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戦乙女 ヴァルキリー  作者: 饅頭
戦乙女
2/21

1-2 情報屋

 ブウォンと空を裂く音があたりにこだまする。

 それらは人知を超えた者たち。

 それらが剣を一振りすれば家々は壊れ人など塵へと化す。

 一人は二人を相手にし青く長い髪を一つにまとめ、光なき瞳で敵をにらみ自分の背丈ほどある大剣を振るう。

 そして二人のうち一人は天使を思わせる四枚の巨大な翼を広げ光り輝く剣を振り空を飛び回る。

 もう一人は体中に雷を走らせ。光の速さで移動し切るではなく、削る攻撃をするためのダガーをもち戦う。


 この戦闘を遠くから拝見している人が一人。

 この戦場『ユグドラシル』で最も情報を握る『情報屋』の二つ名で知れる桐谷花梨。

 「この音。相当な戦闘が稲上君と神崎君の拠点付近で起きているぞ。相手は誰だ。ここからの距離だと神装を使わないとダメかな。神装『ルサリィ』」

 その呼び声とともに花梨の体は一瞬光に包まれたかと思うと白いバラと氷の模様の入った黒いロングコートにカラスのように黒い翼を一対。

 「さて、私の考えが当たってたら今までのぬるい戦いは終わったと考えておかないとね。稲上君に今死なれると結構困るし。助けに行きますか。天聖『ルシファー』」

 武器などは展開されず代わりに数字のゼロが左目に映る。

 「Ⅰの時間スピード

 すると左目の数字がⅠに変わり一瞬にしてその場から消える。


 「散るがよい」

 『ヘル』が大剣を大きく振る。

 その攻撃がりんなに届くか届かないかのとこで大剣が空を切る。

 「残念でした」

 「新手か」

 「君が新たにこの世界に来たという戦乙女だね」

 「花梨!?」

 「桐谷さん!?」

 りんなと由衣の二人がそれぞれ別の呼び方で同じトーンで花梨の名を呼ぶ。

 「稲上君神崎君。二人とも無事かい?」

 「うん」

 「はい」

 二人の安否を再確認したところで名も知らぬ敵を再度にらむ。

 「君。悪いけどここは撤退させてもらうよ。戦いたいなら1週間後にここでね」

 「知った事か逃がすわけがなかろう」

 『ヘル』は今度は花梨に切りかかる

 「Ⅱの時間パス

 今度はⅠと映っていた左目の数字がⅡへと変わる。

 そして花梨に降りかかってきた剣が花梨を通り抜ける。

 「何!?我は今確かに貴様を切ったはずだ」

 「ああ。確かに君は私を切ったよ。でも君の剣は私をすり抜けた」

 「ちっ」

 「私に物理攻撃は効かないよ」

 「ぬかせ」

 「Ⅰの時間スピード

 そしてまた左目の数字がⅠへと変わる。

 「なっ」

 一瞬にして『ヘル』の後ろに移動して肩に触れる。

 「君は強いけどその程度じゃあ私には勝てないよ」

 「花梨さん。あんなにも強かったとは思わなかった」

 「ねぇ由衣。花梨の左目を見て。さっきからあの不思議な能力を使うたびに数字が変化するんだ。多分あの左目が天聖」

 「あのりんなにしてはよくそんなことに気づきましたね」

 「・・・」

 声には出さなかったものの結構ショックを受けたようだ。

 「ほら二人とも私につかまって」

 気づけばいつの間にか二人の後ろに移動していた花梨は二人に手を出す。

 「いったんここから逃げるよ。少し話さないといけないこともあるし」

 「くそっ!ちょこまかと逃げやがって」

 「君今度遊んであげるって言ってるでしょ。じゃね」

 そしてまたその場から消え去る。

 

 数秒程度で拠点に到着した。

 「とりあえず1週間何もないことを願おうかな」

 「・・・いまのが桐谷さんの天聖」

 「まあ詳しい話は君たちの家でね」

 「あ、うん」

 三人は神装を解除してりんなと由衣が共同で使用している家へと向かう。

 

 「はい。こんなものしか出せませんが」

 そう言って由衣は花梨に自家製の紅茶を淹れる。

 「おや、こりゃどうも」

 「・・・花梨は何か知っているってことだよね」

 「ふー」

 紅茶を一気に飲み干し一息つくと自分のカバンから一冊の手帳を取り出す。

 「まあいずれ君たちにも話そうと思っていたことだったしね。でもまさかこんなに早く教えることになるとは」

 「いいよ。どんな内容でも覚悟は出来ている」

 「私もです」

 二人の返答を聞き手に持っていた手帳を開く。

 そこにはたくさんの人の名前や詳しい個人情報が記載されていた。無論二人の事も書かれている。

 「私は誰かが元の世界からこちらの世界に異世界入りするたびにそのポイントまで出向いて観察して可能なら直接の会話を試みている。そんで五日ほど前かな稲上君と別れた後私はその付近に異世界入りを果たした人物の場所に出向いていた。日本人ではなかったがこちらの世界は他人の声を自分の一番聞きなれた言葉に変換して耳に伝えているらしい。その人物はまるで何かを恐れているようだった」

 再度由衣に淹れてもらった紅茶をすする。

 「それからというもの急激的に何人もの人が異世界入りをし始めた。稲上君と五日ほど前に会うまでの戦乙女の数は約95人その後三日で5人ほど増えた。今まではそんな短時間で異世界入りが起こらなかったのにだ。そして先ほど君たちと戦っていた戦乙女で115人目だ」

 「それで、つまりどういうこと?」

 理解が追い付かずにりんなは頭を抱える。

 「つまりそれだけ増えたという事がなにかにつながるのですか?」

 りんなを無視して由衣が質問を飛ばす。

 「つまりに何につながるか・・・少し考えてほしい。君たちがこの世界に来るときに何者かに言われたはずだよ」

 「はっ!」

 二人で何かに気づきを見合わせる。

 「うん。つまりそういう事。この世界に生ける全戦乙女の目的」

 「自分以外の戦乙女を倒し」

 「生命の樹の実を手にする」

 「始まってしまったんだよ」

 その言葉に二人は言葉を失う。

 「今まで私は不思議でならなかった。なんせこの世界は矛盾していたからね。自分以外の全ての戦乙女を倒し頂点に立たねばならないのに倒しきれないのだから。今までまるで何者かにセーフティでもかけらていたかのようにね」

 「という事までが前置きね」

 「え?」

 「へ?」

 「いやいや、え?じゃなくて本題はこれからだって。そんな現状を君たちに話に来ただけなわけないでしょ。まったく二人してしけた顔しちゃって」

 「それってさっきの戦乙女に言った1週間のきげんとかんけいがるの」

 「稲上君正解。そう1週間で君たちには自分の力を今まで以上に振り出す修行みたいなのをしてもらうよ」

 「具体的には何をするのですか」

 「簡単に言うと戦乙女の状態で戦乙女の力の源の神話度を体中から放出して体を流れる魔力を乱してもらうよ」

 「?」

 「?」

 二人そろって何を言っているかわからないという顔をしているのを見るなり「そこからですか」とため息をついたのは言うまでもなかった。


 「よし二人ともメモの準備はいいかい?」

 「もちろん」

 「準備OKです」

 「ではこれより戦乙女の特別授業を行います」

 自前の伊達眼鏡を指で軽く上げ軽く胸を張る。(その後すぐに邪魔だといいながら伊達眼鏡を投げ捨てる)

 「まずどこから話そうかね。どこからわからない?」

 「多分すべて!」

 「私もそんな感じです」

 りんなはどや顔で全く理解していないと断言して由衣は申し訳なさそうにしている。

 「うんまあ。知ってた」

 そして軽く咳払いをしてからではという言葉とともに授業は始まった。


 この世界の名は『ユグドラシル』終わりなきにどこまでも大地が続く。

 樹海や渓谷山脈のどによって神話度というのが変化し、その神話度によって戦乙女に様々な影響が出る。 例えば火山地帯なら炎を操る戦乙女の身体能力などが上がり逆に氷などを操る戦乙女は身体能力等が極端に下がる。

 そして神話度は元から戦乙女の体の中にも流れている神話度は自分の神装を構成させるためのもので同様に天聖も神話度によって展開される。

 自分の中の神話度は戦うことによって放出されていき一定以上の放出によって極度の空腹状態に陥る。

 この世界は何も食べなくても生きていけるのは体の中の神話度によるもので神装を展開していないときは空気中に漂う神話度などを口などから吸いこみ身体の神話度を維持している。

 神話度が減ると極度の空腹状態に陥るのは活動エネルギーとして消費していたために急激に減ることによって体が大量の神話度を欲するからである。

 神話度は空気中のほかに食や睡眠などによって回復する。

 次に魔力というのは神話度より生成される物質で飛行をしたり簡単な魔法弾や斬撃を飛ばしてり防御障壁を張ったりなどその他固有技などの発動時に消費するエネルギーである。

 これらは神話度より生成された後体を巡回し体外に自動的に放出される。

 この巡回を行うのも神話度によるものでその神話度が大量に放出されるという事はうまく巡回しなくなった魔力が乱れ普通に立つことさえ困難にさせる。


 「とまぁこんな感じだよ」

 「とりあえずその神話度とかがどういうのかって言うのはなんとなく分かったんだけど」

 「なぜその神話度を放出するという修行をするのかわからないのですが」

 「ああ、つまりその修行の目的は大きく分けて二つあるんだけど」

 「まず一つが神話度のコントロールを完璧にするのと限界突破かな」

 またもや新たな単語に首をかしげながら見つめあう二人。

 「えっとね。限界突破ていうのは反転状態だよ」

 さらに首をかしげる二人。

 その反応を見て少し戸惑い気味に苦笑いを返す。

 「えっとまぁあれだよ。今より強くなるって事」

 「説明を放棄しちゃったよ」

 「仕方ないですね」

 「なんかひどくない」 

 「それで、花梨はなんでそんなに詳しいわけ?」

 「よくぞ聞いてくれました!それはですね私の絶え間ない努力と仮説と検証のもとにこの考え方が最も私たち戦乙女を説明するのに適格だと考えたからです!そして神話度って名付けた理由も戦乙女の名前って全部女神の名前なんです!」

 自慢げというか誇らし気というかこんな態度を見て由衣が一言上げる。

 「あの、前々から桐谷さんに思っていたのですが」

 「なんだい神崎君?」

 「テンッション上がると口調が変わりませんか?」

 「なっ」

 「あ、それは思った」

 「稲上君までひどいですねまぁこれと言って意識してこのしゃべり方をしているわけでもないので構わないですが」

 「あ、あと補足だけど神話度の直接体に及ぼす影響として身体の成長や老化はとてつもなく遅いという事だね」

 その言葉に一人だけ反応したものがいた。(そのことについてはまた次の機会に)

  

 「さて、このくらい上空なら動きやすいかな」

 「えらく高いとこまで来たね」

 「バカと煙は何とやらとも言いますしね」

 「神崎君・・・それ私の事言ってんの」

 その言葉に対して由衣は「さぁー」とすました顔をしていた。

 「まずは神話度の放出の仕方から説明するね。まずいつもの神装と天聖が展開される感覚をイメージしてみて」

 「え、あの何とも言えない感覚をどうイメージするの」

 「確かにあれをイメージするのは結構厳しいですね」

 「そうだね。例えるとしたら体中を縛っていた鎖がはじけるような感覚って言えばわかる?」

 「ああ、確かにそれならいけそうな気がする」

 「はい私もそれならイメージしやすいです」

 それから三人ははるか上空で大量の神話度を放出し始めた。

 一人だが無造作に神話度を放出するのならば強い風が起きたりとか急激に周りの植物が成長したりなどで済む話なのだが、それぞれ別の神話度を一気に放出させるという事は神話度同士が反発しあい気候や生物などに激しい影響を与える。

 その事実に花梨が気づくのは少し遅すぎた。

 結果現在『ショチケツアル』の上空では暴風雨が起こり空一面に雷雲が漂う。

 「やり過ぎた・・・。おい稲上君!神崎君!」

 「あ~う~」 

 「ふぇ~」

 「だめだ神話度を放出しすぎて完全に伸びてる」

 最悪すぎる事態ではないことを確認した花梨は神装を維持できなくなってきている二人を地上におろす。

 「とりあえず神装を強制的に解除させるか」

 右手にりんな、左手に由衣の手を握り自分の神話度を送り込むことによって強制的に神装を解除させる。

 「よし。これでとりあえず二人は安心だ」

 そしてすぐに上空に飛び上がる。

 「私の神話度も残りわずか、反転を使うしかない」

 反転、それは以前に花梨が一人で神話度の放出の限界の先を目指していた時に起きた現象だ。

 一定量神話度を放出した戦乙女は大抵の場合伸びきってしまう。

 だがその原因は魔力の乱れによるものと推測して同時に魔力を発動準備状態にすることによって魔力の乱れをなくそうと考えその方法を試した結果意識を完全に失い気が付いたのは1時間後。

 その間に何をしていたかを思い出すことはできるが自らの意志で体を動かしてはいなかった。

 多分戦乙女本来の力を発揮するがその間は意識がなくその後記憶はあるが自らの意思はない。

 そして花梨がその記憶の中でしていたことは魔法弾をただ永遠と樹海に打ち込むという事。

 そんな危険にも近い行為をしようとしている理由は仮説と検証のため。

 「私の仮説が正しいならばあの反転状態はその時の一番願う事を優先させる。あの時何も考えずに魔法弾を打っていたのは多分目的がなかったための破壊衝動・・・いや多分私の心の奥底の本心」

 「この仮説が正しいとなるならこの戦況で優位に立てる」

 最後に言い放ってから自分の神話度を今まで以上に一気に放出させる。

 そして乱れ始めた魔力を一気に体の中心へと送り魔力を発動準備状態へ。

 そして目的としてこのバカでかい雷雲を消し飛ばすことだけに意識する。

 

 一瞬この世の全ての時間が止まってしまったようだった。

 はるか上空に一人の戦乙女。

 体中に赤紫色の光のような何かをまといただただ空の雷雲を見つめている。

 「久方ぶりにこちら側へときたが・・・成程。私にこの状況を打破しろというのか」

 その者の容姿は明らかに戦乙女『ルサリィ』こと桐谷花梨

 だが声色やその感情はまったくの別人であった。

 「前回とは違い力に制限を感じない。この者にかかっていた力の制御が取れたといったところか」

 そう言って自分の体を見回す。

 「何よりこの心の奥底にあるたった一つの感情。願いというべきか。それがこの体の持ち主の願いだというならば叶えてやろう」

 そしてもう一度はるか上空を見上げる。

 「天聖『ルシフェル』」

 すると左目にゼロの数字が現れる。

 「Ⅳの時間タイムストップ

 すると左目の数字がⅣに変わり目の前にあっ雷雲が動きを止める。

 雷雲の時間が止まったことを確認すると右手を高々と挙げて空を握りつぶすような動作をする

 「時空の歪み」

 途端に空に亀裂が入ったかと思うと渦巻きを巻くように回り始めて中心に吸い込まれ、やがて雷雲は消えていった。

 「こんな事を私にやらせるとはこの体の持ち主は相当に弱いのか。あるいは・・・」

 最後まで言い終わる前に神装が解除され残った魔力によってゆっくりと地面に落ちていく。

 

 三人が目覚めたのは2日後。

 約束の日まで5日。

 「やばい時間がない」

 「でも疲れが吹き飛んだって感じがするよ」

 「2日寝てましたからね。今日が約束から3日目。今日合わして5日。でももうすぐ明日になりますし」

 「実質4日しかないか」

 おもむろに花梨が手帳を開く。

 「1週間で厳しいとなると別の手を考えるかな」

 「別の手とは何でしょうか?」

 「簡単な魔法弾とか斬撃とかだけじゃなくてもっと実践的な個有技が欲しいと思ってね」

 「それって花梨みたいなあの一瞬にして別の場所に移動したり攻撃をすり抜けたりって事?」

 「まあね。私の場合あの技は武器を持たない代わりに元から使えてたものだし」

 そして先日の反転した後からの記憶を追う。

 その中で使っていた私のまだ知らないⅣの時間タイムストップと時空の歪みという二つの技。

 その事を深く考えているとりんなが顔をのぞかせる。

 「花梨元気ないけどどうしたの?」

 「いや。たいしたことじゃないんだけど」

 「・・・なんかあったら言ってね」

 りんなはそう言って自分なりにも何かできないかと思考をめぐらす。

 しばし無言が続きその無言に耐え切れなくなり由衣が口を開く。

 「その私たちの個有技の件ですが、どのようにして会得すればいいのでしょうか?」

 「ああ、その話も博打に近いんだけど今一番可能性があると考慮してまず君たちが技のイメージをしないといけないんだよね」

 「またイメージするの」

 「成程。イメージは基本という事ですね」

 「まあね。そんで例えば私のⅠの時間スピードの場合自分の視界に入る範囲の場所へ移動という時間を割いて一瞬にして移動するという技。イメージとしてはその場所に存在しているという事を考えればいいと思うよ」

 二人はあ~と最初の時よりは理解しているようだ。

 「そんでもって稲上君の場合は戦乙女の性質が氷だから凍らすとかそんな感じのイメージで技を作ってみれば?そんでもって神崎君の場合は雷の性質があるからそれ系統を」

 「ねぇさ」

 「なんだい」

 「花梨の戦乙女のその性質?ってやつは何なの?」

 「私のは時間だよ」

 「時間ですか。つまり性質というのは自然物などだけではないのですね」

 「うん結構あるよ。似たようなものこそあるけど同じものはなかったかな」

 それから残った4日を技の研究と実証にあてた三人は約束の日を迎える。


 「やあ待たせたね」

 その言葉とともに先日から同じ場所で待ち続けていただろう戦乙女『ヘル』が振り向く。

 「やっと来たか」

 「もちろん」

 「あたりまえです」

 「約束は守る主義なんでね」

 「塵と化せ」

 そして自分の背丈ほどの大剣を大きく振り巨大な斬撃を飛ばしてくる。

 「神装『ルサリィ』天聖『ルシファー』Ⅰの時間スピード

 早口言葉のようにまくし立てて後ろに立つ二人に触れ『ヘル』の後ろ側に移動する。

 「ぜぇぜぇ。いきなり、はぁはぁ、攻撃を、げほっ。すんじゃないよ」

 「桐谷さんすごいですねあんなにも早く神装と天聖を展開させさらに攻撃さえよけるなんて」

 由衣が驚くのも無理もない。

 なんせ花梨がこの一連の動きをするまでの所要時間は斬撃が直撃するまでの約5秒の時間だ。

 「由衣!私たちも」

 「はい!」

 「神装『ヴァルキリー』」

 「神装『ルキナ』』

 りんなはグラデーションのかかったドレスをまとい周囲に冷気を漂わせる。

 対して由衣は白く丈の長い学ランにちかい軍服に周囲に雷を走らせている。

 「天聖『ジブリール』」

 「天聖『ゼルエル』」

 「準備はいいね二人とも」

 「全力でいく」

 「私もいつでも大丈夫です」

 「Ⅰの時間スピード

 『ヘル』の目の前まで一気に距離を詰める。

 「邪魔だ」

 大剣が花梨に襲い掛かるがそれを軽々かわす。

 「大剣ってのはね近距離武器であるけど敵がこんな感じにほぼ密着状態にあると本領を発揮しないんだよ。Ⅲの時間チェイス

 左目の数字がⅠからⅢへと変わる。

 花梨は『ヘル』の後ろにひょいと身をかわすと背中に触れる。

 「また触れられたね。でも今度はただ触れただけじゃないよ。」

 そう言い残して『ヘル』から離れて距離を置く。

 「閃光」

 今度は由衣が『ヘル』へと距離を詰める。

 「さすが『雷帝』ただでさえとてつもない速さを持っているのにさらに高速で動くとはね。私のスピードとは別格だね」

 「雷鳴弾」 

 短剣を『ヘル』の顔に当たるか当たらないかのところで振りショックを促す。

 「くっ」

 「よしひるんだよ」

 その合図とともに『ヘル』よりはるか上空まで飛び上がる。

 「氷花」

 冷気をまとった斬撃を飛ばす。

 「つっ」

 なんとか反応して攻撃を大剣で防ぐが冷気をまとった斬撃は大剣ごと腕を凍らせる。

 「くそが」

 怒りに任せて『ヘル』が体中から神話度を放出する。

 「自爆する気?」

 「神崎君!稲上君!今すぐその場を離れろ!」

 花梨の叫びとともに一斉に花梨の後ろまで下がる。

 「さっき触ったのはマーキングだよ」

 花梨は手を高らかと上げ思いっきり指を鳴らす。

 その音に連動するように先ほど花梨が触れた『ヘル』の背中が爆発する。

 だが時すでに遅し。

 『ヘル』は本能的に神話度の放出と魔力の発動準備状態を行い、結果。

 反転した。


・現在の戦乙女の数  114体

・死亡戦乙女の数    1体

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