13 虎穴に入らずんば
同日 11月22日(金) 午後9時30分
「私、美幸さんに連絡することにした」
部屋に呼んだロッテに、開口一番、結論を言った。
ロッテは、まっすぐに、私の目を見る。
「……うん、咲耶はやっぱりそう言うかなとは、思ってた」
私も小さく頷く。
「このまま、無視することもできるのかもしれない。でも、きっとそうしたら私はセンセイに会う度に、聞こうかどうか、聞いてもいいのかどうか……悩んじゃうと思う」
「……うん」
「ロッテのおかげで……いろいろ予習できちゃったし……」
お父さんから受け取った報告書は、何度も読み返した。
センセイの周りにいて、特に深く関わっていた人達……小学校から近所にいた鷹取美幸さん、恋人だった神谷恵里さん、高校時代からセンセイと仲が良くて、大学時代に美幸さんと付き合っていた先輩、佐竹和也さん……私の知らないセンセイの青春……生きてきた時間。
「……勝手におじさんに言ったのは……ごめん」
「……ううん。それはいいの。ロッテも、お父さんも、心配してくれたの、わかってるから……だから、ありがとう」
こういうときのロッテは姉みたいだ。
……暴走してるときのロッテはとんでもないけど。
「だからね、ロッテ」
「うん」
「ここからは、私一人で行かせて」
「……」
「あの文面……美幸さんは、それを求めているような気がする。私が一人であの人の前に立てるかどうか、試されてる気がするから」
◇
鷹取美幸様
お返事遅くなって申し訳ありません。
お話の続き、伺いたいと思います。
円城咲耶
メールの返事は、すぐに来た。
……待ちかねた、と言われているようだ。
ずいぶん時間がかかりましたね。
悩ませてしまったようですが、大丈夫ですか?
直接、お会いして、お話しましょう。
――でも今は、期末テストも近くて、お忙しいころでしょう?
美幸さんは、高校のスケジュールまでしっかり把握していた。
……会って話をするのはテスト最終日、12月6日の金曜日に決まった。