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戦乙女 ヴァルキリー  作者: 饅頭
戦乙女
3/21

1-3 死人は既に存在する

 その戦乙女の名を『ヘル』本名は不明。

 元の世界でどういう人物だったかなんて知る者はいない。

 ただ一つ彼女の眼は、全てに絶望し死んだようだった。

 

 「反転しただと。まさか・・・本能的にやったというのか」

 「あれが反転!?」

 「1週間前に言っていた最初の目標」

 「あの反転は普通一回やそこらじゃ出来ない。感覚がつかみにくいから」

 今三人の目の前に立つのは反転し体中からどす黒いオーラを放つ『ヘル』がいた。

 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼‼‼‼」

 あたり一面を揺らがすほどの絶叫。

 その声に三人は同時に耳を抑える。

 「ぐっ」

 「うっ」

 「つっ」

 一瞬にしてそのオーラにより空が包まれ夜より暗く漆黒に包まれる。

 「これは、ただの反転じゃない」

 「どういうことですか?」

 「それを説明するとだね。私も最初に反転を使ったときは本能のままに破壊していったけどあんなに周りに影響はなかった」

 「え、本能のままに壊していたってことは自我がないって事でしょ。なのにどうしてその時の事を覚えているかのように話すの?」

 「いや実際その時は自分の意志などはないけどその時の記憶はあるんだよね」

 「じゃあこれは・・・」

 「暴走・・・。といったほうがいいかな」

 まさしくその姿は反転などとは格が違うほどに強大で最悪であった。

 「天聖『ベールフェゴル』」

 その呼び声に答えるように今まで『ヘル』の周囲に浮いていた大剣は消え、代わりにさらに巨大な大剣が出現する。

 元の世界の物で例えるならその大きさは大型トラックほどの大きさを誇っていた。

 刀身のいたるところからどす黒いオーラを放ち、触れただけで切れそうなほどに鋭く、その剣をまるでおもちゃの剣でも持つかのように『ヘル』はもてあそんでいた。

 「殺す。滅する。滅ぼす。消し飛ばす。殺す殺す殺す!」

 殺すという言葉を何度も連呼しそして大剣を高々と挙げる。

 「つっ!斬撃が来るよ!」

 その言葉に反応して全員が『ヘル』の直線状からはなれる。

 それとほぼ同時に大剣が振り下ろされ巨大な黒い斬撃がまっすぐ放たれる。

 「あっぶねー」

 「油断しないでください、りんな」 

 「わ、わかってるって」

 「次の攻撃が来る前に一気に仕掛けるよ」

 「了解!」

 「わかりました」

 「よし。・・・できることなら反転は使いたくないけど使わざる負えない状況になりつつある」


 時は少しさかのぼり、ここは6日前の樹海。

 「ここは、どこですか。頭の中に色々流れてきて頭痛いです」

 彼女もまたこの世界に異世界入りしてきた身だ。

 この世界での目的や自分の戦乙女の力などと一気に頭に流れてくる情報にパンクしそうな状態でいると背後に気配を感じ振り返る。

 「誰ですか?誰かいるんですか」

 「敵だったらどうしましょう。えっと神装を使えば超人的な力が使えるのですよね」

 「えっと神装『アー」

 彼女は最初の死亡者となった。

 「人間ってもろい。すぐ壊れちゃう。新しいおもちゃを探さないとね。きゃははははははははは」

 昼間の樹海に悪魔の様な笑い声が木霊する。


 舞台はまた戦いの場へと戻る。

 あれから何度も攻撃を仕掛けているが相手に隙が現れないために全くと言っていいほどにダメージが入っていない。

 それどころか、神装などを維持するための神話度が徐々に減っていき、体力的にも不利にある。

 「はあ、はあ、神装を保つのももうきつい」

 「私ももう、無理かもです」

 「これは、予想以上にやばい感じかな」

 「花梨。なんか手はある?あの状態を知っている感じだったよね」

 「いや、知っているというよりは、予測といったほうが正しいかな」

 「つまり、対処法はないのですか?」

 「今のところ、攻撃を与え続けるしか。ただでさえ戦乙女の情報量が少なすぎる現状では何とも言えないし」

 最悪の状況・・・。

 この誰も打つ手がない状況と解決策さえない状態に沈黙が走る。

 「・・・またあれを」

 しばしの沈黙を破ったのは3人の中で誰よりも戦乙女について調べた人物、花梨である。

 「あれって?」

 「何でしょうか?」

 「反転を使う」

 「え、花梨ちゃんと使えるの?」

 「しかしそれは危険すぎるのでは?もう少し考えてからでも」

 「いや。もう待っていらんない」

 神話度の放出をしようとしたその時りんなが暴走状態の『ヘル』向かって飛び出す。

 「ちょっと!稲上君!」

 しかしりんなの剣は『ヘル』に届く前に『ヘル』の大剣の一振りで起こる突風で吹き飛ばされる。

 「あきらめない!最後の瞬間まで!」

 そうその言葉はいつか昔にまだ彼女がこの世界に来たばかりの時に言った言葉。

 その時もこんな最悪の状況だった。

 

 「いつっうー」

 「あきらめろ。貴様に勝ち目はない。虫けらのように弱い人間は何も知らずにこの世界を生きて行け」

 それはまだ、戦乙女の数も少なくルールもこれと言って決められていなかった時。

 「ありゃりゃー君。いい加減あきらめたらどうかな?はっきり言って今の君にここにいる『カーリー』を超えることははっきり言って不可能に近いかな」

 「それでも・・・」

 「貴様。まだ立つか。私とて暇ではないのだ。殺すほどの威力は出せなくても、永遠に戦闘不能にくらいはできるぞ」

 これが最後の警告になるとその場にいる全員がわかっただろう。

 だがそれでも彼女はあきらめない。

 いや、あきらめられないといった法が正しいのかもしれない。

 なんせこの世界に来て頼る相手もおらず、どう生きていけばいいのかも分からないような状況にあったからだ。

 「それでも・・・」

 「私は・・・」

 「あきらめない!最後の瞬間まで!」


そんな事を思い出しフッと一人笑うと花梨はりんなに言う。

 「いいよ。でもこれが最後ね。ダメだったら私は反転する」

 「よし来た!」

 「やるからには全力で行きますよ」

 「わかってるってば」

 「制限時間は10分。それを1秒でも過ぎたら何て言われようと反転する」

 「望むところ!」

 由衣はりんなに聞こえないくらいの声で花梨に尋ねる。

 「桐谷さん。いいんですか?いやその反転というのを進めているのではなく。なぜりんなの考えのない提案?を呑んだのですか」

 「昔をね」

 ニッと由衣に笑いかける。

 「あれでいく」

 「了解。氷牙」

 花梨の合図でりんなが氷の槍状の塊を生成させる。

 「雷投剣」

 氷の塊を生成させると同時に由衣は左手に雷をためその雷を『ヘル』めがけて投げるように飛ばす。

 「Ⅲの時間チェイス

 花梨の左目の数字がⅢへと変わる。

 そして自分の手をりんなの生成した氷に触れる。

 触れた氷をりんなに返すように渡し、それを今度はりんなが『ヘル』めがけて投げるような構えをとる。

 最初に由衣から放たれた雷に追うように氷の塊を飛ばす。

 雷は『ヘル』に届く前に大剣の一振りによって消し飛ばされるが、続くように投げられた氷の塊はすでに『ヘル』との距離は約50㎝まで迫っていた。

 瞬時に反応し交わそうとするが花梨が指を鳴らし、その音に反応するように氷の塊が凄まじい爆発を起こす。

 爆煙が消える前にりんなが『ヘル』めがけて剣を構えながら突っ込んでいく。

 「氷花」

 冷気をまとわせた剣を爆煙ごと『ヘル』に切りつける。

 切りつけた勢いで煙を吹き飛ばす。

 そこには冷気を正面から受け全身を氷漬けにされている『ヘル』がいた。

 体外へ『ヘル』から魔力が放出されなくなり、同様に神話度の吸収や放出もなくなり完全に沈黙する。

 人知を超えた力で氷漬けにされたのだからその氷塊は地に落ちることもなく、ましてや溶けるような様子もなく、まるでその空間だけの時間を凍らせたようなものだった。

 「これで・・・終わったかな」

 「多分ね」

 「つまり、私たちは殺すことなく相手をこんな状態ですが無力化に成功したという事ですね」

 緊張が一気に解けた三人に急激に疲労感と神話度の使い過ぎによる空腹が襲い掛かる。

 倒れこむように地面に落ちていく三人。

 地面に落ちるとともにそれぞれの神装が解除されていく。

 「なんか最後があっけなさ過ぎて何とも言えないや」

 「いつだって終わりはあっけないものだよ」

 「でもあっけなさすぎるとなんか、こう・・・」

 「由衣は考えすぎだと思うよ。まああの氷が永遠に解けないなんて断言できないけど」

 各々がそれぞれ終わったという事を確認するために言葉を交わすが全員がまだ心の奥底で何とも言えないという気持ちを抱えていた。

 この世はまるであまのじゃくだ。

 そう思い始めたのはいつからか。

 自分が望んだこととは大抵反対の結果になったりする。

 何者かに仕組まれていたかの如くに。

 そしてそれは、油断したときにやってくる。

 「あの、何か聞えませんか?」

 「聞こえるって」

 「私には何も」

 「何処からとまでは分からないですが、まるで風を切るような音が・・・聞こえます」

 由衣が言葉を切ったとき、すでに音の正体は姿を現していた。

 「花梨。あれだれかわかる?」

 「私を誰だと思っている。天下一の『情報屋』だぞ。確かあの子は・・・やばいな」

 「え?誰だって」

 しかしその問に答えたのは花梨ではなく氷漬けにされた『ヘル』の隣で浮遊している戦乙女が答える。

 「僕の事が知りたいのかぁい?」

 覇気のない口調と眠そうなオーラを漂わせる。

 その見た目はパーマをかけた髪をラフに乾かした感じに仕上げた髪型ドリーミーウェーブに髪色は薄い桃色をしていて瞳の色は薄い黒、パジャマのような神装に薄い羽衣のようなものをまとっている。

 「ぼぉくぅはぁ、ふぁあぁぁ。眠いなぁー。えっとー、椎名。椎名弦だよぉ」

 「何ですかこのいかにもかったるそうな方は」

 やる気のない口調に由衣が切れ気味に話す。

 「口調とかに惑わされないでね。あの子。相当やばい部類に入るから」

 「あれで?」

 「ねぇー。名前教えてあげたよね?きいてるのぉ?殺されたい?」

 最後の殺されたいという単語にとてつもない殺意を覚える。

 「まぁ。めんどくさいし殺すのはまた今度でいいや」

 「今回はこの氷漬けの戦乙女をふぁああ。回収しに来たからぁ」

 「後ね。君たちのぉ。自己紹介とかいらないから。ある程度知ってるからぁ」

 氷漬けにされた『ヘル』をツンツンとつつきながらやる気のない口調で話し続ける。

 「でも君たちが私の事を知らないのはフェアじゃぁないねぇ。神装がぁ『ルナ』。そしてですねぇ。僕の天聖が『ファフニール』」

 椎名の右手にモワモワとした黒い何かが展開される。

 やがてそのなにかは徐々に肥大していき巨大な手となる。

 その手は氷漬けの『ヘル』を捕まえる。

 「じゃあこの戦乙女はもらっていくねぇ」

 「ちょっと待って!その、あんたはそれをどうするの?」

 「君。うるさいよ。確かぁ・・・。思い出したぁ。稲上りんなだっけ?君の質問に僕は答える義務がないよぉ。深追いは殺すからねぇ。そういう事でバイバイ」

 ブォンと騒音を上げてその場から飛び去って行く。

 

 空は紅く染まりあがり、あたりは徐々に暗くなっていく。

 遠く西の空に眩しく夕日が燃えるように輝いている。

 「稲上君。神崎君。君たちには心から生き残っていてほしいと思っているよ。私はこれからやらないといけないことがあるからまたいつか会いに来るよ」

 「花梨。私もまた会えることを願っているよ」

 「桐谷さん。いろいろと有難うございました。私たちは私たちなりに生きていくので」

 「しみたっれた空気はあまり好まないから私は行かせてもらうとするよ。死ぬなよ。二人とも」 

 その言葉を最後に身をひるがえし椎名が飛び去って行った方向、要塞型拠点へと歩いていく。

 二人はただ黙ってその姿を見えなくなるまで見送った。


 二人と離れたて数分。突如花梨の頭に頭痛が走る。

 「つっ!」

 途端様々な記憶が鮮明に脳を過る。

 「なんとか、時間内にうまくいった。そこにいるんだろ」

 花梨は茂みに向かって声をかける。

 「ありゃりゃ。ばれてた?」

 「そりゃね」

 花梨に指摘されて大人しく一人の女性が姿を現す。

 前髪をパッツンにしていてまっすぐストレートな髪の毛が腰まで伸びている。

 髪色はきれいな黒に染まっていて瞳の色は夜空の無数の星のようにキラキラとしている黒い色をしている。

 「今回もうまくいった?」

 「何とかね」

 「確かこれで・・・」

 「95回目かな。やく一週間の間でここまでしか出来ないとなるときついかな」

 「でもまた飛ぶんでしょ」

 「勿論。だから明日香。もう一度キーワードだけ残して時間差で閉じてくれない」

 「花梨ちゃんの頼みだし。断るわけがないよ。脳えのダメージは最小限で済ませておくから」

 「それでこそ私の親友」

 「親友って、照れるねぇ。では早速、神装『黒百合姫』」

 ラフな服が一瞬にして黒く輝く着物へと姿を変える。

 その見た目はまるで姫の如く美しく目映いものだ。

 本人のもともとの黒くまっすぐおろされた髪型によりさらにその美しさを引き出している。

 「天聖『ザフキエル』」

 呼び声とともに持ち手が三日月の形をした刀ほどの大きさのある鍵状の武器が展開される。

 その鍵の先端を花梨の胸に押し当てる。

 「発動時間は10分後、終了時間が1週間。特定ワードを設定。・・・。ロックメモリー」

 ガチャりという重い音が鳴る。

 「またこの場所で、今度は少し時間を変えて」

 「ありがとう明日香。私は次が来る前に行くね。神装『ルサリィ』」

 非力な人から瞬時に戦乙女へと変わる。

 「天聖『ルシファー』」

 左目にゼロという数字が出現する。

 「そういえば一つ明日香に言おう思っていたんだけど」

 「なにを?」

 「その明日香の能力ってさ記憶を閉じると閉じる前に使っていた技を使えなくなの?」

 「多分ね。その記憶を強制的に閉じているから記憶が戻らないと無理だよ」

 「反転体も?」

 「もち」

 「10分しかない。また後でね」

 「花梨ちゃん。無茶はしないように」

 それに返すようにニッと笑う。

 やがてその場に明日香のみ残された。


 そして時はさかのぼる。

 ここは樹海そこに115人目の戦乙女がいた。

 だがその戦乙女のいた場所には人の形をした何かと生臭い香りだけが漂っていた。

 「おーもちゃ、おーもちゃ、丈夫なおもちゃは、いーませんかー?クフフフフ」

 そんな最悪な樹海でなんとも不思議な歌を歌う者が一人。

 その容姿は背も低くへたをすれば小学生と間違えられるほどだ。

 髪は黒くそこそこ伸びており前髪が片目を覆っていてあまり表情を把握できない。

 瞳は光なきほどに黒い

 そしてその後ろに徐々に忍び寄っていく影が一つ。

 「あれれー?自らおもちゃになってくれそうな人がやってきたよー。うーれしーなークフフフ」 

 「あらぁ?バレちゃったぁ。君。あれをやった子かなぁ?どんな顔かと思ったら可愛いお顔ね。私の好みの顔だわ♡」

 「んー。おねえさんは、すぐに壊れないよね?神装『ネメシス』」

 神装が展開される。

 火炎に包まれたかと思うと、真赤な毛皮のマントをはおりタイツのよう黒い服をまとっている。

 「あそびたいのぉ?活発な子も好きよ♡神装『聖母マリア』」

 樹海にて二つの戦乙女の性質がぶつかりあたりに突風を巻き起こす。

 「天聖『マジックバレット』」

 『聖母マリア』の背中に四つの魔方陣が展開される。

 「天聖『フェニックス』」

 一方『ネメシス』は青い炎に体が包まれる。

 「先手必勝。ばいばーい♡」

 四つの魔方陣が一気に光り、無数の魔法弾が『ネメシス』に炸裂する。

 だが『ネメシス』は微動だとしない。

 確実に魔法弾は『ネメシス』に当たっているが当たった瞬間瞬時に青い炎による再生する。

 「んもお~。きりがないじゃない」

 「炎解」

 周囲に『ネメシス』を中心に炎が広がる。

 「そんなことおしてもぉ~いみないわよ~♡」

 「火柱」

 『ネメシス』が巨大な炎の火柱によって見えなくなる。

 そして『聖母マリア』の攻撃の嵐から逃げるために火柱をつたい上へと飛び立つ。

 「一気に手ごたえがなくなったと思ったら、そういう事ね」

 「空中に逃げるのもぉ~計算のうちよ♡」

 『聖母マリア』は右手を上空の『ネメシス』の方へと向ける

 「Xバズーカ」

 超圧縮魔力が『ネメシス』に直撃する。

 「ん~でも死なないのねぇ~」

 粉々に吹っ飛ばされたはずの『ネメシス』の体はすでに元通りである。

 「おねえさん。もっとだよ。もっと、もっと、そんなか弱い威力じゃ私は壊されないよ。おねえさんに人の壊し方を教えてあげるね」

 「炎解」

 今度は『ネメシス』を中心に球状に炎が展開される。

 「火弾」

 球状の炎は一瞬はじけて無数の炎の弾となって『聖母マリア』向かって飛ばされる。

 「絶対領域」

 『聖母マリア』めがけて放たれた炎の弾は当たる寸前に見えない壁に当たったかのように『聖母マリア』の目の前で弾けた。

 「あ~ら~?甘いのはあ~どっちかしらね」

 「おねえさん。やるねえ。でーもー、ちゃんと壊してあげるから」

 ただ言葉だけ聞いていれば変人が二人いるだけだが、片方は不死と言っても過言でないほどに死なない。

 もう一方は変則的でどう仕掛けてくるかわからない。

 多分一番戦わせてはいけないのはこの二人なのだろう。

 片方を塵に返すまで終わらぬ戦いが幕を開く。


 戦いはそれからというもの、いまだ終わらず二人は戦い始めてからすでに2日目がたとうとしている。

 『聖母マリア』は魔法という戦い方をするだけあって底なしと言っていいほどの魔力を有している。

 対して『ネメシス』も瞬時の回復等に魔力で大量に必要とするだけあってこちらも底なしだ。

 持久型が戦うという事はどちらかが倒れるまで戦いは続く。

 暴風が吹き荒れその風に『ネメシス』は持ってかれる。

 「はぜちゃいな。エクスプロージョン!」

 巨大な火球が地面にゆっくりと確実に落ちていく。

 暴風に体を持って入れた『ネメシス』は現在火球の真下で身動きを盗れない状態にある。

 「いいよ、いいよ、それで私を壊して見せてよ!」

 樹海に振動が走る。

 火球は地面に落ちて巨大な爆発を起こす。

 「死んじゃったかな~?」

 「クフフフフフフフ。きゃははははははははははははははははははははははははははははは」

 断末魔の如く『ネメシス』も笑い声があたりに響く。

 「おねえさん。今のは死ぬかと思ったよぉ」

 「だけど死んでないわね~」

 「今度はぁ、私のば~ん」

 「大炎解」

 先ほどよりも大きな炎の円が『ネメシス』を中心に地面に展開される。

 「いーっくよぉー」

 『ネメシス』は右手を空に向かって高らかに突き上げる。

 すると地面の炎が回転しながら『ネメシス』の右手に集まり巨大な火球を作り上げていく。

 「幻獣フェニックス」

 右手に集まった炎を『聖母マリア』向かって振り下ろす。

 振り下ろされた手から巨大な火球は放たれて、放たれた火球は形を変えて巨大なフェニックスになる。

 「これはとんでもないもの投げてくれたね~。おねえさんびっくりするなぁ」

 右手に握り拳を作って殴る構えをとる。

 「貫通拳」

 フェニックス向かって拳を突き出すと中心に大穴が開けられる。

 その大穴を飛行魔法で通る。

 「そうよけるんだー。詰まんないなぁー」

 「そろそろ、決めないとまずいかな~。予定が詰まってるから~」

 「おねえさん。逃がさないんだかあらね」

 「また今度遊んであげるから~今回はこの子と遊んであ・げ・て♡」

 「召喚」

 空気がびりりと振動したかと思うと空に巨大な魔方陣が出現した。

 「あまりこれ使ったことないから~何が出てくるかわからないけど~頑張ってねぇ♡」

 グウォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!

 巨大な断末魔とともに魔方陣から巨大な魔獣が現れる。

 「こっちのほーも、面白そー!人より壊しがいがある」

 「またあそぼーね♡インビジブル」

 たった一瞬にして『聖母マリア』はその場から姿を消す。

 「とっととあのでっかーいの殺して—、おねえさんとあーそぼー」

 魔獣の正体はこの世界『ユグドラシル』の氷河地帯に生息しているその名を『白鯨』


・現在の戦乙女の数  114体

・死亡戦乙女の数    1体

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