17 パーティーへようこそ
12月24日(火) 終業式後 午後2時30分
そろそろ、いかないと。
職員室で仕事を切り上げ、大会議室へ。
今年のクリスマスパーティーは、ひと味違う、と橘麻衣に言われていた。
そもそも、昨年ウェンディ先生の突然の離任をきっかけに、創作部が開いたミニパーティーだったわけだが、誰からともなく、今年もやろう、という流れになっていた。
で、やるからには……といつもの創作部のノリで話は盛り上がり、ケーキ食べよう、お茶飲もう、どうせなら他の文化部も誘ってみよう、ステージパフォーマンスやって盛り上がろう、先生特別教室じゃ狭いんで大会議室貸してください……と話が大きくなっていった。
「……相変わらず、創作部は元気ですねぇ」
他部の顧問の先生方から、感心半分、あきれ半分の反応をもらう……前向きなことはいいことなのだが。
会場に着くと、既にパーティーはたけなわだった。部屋が薄暗くなっていて、はっきり見えないが、相当な人数が集まっている。
受付に円城がいる。去年も引退した3年生が受付をしてくれたっけ。
「センセイ、来てくださってありがとうございます……あの」
円城の顔が、微妙にうかない。
「どうした。なんかあったか」
「……いえ」
何か言いたそうにも見えるのだが……ドリンクをもらって、部屋の中へ進む。
「先生、ひさしぶりです」
「もうすぐ、本当に卒業ですね」
2年生までの部員に加え、今日だけ参加しにきている3年生の結城や尾上とも挨拶を交わす。みんな手にプレゼント交換用の品を提げ、ほころんだ表情だ。
簡易ステージでは橘麻衣が一つ目の余興、高速ドローイングを披露していた。
こちらに気付いて、メリークリスマス!と挨拶してくる生徒たちに挨拶を返しながら、ステージから見て正面、壁際に落ち着く。
「次のステージは、軽音楽部のアコースティック演奏です」
ドローイングを終えたばかりの麻衣が、司会に戻ってアナウンス。まだ息が少し上がっている。
……普段あまり関わりはないが、軽音楽部と聞くと2年前を思い出す。横山が体育祭でギターを弾いて、円城とのトラブルを水に流してくれて。彼らから数えて、3学年も下……現2年生が演奏している。
軽音楽部の演奏についでは、落語研究会の高座……人情噺の「芝浜」。
酒で仕事に身が入らない魚屋の旦那が大金を拾って有頂天になる。が、妻は大金を夢だと思い込ませて仕事に打ち込ませる。三年後、すっかり立ち直った旦那に、妻はすまなかった、と涙ながらに事情を告白。思い切り飲んでください、と酒を用意する……。
――やめとこうか。また夢になっちゃいけねぇ。
温かい笑い。
クリスマス用の出し物として、なかなかの見応えだ。
酒を飲んで夢にできるなら……ほんの少し、皮肉な思いがかすめた。
「それでは、余興は一休み。しばらくご歓談をお楽しみください……と、その前に、特別ゲストからご挨拶があります」
創作部部長、麻衣が言った。
壇上の姿に、目を疑う。
「突然お邪魔させていただきました。鷹取美幸と申します」




