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戦乙女 ヴァルキリー  作者: 饅頭
戦乙女
6/21

1-5 無情の始まり

 人は誰かが死ぬと悲しむ。

 だがそれはすべての人間が同じではない。

 あなたはもしどこか遠い国の人が病気で死んだり交通事故で亡くなったとしてもなにも感じない。

 だが自分の身の回りで友人や身内の人間が死んだときはどうだろうか?

 

 その日一つの都市が滅んだ。

 残されたのは一人の戦乙女、名を稲上りんな。

 戦う時の姿はまるで『氷の天使』と言われた。

 彼女は己の復讐のために敵を滅ぼさんと歩を進めていた。

 「こんな世界に来てから生きていける希望が由衣だったかな」

 「確か由衣と会った最初の時はいきなり戦ったかな。まあ、今となってはどうでもいいこと」

 「奴等さえ倒せれば」


 「『ヴァルキリー』の基本能力等を計算に入れておくのを忘れていた」

 「よもやあのような小娘があそこまでやるとは計算外だった」

 「早急に出撃体制を整えなくては・・・。向こうからくるか」

 「どうした。私が行くか?」

 「いやエレンにはここから北西にある都市までの距離とかを測ってほしい」

 「招致」

 「さて。彼女は私直々に殺してあげよう」

 

 要塞型都市『デモン』正面巨大ゲート前。

 「ですから許可がある者しかここはお通しできません」

 「そういわないで通してくれない」

 「よわりましたね」

 「このくらいの高さなら軽く飛べば・・・」

 「どおかされました?」

 「いやなんでもない。わかったここは引き下がるよ」

 「ご理解いただき何よりです」

 「この辺ならいけるかな」

 「神装『ヴァルキリー』」

 冷気の替えを起こし一瞬ののち神装を展開する。

 地面を軽く蹴って軽々と壁を飛び越える。

 「めんどくさいのは嫌いだからこのまま走っていくか」

 「神装『カーリー』」

 「な⁉」

 「大将が直々にお出迎えって事か」

 「私の計画に貴様の存在が最も邪魔な存在なんだよ。ここで死んでもらうよ」

 そこには神装により背丈が3m近くにまで巨大化した、この都市を収める戦乙女、有栖川輪禍が立ちはだかった。

 顔には素顔を隠すように鉄のマスクをつけていて目は髪の毛によって見えなくなっている。

 体全体を黒いローブが覆う。

 背中には半透明の六本の角のようなものがある。

 「貴様はここに来ること自体が間違いだったんだよ。自ら死を選ぶとはな。天聖『マモン』」

 両肩から地面に届くほどに長く関節が二つ付いた撲殺型の武器が展開される。

 その両肩より展開された武器はまるで人の手や腕のように動き言うならば手が四本になったという事だろう。

 「天聖『ジブリール』天聖『ミーカール』」

 白い剣と黒い剣を展開させる。

 「負けるつもりはない。最初から全力で行く」

 「貴様があれからどれほど強くなったか見物だな」

 「冷気開放」

 瞬間的に周囲の気温が下がり始める。

 キーンという音とともに周囲の家の窓などが凍り始める。

 「あの最初の襲撃者みたいなことをするな」 

 「氷河期」

 一瞬にしてあたりが氷の世界へと変貌する。

 家々や周囲を歩く人たちまでもが氷る。

 「お前までは氷らないか」

 「貴様程度の攻撃じゃ無意味だ」

 「氷花」

 軽く二本の剣を振り下ろすと氷の斬撃が輪禍を襲う。

 巨大な氷の柱となって輪禍は完全に氷漬けにされる。

 しかし瞬時に氷を内部から破壊してしまう。

 「そんな氷じゃ『ヘル』は抑えられても私は無理だ」

 「もっと強固な氷じゃないと」

 「今度はこちらの番だ」

 軽く地を蹴って一瞬にしてりんなとの距離をつめる。

 そして半透明に透き通る二つの腕のような天聖で殴り、まず二つの剣を払い飛ばす。

 そのまま腹部に強力な打撃を加えて吹き飛ばし家数件に大穴を開けた。

 「やはりその程度か、以前より弱くなったな、貴様は二つの天聖に効率よく魔力を送れていないからふかしすぎたり、逆に威力がなさすぎたりするんだ」

 「まだ足りない。こんなんじゃあ勝てない。もっと力が欲しい」

 がれきからやっとの思いでりんなが這い上がる。

 「まだ死なないか」

 「私は諦めないって言ったよね」

 「いいだろう」

 「『ジブリール』、『ミーカール』」

 遠くに飛ばされた剣が意志を持つかの如くりんなの手元まで飛んでくる。

 そして再度二本の剣を構える。

 「だああ!」

 掛け声とともに飛び上がる。

 二人の天聖がぶつかるたびに辺りに衝撃が走る。

 今度はりんなの剣が輪禍の右腕を軽く切り裂く。

 「つっ!」

 「このまま押し切る!」

 そのまま回転をかけて輪禍を切り裂きにいく。

 「図に乗るな!」

 剣が当たる前に輪禍の天聖によって軽く吹き飛ばされる。

 「がぁっ!」

 「くそ。右腕が・・・。思った以上にやられている」

 「まだだ」

 「・・・。しつこい。これ以上貴様にかまっている暇はない」

 「冷気開放」

 その時まるで空襲警報のような音が鳴り響いた。

 「何の音?」

 「残念。時間だ。これにて失礼させてもらう」

 「逃がさない」

 「氷剣の舞」

 りんなを囲むように7本の氷の剣が出現する。

 「これ以上戦いを望むならば容赦はしない」

 「だったら仕掛けられる前に倒すまで」

 7本の剣が一気に輪禍目掛けて放たれる。

 「ハイグラビティ」

 半径5メートルほどの肉眼でほとんど見えないような球体が出現し、そのエリアに氷の剣が入った瞬間。

 バゴンという高層ビルが崩れたかのような音を立て氷の剣全てが一瞬にして地面に叩きつけられる。

 「ローグラビティ」

 球体は光速でりんなに接近しそのエリアにりんなが入った瞬間、今度は上に引っ張られる感覚とともに地面から足が離れ空高くに飛ばされる。

 「とりあえずこれですぐに出発できる。あれが降ってくるまで約3分」

 「輪禍さん。いつでも出発できます」

 「わかった。すぐ向かう」

 都市には嵐のような風が吹き荒れ始める。

 都市の中心部より再び巨大な戦艦が浮き上がる。

 「時間差爆弾作動開始」

 「招致」

 都市より戦艦が離れて約30秒都市の四つのゲート付近で爆発が起こり、連鎖的に都市のいたる場所で爆発が起き始める。

 その爆発の中に先ほど飛ばされてりんなが降ってくる。

 次第に爆発は都市の中だけでなく都市付近の地面から巨大な爆発が起き、強固な壁は爆発に耐え切れなくなり無残にも崩れ始める。

 「この世界の空はいったいどこまであるんだよ。そして、これはどういう状況・・・」

 りんなが周囲を見回すとそこには地獄絵図が広がっていた。

 無数の人間の死体とかろうじて生きてるような四肢のない人間や腹に木材が刺さりながら口をパクパクさせているもの、頭だけとなった我が子供を抱きながら泣いている片足をなくした母親。

 「うっ!」

 人間の焼かれたにおいと周囲の光景に強烈な死人のにおいに何度ももどし続けた。

 

 惨劇から半日そこには大量の死体と神装をまとった戦乙女ただ一人。


第一章 完

 

・現在の戦乙女の数  112体

・死亡戦乙女の数     3体

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