異世界 ON ポルタ その7
……元は一話完結の短編だったのにどうしてこうなった。
何故続きを思いついてしまった。そして書いてしまった。
ぶっちゃけまだまだネタはあった。
連載と違ってあんまり力入れてないから多分これはあんまし面白くない。
作者は書いている一晩だけ楽しかった。
面倒くさくなったからやめる。
あまりに要望があれば連載版で書く……かも。ないと思うけどね。
――どうしてこうなった?
ポルタはそんなことを思っていた。
元は思いつきで『増殖』とかいうチートを一人の人間に与えたのが始まりだった。
そう、日に日に数が倍に増えるチートを与えてしまったのだ。
その結果世界は滅びた。再生してもまた滅びた。
一人でも残ればまた爆発的に増えてしまうからだ。
五回世界を滅ぼしてやっと増殖男は消え去った。
何より計算外だったのが増殖男達が全員魂を持っていたことだった。
さて、その増殖男の魂がどこへ行ったかというとポルタの管理する小世界である。
時が止まった神の領域では増殖男達が増えないのが唯一の救いだった。
あの魂達は全員『増殖』チートを持っていてそのままでは世界を循環する魂の輪には戻せない。
転生させた途端に増え始めるからだ。
そして何より厄介だったのが『増殖』チートをただ消すことが出来ない点にあった。
神が与えた増殖チートは男の所有物だった。タダで寄越せと言っても彼らは聞かなかった。
増殖男達本人を説得して別のチートと取り替える必要があったのである。
彼らは同一存在が多い故にアイデンティティを欲した。
何も無い神の領域から解き放ってやると言うだけで喜ぶ個体もいた。
唯一無二の力と言えば、全員が持つ増殖を手放すことはやぶさかでは無かったのである。
上手い事口で騙して何か比較的無害な別の『チート』で書き換える必要があった。
強すぎてはいけない。強い能力は不和を生む。
自滅を誘導するくらいのチートじゃなきゃ駄目だった。
それこそもう二度と使わないと思わせるくらい。
「……あ~めんどくさい。もう千人くらいにはチートやったよね。転生させては殺して転生させては殺して。いつもいつも同じ顔ばっかりでもうヤダ飽きた。大体あいつらが増え続けたからこんな面倒なことしなくちゃいけないんだ。増殖とか言うチートを打ち消すために害のないチートを植え付ける作業って言ってもさ、結局恨まれ役をやることになるんだよね」
ポルタの受難はひたすら続く。
何せ増殖男達はまだまだ数十……数百億人以上いるのだから。
「もういやだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
時の無い世界の終わらない拷問のような日々。
ポルタは一人一人説得しては転生させ作業のように殺していく。
早ければ一日でサイクルが終わるが長いと数十年生き延びることもあった。
ポルタはその環境の中で心をすり減らして次第に狂っていく。
ここにはポルタを除けば、同じ顔をした無数の男しかいない世界だ。
ポルタの害意の目が向くのは当然の流れだったと言えるだろう。
結果、男の苦しむ顔を欲するようになっていった。
転生させては男をいじめ続ける。
そうでもしなければ自我を保てなかった。
――その、遙か果てで。
ポルタは狂いながらもやり遂げた。
同時に、そんなポルタを恨んで呪って死んでいった無数の存在がいた。
彼らはそういった意味ではポルタに一矢報いていたのかもしれない。
男がポルタを憎んだように、ポルタもそれ以上に男が憎かった。
憎んで憎んでそれでも憎んで…………いなくなれば喪失感しか無かった。