶だった。


「……多くの出会いがありました。人と出会って、支え合うことで、勇気をもって前に進めると学びました。本当に……大切なことを沢山学んだ三年間でした」


 胸を張って、堂々と答辞を読み上げる。

 今日は入学式と違って、白紙じゃない原稿だ。


……でも、今日なら、きっと原稿なしでも、できただろうね。


 生徒として送り出す、という気持ちでは見られなくなってしまった。

 俺にとっても、二度とない特別な卒業式だ。


 周りには秘密だが、今夜、咲耶の家で夕食に呼ばれている。

 咲耶に聞いた話では、鉄治氏が「さっさとつれてきなさい」と聞かないらしい……咲耶は不安がっているが、少し楽しみに感じている自分がいる。



「シャーロット先生、ずいぶん、感動されてます?」


 目の前の席にいる山脇先生が、隣のシャーロットがぽろぽろと涙を流しているのを気にして、小声で訊いた。

 普段、野球部の指導もあって、運動しやすい格好をしていることが多い山脇先生も、今日は担任としてびしっと礼服だ……恰幅よく見えて、どことなく熊っぽい。


「……私、自分の高校は、飛び級で卒業式に出られなかったから……咲耶が、なんだか、自分と重なって……」


 ……ああ、と納得顔をした山脇先生が、ふと思い出した様子で、ポケットに手を入れた。


「卒業生の付けてる造花の余りです――先生にも、ひとつ」


 シャーロットは、そっと受け取って、大切そうに両手で握りしめた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「こころ」は教科書の部分では足りないと思ってました。生徒が全部読んでいて、よくわからない目線で「それでいいぞ!」と思ってました。 授業よりも、この「辰巳センセイの文学教室」を読ませた方がいい…
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