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戦乙女 ヴァルキリー  作者: 饅頭
戦乙女
1/21

1-1 本当の始まり

 ゴゴゴゴゴゴという重い空気があたりに一面に広がる。

 ここは戦場。だが普通とは違う。まず一つにこれは国同士の争いではない。次に戦うものがただの人間ではない。人知をはるかに超えた存在。その者の名を戦乙女!

 突如として普通に生活していた人間がこの世から消えるという怪現象が2020年に世界のいたるところで起きていた。行方不明になる人間はすべて女性。年齢は16~25くらい。現在の行方不明者の数は100人。今や世界中で混乱が起きつつある。いったい誰が何のために何故・・・と。

 消えた人たちのいく先は戦乙女が戦う異世界、名を『ユグドラシル』という。この世界は何処までも大地が広がり終わりが見えない世界。

 元の世界で消えた人たちはこの世界に来て戦乙女の力を得る。女神の加護の具現化『神装』と言われる鎧をまとい、『天聖』という名の武器を扱い、戦乙女同士で最後の一人になるまで戦い続ける。

 最後に残った戦乙女に与えられるのは知恵の樹の実と対をなす生命の樹の実を手に入れる。

・現在の戦乙女の数  100体

・死亡戦乙女の数    0体


 現在樹海の前にて二人の戦乙女による交戦が始まろうとしている。

 片方はだだっ広い草原を背にして樹海を正面にして戦車を引き連れ巫女のような神装をまとい、あまり表情のうかがえない顔をして、瞳は赤く髪は長く(ワンレンロング)。髪色はきれいな黒色をしていて背中に妖精のような四枚の羽根が生えていてただじっと敵のいる方向をにらんでいる。

 もう片方は樹海の中に隠れて神装をまとわずに双眼鏡を片手に敵のいる位置を浮かない顔をしてにらんでいる。

 「くそぉ…全体的に包囲されているからうかつに動けないし逃げられないし」

 「しかも、厄介なことに相手は『エリス』じゃん。神装使ったらすぐばれるし、どうしようかな」

 この緊迫した雰囲気が10分ほど経過したところで戦車を引き連れている戦乙女『エリス』がしびれを切らして魔法弾を一発だけ放つ準備を始めた。

 「さて、出てきてもらえたり神装を使ってくれたりしないようなのであぶりだすとしましょう」

 「え、まじ。あれは生身で食らったらダメなやつ」

 双眼鏡越しに相手の魔法発動を確認するなり神装を発動するが早いか魔法に吹き飛ばされるが早いか。

 「神装。『ヴァルキリー』」

 あたりに沈黙が走る。

 「」

 『エリス』が口を開こうとした瞬間突風が吹き荒れた。

 「あれは・・・、『ヴァルキリー』か・・・」

 『ヴァルキリー』の出現と『エリス』の魔法にやり樹海の一部が消し飛ぶ。

 そして、その姿は紫と水色のグラデーションのドレスをまとい、天使のような四枚の翼と頭の上には光の輪が輝いている。瞳は青く髪は短く(ショートウルフ)髪色は水色。

 「天聖。『ジブリール』」

 『ヴァルキリー』のみが使用できる天使『ジブリール』その姿は白く輝く剣の形をしている。

 「ほう・・・、やりあうか」

 「天聖。『ザバーニャ』」

 『エリス』の使用天使。『ザバーニャ』は『エリス』の右手に装備する見た目は大きな盾に銃器を取り付けた感じをしている。

 「撃て!」 

 『エリス』の声によって無人の戦車の砲撃が一斉に始まる。戦車の数はおよそ20。

 戦車から発砲された弾丸が自分にあたるギリギリのところで『ヴァルキリー』は空に大きく飛躍する。

 爆破の煙の中から一筋の線を描きながら空高くに陣取る。上空ならば戦車の攻撃は届かないものの『エリス』の天聖『ザバーニャ』の攻撃なら届いてしまう。隙のない『エリス』による発砲が『ヴァルキリー』に襲い掛かる。

 「うおりゃあああ!」

 掛け声とともに『ジブリール』より大きな円を描くような斬撃が放たれる。

 『ヴァルキリー』が放った斬撃は『エリス』の放った弾丸を一掃した。

 その一瞬を逃すまいと『ヴァルキリー』は翼を大きく羽ばたかせはるか彼方に飛んでいく。

 「・・・逃げたか」

 『エリス』は無人戦車を引き連れて『ヴァルキリー』が逃げて行った方向とは反対側に進んでいく。


 「ここまでくれば大丈夫かな」

 周りに敵がいないのを確認し安堵の息を吐きながら地上に降下する。

 「いやしっかしついてないよ。帰り道で『固定砲台(エリスの二つ名)』に会うなんてあんなのと長期戦は交えたくはないよ。とりあえず拠点までもう少しだし歩いて帰ろうかな」

 『ヴァルキリー』をとき拠点へと帰路を進める。

 拠点とは戦乙女たちの住む場所えある。この世界では自然から直接エネルギーを得るため何も食べなくても生きていけるのだが、この世界の一つの楽しみとして食べものは存在する。そういった戦い以外の事をする場所がいわゆる拠点である。

 拠点の種類は様々ある。

・ベースキャンプ型…これはテントと必要最低限のもので作られる。

・アジト型…これは数人の戦乙女たちが集まり地下等に隠れるように存在する。

・村型…これは元からこの世界に存在する村を村長との契約でその村に住むというもの。

・小屋型…まさしくそのまま小屋を建ててそこを拠点にする。

・町型…村同様町の町長との契約で住むというもの。

・都市型…周りを大きな壁に囲まれていて、契約などなしに住民票さえ登録すれ簡単に住める。

・要塞型…今確認されている拠点の中で最大級の大きさを誇る。詳細は現在不明。


 歩くこと14分ほど町を囲む大きな壁が見えてきた。この壁は戦乙女の天使による攻撃防ぐものである。 

 「3日ぶりに『ショチケツアル』に帰ってこれた」

 『ショチケツアル』その都市の名は花、肥沃、ゲーム、ダンス、農業、職人、売春婦、および妊婦の女神という意味をもち現在確認されている都市では最大級とされる。勿論ここにも何人かの戦乙女はいるが街中や都市周辺などでは基本は戦わないという暗黙のルールが存在する。

 町や村都市などの拠点では様々なBGMが流れている。しかしどこから流れているかは不明である。

 「りーんなー」

 町に入るとすぐに遠くから声が聞こえてきた。声の主は神崎由衣。りんな同様戦乙女である。

 「あっ。由衣、久しぶり」

 「久しぶりじゃないでしょ!りんな3日間何処ほっつき歩いてたのよ!」

 都市の入り口に待ち構えていたのはりんなの保護者にちかい親友。髪の毛は短め(ナチュナルワンカールボブ)でthe委員長というオーラを放っている。髪色、瞳はどちらも赤く身長はりんなより少し高いくらい

 「いやぁあごめんごめん。」

 「まったく、で何処ほっつき歩いてたの?」

 「話が長くなるから家でね」

 すると由衣が大きなため息を一つつき

 「わかったわよ。こんなとこでいつまでも立ち話ってわけにはいかないしね」

 少し不満げな顔で先を歩く由衣についていきながらりんなはこの場からどう逃げるかを真剣に考えていた。


 「はああああ。久方ぶりの我が家だよ」

 家に入るなり目の前のソファーめがけてダイブする。

 「ちょっとおとなしくしなさいよ。それで、長くても何でもいいから一から順を追て話して。」

 「えー、めんどくさい」

 「あんたがいなかったのがいけないんでしょ」

 「うっ わ、わかったよ」

 「わかればよろしい。」

 「まず3日前に 由衣と別れてその後一人で周辺の探索をしてたら・・・」


 「ああ、少し暗くなってきたな。今から帰ったら絶対遅すぎだって由衣にどやされる」

 暗くなりかけた廃墟を見回して周囲に誰もいないことが確認すると

 「神装、『ヴァルキリー』」

 瞬間りんなの体は霧に包まれたかと思ったらそこには神装『ヴァルキリー』をまとったりんなが立っていた。

 「よし。飛んで帰るか」

 四枚の翼を大きく広げて。片足でトンッと地面を蹴ると一気にはるか上空に飛び上がる。

 「ここから『ショチケツアル』まで飛んで15分弱ってとこかな」

 空を思いっきり蹴り飛ばし翼を一回羽ばたかせ一気に加速する。

 「ん、何あれ?」

 りんなが左側を向くと山脈の間から何か光ったと思ったとたん。無数の弾丸がりんな目がけて襲い掛かる。

 「ちっ」

 防御魔法を展開して回転しながら左右上下に揺れながら弾丸を飛ばしてきた山脈に突っ込んでいく。

 元の世界で一度も飛行技術に触れたことのないりんなは経験からこのような行動をとった。

 しかし、相手のほうが一枚上手だった。その動きをよんだ相手はりんなの動く先に弾丸を飛ばす。一気に集中砲火を受けて防御魔法も貫通し弾丸に直撃。地面、めがけてまっしぐらに落ちていく。

 「さーて、撃ち落とされた可愛い子ちゃんを見に行こうかね♡」

 ドスンという音を立て地面に落下。生身の人間なら即死。

 「いっつー。途中から集中的に打たれて前が見えなかった。敵は『固定砲台』?」

 少し考え今の考えを破棄する。

 「いや、あの『エリス』がこんな辺境にいるとは思えない」

 なぜりんながそんなことを断言できるのか述べると、前日ここよりさらに遠くに進行しているというのを『情報屋』から聞いているからである。

 「あいつでないとするといったい・・・」

 「あったしよ~♡」

 一際変わったしゃべり方をしたお姉さんという雰囲気の戦乙女が現れた。髪の毛は艶のあるグラマラスなカールをつけたヘアスタイル(ツヤグラカール)で髪色は暗めのオレンジ色、瞳は右と左で色が違うオッドアイ。右が黒く、左が青い。神装はテカリの強いバイクに乗っている人が着ていそうな見た目をしている。

 「あーんもう、そんなに身構えないでよ~♡」

 「確かあなたは・・・『変態マリア』!」

 「んっもう。そうやって呼ばないでよ。ちゃんと『聖母マリア』って呼んで」

 りんなより昔にこの世界に来て、そして女性ばかり多いこの世界にただ一人喜びを覚えた人物。その行動や言動から満場一致で変態と呼ばれている。

 「何が目的?早く帰りたいんだけど。正直あなたを相手にするほどバカではないよ」

 「んん、連れないわね。確かあなたと会うのは二回目?かしらえっと稲上りんなちゃん♡」

 「名前でよぶなぁ!」

 「んもう。可愛んだからぁ。」

 くそう。なんであの時本名こいつにばらしちゃったかな。そんであいつの名前は私も知らないし。あの『情報屋』でさえ知らない。

 「それでぇ、目的がしりたいのよねぇ?」

 「え、ええ、そうよ」

 「あなたの、か・ら・だ♡」

 「なっ!?」

 「ふふふ。冗談よ。目的、そうねぇ」

 顎に手を当て少し考え込んでから口を開いて何か言おうとした途端すぐに口を閉じる。

 その様子を見てりんなは少し不安げな表情を浮かべる。

 「私の天聖って知ってる?」

 「いや、一度も見たことがない」

 名前すら知らないしこれで会ったのも二度目だ知るわけがない。そもそも『情報屋』が知らない情報を知っているわけがない。

 『聖母マリア』の情報はまったくもってなさ過ぎて高額で取引されている。

 「見せてあげようか?私の天聖」

 「え、今何て」

 「だからぁ。あなたに特別に見せてあげるよ」

 「なんで私なんかに」

 「その代わりといってはなんだけどね」

 「見返りって事?」

 すると『聖母マリア』は笑顔で「そうよ」と答えた。

 「なにを要求する気?」

 「とりあえず今はいいわ。その要求は今度会ったときにもらうとするわ」

 「今度?」

 「ねぇ。不思議だと思わない?」

 「何が?」

 いきなりの話題の変化に戸惑いつつ言葉を返す。

 「まだ、誰一人として死んでいないなんて」

 一瞬言葉の意味を理解できなかった。

 「つまり何が言いたいの」

 「何者かによってすべてが仕組まれて動いている。そしてまだ役者がそろっていないのよ」

 その言葉とともにあたりに緊張が走る。

 「役者って」

 「はい。この話はおしまい。さて、私の天聖を見せてあげる」

 「ちょっと」

 「天聖、『マジック バレット』」

 瞬間『聖母マリア』の後ろに四つの巨大な魔方陣が出現した。

 「これがあんたの天聖」

 「じゃああなたが生きていたらまた会いましょう」

 その言葉が終わるとともに魔方陣から無数の弾丸が放たれる。

 「がはっ」

 魔方陣から放たれて弾丸に3m程の距離で被弾しそのまま反動で後ろに大きく飛ばされる。

 叫び声すら上げる暇なく爆風ではるかかなたまで飛ばされる。


 5分ほど空を飛ばされて体制を立て直す暇もなく地面に叩きつけられる。

 「がはっ!げほっげほっ」

 せき込みながらなんとか立ち上がりあたりを見舞わす地面に強く落ちた衝撃で神装は解除されたようだ。

 「・・・生きている」

 あんだけの天聖による攻撃で生きているという事に驚きつつ先ほどの『聖母マリア』の言葉が気になっていた。

 「何者かによって仕組まれている・・・か」

 りんながあたりを見回してここがどこなのか考えていると今自分が飛ばされてきた方角から誰か一人歩いてきた。距離的に誰かまでは分からないが拠点外である以上緊張は緩めない。

 「ん、あれは・・・」

 「おーい」

 こちらから声をかける前に向こう側から声をかけられる。

 「この声、『情報屋』だ」

 声の主がわかりりんなも「おーい」と返す。

 「いやぁ、稲上君らしき人影が空を飛ばされていったから気になってね」

 「えっと確か1週間ぶりくらいでしたっけ?」

 「うん。そんなとこかな」

 そんなことを言いながら『情報屋』こと桐谷花梨。たった数分前の事さえすぐに調べ上げて情報として取り扱うほどにまさに『情報屋』という肩書通りの早業だ。

 髪型は肩まで伸びていて全体的にふわっとした感じ(ソフトウルフ)である。髪色は明るめの金髪で瞳の色は黄色、表裏のない性格をしている。

 「にしてもどうしたらあんなに飛ばされていくのかね」

 「ん、それは『変態マリア』にやられて」

 「もしかしてそれってあのマリアの天聖を見たって事かい!」

 いきなり大声をあげられて「ひぅ」と拍子抜けな声を上げる。

 「あ、うん」

 「ああ。ごめんね。とんでもない情報に心躍ってね・・・それでどんな名前のどんな天聖なんだい」

 「えと、天聖の名前が確か『マジックバレット』でなんか本人の周りに魔方陣みたいなのを展開させてそこから通常の魔法弾をつっても威力は普通のよりは結構高くてその攻撃を受けてここまで飛ばされてきた訳で。」

 「『マジックバレット』・・・魔法弾って意味か」

 「あのさ」

 「なんだい?とんでも情報のお礼に稲上君には5個までどんな情報でも教えるよ」

 「え、あうん。えっとここから『ショチケツアル』なでどのくらいか聞こうと思ったんだけど」

 と少し戸惑いながらこれで一つ分の情報だったらどうしようなどと考えながら聞いてみた。

 「ああそんな事か、その件は情報というカテゴリーに属さないから別として教えるよ」

 「あ、ありがとう」

 「どういたしまして。それでここから稲上君の拠点までの所要時間だね」

 すると桐谷花梨こと『情報屋』は腰から下げていたカバンの中から懐中時計を取り出すと磁場時の間明日の空のほうを見つめながらぶつぶつとなにやらつぶやき始める。

 「・・・。よし」

 一声挙げてから懐中時計を再びカバンに戻す。

 「ここから君の拠点までにかかる時間は徒歩で4日、神装を使って1日くらいかな」

 「よしじゃあ神装を使って飛んでいくね」

 「待って。それはやめときな」

 りんなが神装を使おうとすると花梨が慌てて止める。

 「え、どうして」

 「今言ったのはあくまで最短ルート。それで何故神装を使うなと言うとだね。奴に見つかるからだよ」

 「やつって?誰」

 「『固定砲台』さんだよ。今あいつはここよりさらに先つまり稲上君の拠点とは正反対の場所に位置する要塞型拠点。名を『月宮殿』」

 「『月宮殿』?」

 「そう。現段階で最も最悪と言われし場所。だから最短ルートを使うなら歩いていくことを進めるよ」

 「わかった。ありがとう!またね・・・『情報屋』さん?」

 「ははは。花梨でいいよ。それとも桐谷って呼ぶ?」

 「ううん。花梨でいいや」

 「あいよ。じゃね稲上君」

 再びあいさつを交わしてその場を後にする。


 「そんでその後に『固定砲台』と出くわしてなんとか戦線離脱して帰ってきたって訳」

 「うう。そんなことがあったのに強く言った自分が情けないよ」

 いつものりんなだったらこの状態の由衣に無理強いをするとこだけど今回は結構心配かけたと思っているので反省はしている。


 そんな騒動から2日後。

 「この辺かな?」

 「たぶんここですよ」

 「あれじゃない」

 「あ。あれですね」

 他人から見たらまったく意味の解らないことを言っているようにしか見えないこの光景。

 今日二人は自分たちの拠点の近くでまた新たに戦乙女が異世界入りしたからである。

 「砂埃がひどいなあ。視界も悪いし」

 「何があるかわからないので慎重に行きますよ」

 「わかってるって」

 「そんなんだとまた何かやらかしますよ。ただでさえ面倒ごとに巻き込まれやすいのに」

 「うっ」

 否定はできないけど余り言ってほしくなかったと心の中でりんなが返す。

 「・・・誰だ?」

 突然砂煙の向こう側から声をかけられ二人同時に驚き不思議な安心感に覆われる。

 「えっとはじめまして。敵対するつもりはないのでこちらまで来てもらえませんか?」

 由衣が先にいまだ姿が見えぬ相手に声をかける。

 「敵対しないだと?ふん。冗談も休み休み言え戯けが!」

 「冗談ではないんだけど。本当に私も由衣もあなたと敵対するつもりはないし。出来るなら仲間になれないかな・・・なんてははは」

 何とか相手をなだめようと試みるが今にも相手の威圧で倒れそうだ。

 二人はたぶん今同じことを思っているだろう。こいつはやばい。今まであったやつの中で一番敵に回したくないやつと・・・。

 確かに二人とも今までにやばい奴らと会ってきたがこいつは完全に他とは違う。

 まるで簡単に人なんか殺せるという風な。

 「貴様らに敵対心がなくても我は貴様らと戯れる気は毛頭ないのだ。去れ!去らぬのならここで消す」

 「・・・!」

 一生のうちに殺気なんか味わう機会なんてないだろう。

 相手の放った「消す」というたった二文字の言葉でりんなは声が出なくなり体が金縛りにあったかのように全く動かなくなる。由衣もりんな同様に口をパクパクさせるだけだ。

 「無言というのは死を望むという事でいいのだな」

 相手は静かに言い放つ。

 「貴様らも戦乙女とうやらなのだろう。腑抜けが力を持つと自分が強くなったという錯覚を覚えるからな。ここで消してやるのが我のためであり貴様らのためになるだろう」

 「・・・ぁ。あ」

 りんなは恐怖心の中いまだ体は動かぬものの何とか声を出す。

 「私は死ねない」

 「ほう」

 その一言にとてつもない威圧を覚える。

 相手の顔さえまだ見えないが多分正面向き合ったら完全に逃げられないだろう。

 「神装『ヴァルキリー』」

 どちらにせよすでに後に引けないことを悟ったりんなは神装を展開する。

 りんなの周りに突風が吹き今まであたりを包んでた砂煙が一瞬にして吹き飛ぶ。

 「わ、私もいますよ。神装『ルキナ』」

 りんなだけに頑張らせたくないという気持ちで由衣も恐怖心を抑え神装を展開させる

 その姿は白い学生服に近い軍服に身を包みその丈のなさは膝程ある。

 そして『雷帝』という二つ名の象徴である雷を体中を駆け巡っている。

 神装をまとった二人の前に立っているののは神装をまとい腰まで長い髪をひとまとめにしている(ポニーテール)そして透き通るような青い髪色に光の見えない瞳。悪魔の様な神装をまとい右手に自分の背丈ほどある大剣を握っている。

 「『ヴァルキリー』と『ルキナ』か・・・。我の神装の名を『ヘル』。そして我が天聖の名を『ベルフェゴール』」

 「ご丁寧にあいさつありがとう。天聖『ジブリール』」

 「りんな。あなたそれは感謝ではにですよね。天聖『ゼルエル』」

 りんなの手には光り輝く剣が、由衣の手には柄が羽根の形をし刀身がギザギザのダガーが展開される

 「貴様らに戦う前に一つ言っておこう。戦う前に言えと言われたからな」

 「言えと言われたとはどういう事でしょうか」

 「貴様らが知ったことでどうこうなる話ではない。そして貴様らの意見なんて知ったことではない」

 「ならとっとと内容を言えよ」

 「勝手なやつらめ。して伝える内容だが、「数はとりあえずはそろった。全戦乙女の力のセーフティを外させてもらいました。本当ゲームはこれからです」だと」

 「は?」

 「え?」

 二人がそれぞれ声をあげる。

 「伝えることは伝えた。では行くぞ!」

 掛け声とともに一気に距離を詰めてくる。


 「ふふふ。さあ。始まってしまいましたの。本当の戦いが。戦乙女同士が戦ったら必ず何方かが死ぬ。まぁ特例もございますがね。さぁ皆さん。沢山殺して殺されて。この世界により多くの死体の山を作ってくださいまし。最後の一人になるその時まで。その日まで。今日仲間でった者が明日も仲間であるという保証はどこにもございませんわ。昨日までそこにいたものが今日はいないなんて不思議ではありませんわ。

さぁ———戦争の始まりですわよ」


・現在の戦乙女の数  115体

・死亡戦乙女の数    0体

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