英雄の残滓
その場を見渡しながら、アレンは息を一つ吐き出した。
壁にめり込んでいるアキラは結構な傷を負っていそうではあるが、命に別状はあるまい。
アキラならば自分で何とかするだろう。
というか、下手に手を貸そうとすると怒りそうである。
悪魔の女は、特に傷らしい傷も負っていないようなので放っておいて問題なさそうだ。
後ろにいるアンリエットやミレーヌは何か言いたそうではあるものの、アレンとしては実質互いに合意済みの行動であったため思うところはない。
何故か驚いたような顔をしてこちらを見ているが、気にする必要はないだろう。
リーズとノエルは……いるだろうと確信してはいたが、やはり実際に姿を見ると安堵の息が漏れる。
怪我等をしている様子もなく、元気そうなので一安心といったところだ。
そして。
「初めまして、といったところでしょうか、教皇猊下?」
「……確かに、初めまして、ですね。しかし、貴方は……」
立ち姿から溢れ出る雰囲気などからそうだろうと思っていたものの、一見二十代前半の青年にしか見えないこの人物が教皇でやはり間違ってはいなかったようだ。
経歴等を考えると明らかに若すぎるが、ギフトか何かの効果だろう。
この世界では見たことはなかったが、前世では幾度か見た事があるので珍しいことでもない。
その教皇は何か不思議なものでも見るような目でアレンのことを見ているが、無視してさらにその場を見渡す。
奥に行くと言っていた悪魔がここにいることや、位置的に考えてもここは大聖堂の最奥とみて間違いあるまい。
先ほどまでいた礼拝堂と比べれば一回り小さいものの、それでも十分な広さはある。
ただ、礼拝堂とは違って、ここには装飾品などはない。
その代わりとばかりに地面には何らかの文様が描かれているが、床一面に描かれているので分かりにくいものの、おそらくは魔法陣だ。
天井へと視線を向けてみれば、そこにも似たような文様が描かれ、こちらは距離の関係もあってかはっきりと魔法陣と分かるので間違いあるまい。
大聖堂の最奥にある、二つの魔法陣。
しかも悪魔の言葉から考えれば、ここに入る事が出来るのは大聖堂に入ることの出来る者の中でもさらに一握り……あるいはほぼいない可能性もある。
どうにもあまりよろしくない儀式などに使われる場所なのではないかと思ってしまうのは、さて偏見だろうか。
しかしここがどんな場所であろうとも、今の自分達に影響がないのであれば問題はない。
教皇に視線を戻し、まだこちらのことを探るような目で見てきている姿を眺めた後、リーズ達へと横目を向けた。
「それで……アレが色んなことの元凶ってこといいのかな?」
「……そうですが……ここでの話を聞いていた、というわけではないんですよね?」
「まあ、さっきまでやることがあったからね。ドタバタと忙しかったし、さすがにここの話は聞こえてなかったかな」
「……ドタバタと忙しかったのはオメエじゃなかった気がするんですが?」
「……むしろ相手?」
後ろから聞こえたツッコミに、何のことやらと肩をすくめる。
確かに相手も忙しそうではあったが、こちらもこちらで次々とやってくる相手を顔を見られないうちに倒さなければならなかったので忙しかったのだ。
ドタバタという表現は正しくなかったかもしれないが、忙しかったことに変わりはないので大差はあるまい。
「で、じゃあ何で忙しかったってのに、アレが元凶だって分かったのよ?」
「え? んー、まあ、状況を見て何となく?」
悪魔から多少の話は聞いていたものの、おそらく悪魔が話してきたのはこちらが必要とする必要最低限のものだけだったはずだ。
協力するのは一時的なもので、その後敵対する可能性が高いというのに不要な情報を渡す馬鹿はいまい。
だがその情報と合わせて今の状況を考えれば、教皇が色々なことの元凶だったのだろうと考えるのは難しいことでもないだろう。
どうにも悪魔が目的としていたものとやらは教皇自身のことだったようであるし、アキラはどう見ても教皇と戦っていた。
リーズが教皇を見る目は厳しく、ノエルに至っては目で射殺さんばかりの様子となれば、まあ大体のところは分かるというものだ。
「普通は分からないと思いますが……」
「なんかもう、あんたは本当に相変わらずね……」
「……それだけのことで現状を把握した、ということも驚きなのですけれど、わたくしとしては貴方がここにいることそのものが驚きですわ。貴方のところに向かったはずの鎮圧部隊の方々はどうされたのかしら? 彼らはわたくし達悪魔がここを襲ったところで返り討ちに出来る程度の実力はあったはずですけれど……まさか貴方方だけで倒した、ということですの?」
「まあ、そういうことになるかな?」
「いや、ワタシ達は何もしてねえですか?」
「……アレン一人で瞬殺してた」
その言葉は正しくはあるが、そもそもそこまで強くはなかったような気がするのだ。
動きは悪くなかったと思うし、精鋭と呼んでもいい程度の実力はあったのかもしれないが、悪魔の集団に対抗出来るほどだったとは思えない。
それとも、あるいは集団で力を発揮するような者達だったのだろうか。
それならば有り得ないとは言わないものの、それならそれで力を発揮出来る程度の集団を予め作ってから来るべきだったはずだ。
その程度のことも出来なかった時点で、どちらにせよ未熟だったことに違いはない。
「……そうですの。どうやら、わたくしの目はやはり間違っていなかった……いえ、あるいは節穴だったのでしょうか? けれど……うふふ、どちらにしても楽しみが増えたことに違いはありませんわね……?」
瞬間、こちらを見ていた悪魔の目が、何やら怪しいものに変わった。
その目で見られると悪寒がするというか、何というか……どうやら不要な情報を与えてしまったらしい。
だが直後、現在の状況を思い出させてくれるような呟きがその場に響いた。
「彼らを、倒した、ですか……? 貴方が……?」
その言葉と共に、こちらを探っていたような目が細められる。
何かを認識したと、そんなことを言わんばかりの目であった。
「……そういえば、幾つかリーズ様達がいるというだけでは説明が付かないことがありましたね。アドアステラ王国でのこともそうですけれど……あれは愚者達が勝手なことをしたせいかと思っていたのですけれど、もしや貴方が何かをしたのですか?」
愚者達、という言葉が誰を指しているのかは、何となく分かった。
そして事実、彼らは確かに愚かではあったのだろう。
そのことは否定しようのない事実である。
しかし、幾ら事実だとしても、その言い方は些か不愉快でもあった。
「……そうだとしたら?」
「そうだとしたら……そうですね、ようやく納得が出来ます」
「納得……?」
何を言い出すんだと思ったら、教皇は本当に晴れやかな顔を見せた。
不可解に思っていたことが解決したとでも言いたげな顔だ。
「はい。私は不思議に思っていたのです。私達の邪魔をリーズ様達がするはずがない、と。何故ならば、彼女達もまた神々より選ばれし者達です。私達に手を貸すことこそあれども、邪魔をすることなど有り得ません。私達の邪魔をしていたのが貴方だというのであれば、とても納得が出来るのです。いえ、それどころか、勇者に悪影響を与えたのも貴方なのではないでしょうか? そうであるというのでしたら、これは何という天啓でしょう……! 貴方を滅すことで、きっと勇者も正気に戻るに違いありません。そうなれば、ええ、今日は何と良き日となることでしょうか……!」
突然意味不明なことを叫び始めた教皇から視線を外し、リーズ達へあれはどういうことかと問い質すような視線を向けてみたが、彼女達もまた困惑しているようであった。
まあ、当然のことではあろうが。
その様子を見ていた悪魔が、呆れたように溜息を吐き出す。
「……本当にアレは、どうしようもありませんわね。自分を神の代行だと嘯き、全てを自分の都合のいいように解釈する。虫唾が走りますわ」
「どう思われようとも真実ですから仕方がありません。そうでしょう?」
「真実、ですか……まあ確かに、ある観点から見れば、アレンは神から選ばれたやつじゃねえですね。何せアレンは、ギフトを与えられてねえんですから」
「……アンリエット?」
突然何を言い出すのかと思ったが、よく見ればその目には呆れと、何よりも怒りと侮蔑が浮かんでいる。
どうやら、神の元使徒であったアンリエットには、教皇の言葉はとても受け入れられるものではなかったらしい。
何か考えがありそうなので、好きに言わせておいた方がよさそうだ。
「なんと……神々に見捨てられた方であったとは。それは私達の邪魔をするのも納得というものです。そしてやはりこれは天啓なのですね。我々の、神々の邪魔をする者を滅し、神々に選ばれし者達の目を覚まさせよ、という」
「――まあ、あくまでもギフトが神に選ばれた証拠だっていう観点から見れば、の話ですがね。事実としては逆で、むしろアレンの方が神に選ばれてんですが」
「……はい? 貴女は、何をおっしゃっているのですか? ギフトは、神々が我々に与えてくださった力です。神々が、我々を祝福してくださったという証で――」
「ですから、それが間違えてんだって言ってんじゃねえですか。そもそも、各個人を祝福したり、選んだりするほど神は暇じゃねえですよ。ギフトってのは恩恵ではあるですが、その意味するところはただの補助具です。それがねえと生きてくのに大変だからってことで与えられてるに過ぎねえんですよ」
「は、はは……本当に、何をおっしゃっているのですか? そんなはずが……」
「ですから、ギフトを与えられてないってことは、神から補助なんて必要ねえって判断されたってことです。ギフトが与えられてねえことこそが、この世界を生きるに相応しいと、神に選ばれたってことの証拠なんですよ」
実際には、アレンにはその神から与えられた三つの理の力がある。
なのでどう考えてもその定義には当てはまっていないのだが……おそらくは、わざとに違いない。
その話もきっと色々なものを拡大解釈して言っているもので、事実そのものではないのだろう。
だが堂々と、まるでそれが唯一絶対の事実だと言わんばかりの態度でアンリエットが喋っているからだろうか。
教皇はそんなことはないと口にしていながらも、その顔色は悪く、今まで知らなかった事実を突きつけられて困惑しているように見える。
まあ、アレンから言わせてもらえば、仮にアンリエットが言っていることが事実だったのだとしとしても、それがどうかしたのか、といったところなのだが。
前世で神に選ばれてしまったからこそ断言出来る。
あんなものはろくでもないものだ。
気にする必要もないことで、どうでもいいことでしかない。
神に選ばれようが選ばれまいが、自分の意思を持って自分の好きなようにやればいいのである。
でなければ……きっと最後には、後悔することにしかならないから。
「ふ、はは……なるほど、そうやって私を惑わすつもりでしょうか? しかし、私には通用しません。私には強い信念が、確信がありますから。けれど、まだそこまで到達していない方々の中には貴女の話を真に受けてしまう方もいるかもしれません。そんな邪悪に魅入られてしまうことのないよう……貴女もまた、処分する必要がありそうですね」
「自分に都合が悪くなったら処分、ですか。神ってのは随分とオメエに都合よく出来てんですね?」
「だからわたくしも言ったではありませんの。アレは全てを自分の都合のいいように解釈する、と。まったく、わたくし達悪魔を少しは見習って欲しいものですわね。わたくし達は確かに世界を怨み、喧嘩を売っている身ではありますけれど……何かのせいにしたりはしませんもの。わたくし達は常に自らの意思で以て、世界に逆らっているのですわ」
「これ以上戯言を聞くつもりはありません。いえ、最初からそうすべきだったのでしょう。やはり邪悪な存在とは、即座に処分すべきです」
そう言った教皇の目には、はっきりとした殺意があった。
どうやら本気でぶち切れたらしい。
本来は老人だろうに、随分と沸点が低いものである。
いや、あるいは、老人だから、なのだろうか。
しかしこれ以上の問答をするつもりがないというのは、望むところですらあった。
最初から何を言われたところで、アレンの中では答えは決まっているのだ。
元凶だというのならば、この場で潰して、リーズ達を連れ帰る。
それだけだ。
「さて、それじゃあ都合よく向こうもやる気になってくれたみたいだし……とっとと終わらせようか」
呟き、地を蹴った。
剣を振り下ろした瞬間、甲高い音が響き、不自然な体勢で腕が止まった。
教皇に届くまであと少しというところで、見えない何かに遮られているように先に進めないのだ。
「ふふ……貴方がどれだけ強力な力を得ていようとも、私には神々のご加護があります。貴方では、私の身体に傷一つ――」
――剣の権能:斬魔の太刀。
言っている間に、しっかり腕へと力を込め、再度振り下ろす。
今度は僅かな抵抗があったが簡単に抜け、教皇の身体に斜めの斬撃痕が残る。
直後、血が吹き出した。
「……はい? これは……どういうことです? 私には、神々のご加護が――」
「神の加護とか言われても……それって要するに、ただの空間歪曲でしょ? 同じようなことを悪魔にも出来た人がいたんだけど……それってつまり、悪魔にも神の加護があるってことかな?」
「っ……戯言を……!」
叫びと共に教皇の周囲に何かが発生したが、おそらくは衝撃波のようなものだろう。
しかしそれを受ける前に、アレンはあっさりとその場から飛び退く。
痛みにか、あるいは怒りにか顔を歪める教皇の姿を眺めながら、一つ息を吐き出した。
「確かに言うだけあって強力な力を持ってはいるようだけど……何となくチグハグな感じがするかな? 使いこなせてないっていうか」
「……それも当然ですわ。教皇のギフトは、他人のギフトを奪いますの。何か条件があるようですけれど、ですから能力だけは強力なのですわ。しかし、結局は他人の力ですから十全に扱いきれるわけがありませんし、そのせいで色々と勘違いしてしまったようですの」
「ああ、簒奪系の能力を手にしたやつによくあることですね。しっかり自分の適性に合わせて能力を組み合わせる事が出来たら色々と違う事が出来るはずなんですが……まあ、自分の力に酔っちまったやつには出来ることじゃねえですね」
「っ……言わせておけば好き放題。いいでしょう、周囲のことを考えればあまり本気は出したくはなかったのですけれど……壊れたらまた作り直せばいいだけのことです。貴方方を滅した後で、ゆっくり取り掛かるとしましょう」
そう言った瞬間、教皇の身体が膨れ上がった。
文字通りの意味で、であり、その巨体は元の倍以上、五メートル近い身体へと変わる。
しかも肌の色はアマゾネス達のものよりもさらに濃い漆黒に、瞳は赤く染まった。
さらに変化はそれだけに留まらず、爪と指が一体化したように鋭利と化し、頭部に二本の角が生え、翼までもが生える。
どうをどう見ても、元の姿の面影など一つも残ってはいなかった。
「うわぁ……これはまた……」
「っ……悪魔……」
「あら、呼んだかしら? と言いたいところですけれど……これはわたくしから見てもまさに悪魔と呼ぶに相応しい姿だと思いますわ」
「悪魔に角があるってのは分かりやすくするための嘘だったはずですが……もしかしたらその姿から着想でも得やがったんですかね?」
「悪魔と手を組んでた教会の主は実は悪魔だった、ってか? 有り触れすぎてて陳腐すぎるぜ?」
「けれど、その醜悪な姿は、あなたの醜悪な心にピッタリなんじゃないかしら?」
口々に好き勝手言っていると、教皇がギロリと睨んできた。
その目も既に人のものではなく、爬虫類のものに近い。
「ええ……この姿は醜すぎるが故に、出来れば見せたいものではありませんでした。けれど、神々の怨敵を倒すためであれば、手段など選んではいられないでしょう」
「アレン君……いつの間に神々の怨敵になってしまわれたんですか?」
「僕も初耳かな。まあ多分さっきなんだろうけど」
軽口を叩かれたので軽口を返したが、そんなリーズの目には怯えがあった。
間違いなくただの強がりであり、こんなものを目にしていることを考えれば、当然の反応だろう。
大きさとしては巨体で済む程度であり、これよりも大きな魔物というのはいくらでもいるが、内包している能力のせいか威圧感が凄まじいのだ。
威圧感だけであればいつか戦った龍よりも上で、常人であれば気絶してしまってもおかしくはない。
リーズはよく耐えている方であり……だがその目にあるのは、怯えだけではなかった。
アレンに向けられている視線には、はっきりと分かるほどの信頼が込められている。
この威圧感に耐えられるのはアレンがいて、アレンが何とかしてくれると信じているからだと、口にされるまでもなくその目が雄弁に告げていた。
そしてそんな目で見られてしまったら、応えなくては男が廃るというものである。
それに教皇の威圧感は本物だ。
相変わらず力を使いこなせている様子はないが、だからこそ制御されていない力が荒れ狂うことになるのは目に見えている。
強がりなどでは決してなく、大聖堂程度ならば簡単に瓦礫と変える事が出来てしまうに違いない。
となれば。
「んー……折角本気を見せてくれたところで悪いんだけど、真面目に相手してあげられる余裕はなさそうなんだよね。だから……一瞬で決めさせてもらう」
「ふふ……この私を相手に強がりとは言えそんなことを言えるとは、さすがですね。はい、それでこそ、神々の怨敵です。ならばこそ、私も本気の本気を見せてあげましょう。さあ、消えなさい神々の怨敵。今日は、私が正しく神の使徒であったことを示す、記念すべき日です……!」
そんな言葉と共に、教皇が腕を振り上げた。
そこに込められた力は凄まじく、そのまま振り下ろされれば、冗談抜きに大聖堂は吹き飛ぶだろう。
あの様子では、瓦礫にすらなるか怪しいほどだ。
つまりは、確実にリーズ達も巻き込むわけだが、どうやら既にそんなことすらも忘れているらしい。
「まったく……ここまで来ると、最早怨念って呼ぶべきだね。多分最初の頃は本当に世の為人のためって考えてたんだろうけど……そこまで来ちゃったら、もう戻しようはない。せめて心が人の形を保っていられている間に終わらせてあげるのが、情けってものなんだろうね」
「何を言ってるのですか……! 私は人であり、神々の使徒でもあるのです……! ですから私は……私は……!」
「悪いけど、これ以上付き合ってはいられないし、見てもいられない。だから、もう一度言うよ?」
終わりだ、と口にしたのと、教皇が腕を振り下ろしたのは同時だ。
凄まじい力の奔流が、自身へと迫るのをはっきり見据え――
――剣の権能:終極・絶。
だがそれは、何一つ破壊することはなかった。
そよ風の如き柔らかな一陣の風だけを残し、全てはとうに霧散している。
後に残ったのは、結果だけ。
真っ二つに両断された教皇の身体だけが、アレンの視線の先には存在していた。
「ば、馬鹿、な……私は……私は……神々の……!」
その言葉を最後に、教皇の身体が細切れになり、跡形もなく消し飛んだ。
ゆっくりと息を吐き出しながら、剣を仕舞う。
軽やかな音がその場に響き、それが戦闘の終結の合図となった。
「……どうして、跡形もなく消し飛ばしやがったんです? 別にそこまでする必要はなかったですよね?」
「まあ、確かにそこまでの恨みとかがあったわけではないし、死体を残しといた方が色々と説明は楽だっただろうね。ただ……最後に化け物にしか見えない身体を残しとくのはどうかなって、ちょっと思っただけだよ」
「……オメエは相変わらず甘いですね」
「ですが、アレン君らしいとも思います」
「……確かに?」
「そうね……本当に、らしいわ」
そんな皆の言葉に肩をすくめながら、その場で振り返ると、アレンはそのまま皆のところへと歩いていくのであった。
次回完結です。




