侯爵家生活
侯爵家の再興披露パーティーも無事に終わり
新しい日常が始まった。
朝目覚めて、着替え、アルスの様子を見てから、シリウスと三人で朝食。
ダリルさんが出かけたら、メリダさんと今日の献立を確認。
シリウスと遊んだり、書庫でラトゥール侯爵家の来歴を書いた本を読んだりして午前中を過ごし、アルスが起きていたら一緒に、ダリルさんの帰宅を迎える。
軽く昼食をとり、午後は他に用事がなければ書斎で魔術の本を読んだり、またシリウスと遊んだりして過ごす。
来客がある時は、お茶やお菓子でおもてなしをする。
これは苦手分野だけど頑張る。
三ヶ月くらい頑張って、ダリルさんが仕事の休みの日、朝食後部屋に戻るとダリルさんが着替え始めた。
「ライラも着替えろよ」
冒険者装備だ
「うん、着替える」
「バルコニーから転移できるか?」
「広いから、大丈夫だと思うよ」
「マルノー領地で狩りだ」
「はいはい、行きますよ」
ラトゥール侯爵夫妻早くもとんずら…
冒険者ギルドマルノー支部に転移。
依頼板をざっと見て、適当な依頼を受ける。
目的の魔の森までまた転移。
「久しぶりだなあ、やっぱり冒険者稼業はやめられない」
「転移も久しぶりだね」
「何ヶ月我慢したか…」
「意外と我慢してたね」
「よおし、行くぞ」
「おおー」
勢いよく、狩りを始める二人。
夢中で狩りや採取を続け、昼食は森の中、障壁柱も久しぶりの登場。
魔法の袋には、何かしら食べ物や飲み物が入っている。
休憩を終えたらまた、狩りを続ける。
今日の獲物は牛の魔物。肉が美味しく、角や内臓は薬になる。
森の結構奥まで入り、獲物を見つけた。
二体いる。
「一体ずつにするか」
「じゃあ、私は右ね」
ダリルさんは補助魔法を使いながら、獲物に向かう。
私も久しぶりに、障壁を出して、魔力弾を撃つ。
あまり時間もかからず、仕留めて魔法の袋に仕舞う。
その後は狩りや採取を楽しみながら、森の外に撤退する。
気になっていた砂糖キビの場所を見に行き、
刈れるものは刈り取り、マルノー領地の街に転移。
ギルドと商店に行き、とりあえず満足する。
せっかく来たから、マルノー領地屋敷に顔を出すと、父様は呆れてたけど、父様とアメリア母様を連れて、侯爵屋敷のバルコニーに転移。
シリウスとアルスに会わせて、遊んでいたらダリルさんは、タラントさんに連れて行かれた。勿論着替えも要求されて。
アメリア母様は、初めての侯爵屋敷。
私も着替えて、応接室に父様とアメリア母様を連れて行き、お茶とお菓子が出され、歓談する。
帰りは庭から転移して父様たちを送り、庭に戻る。
そして、私たちはタラントさんやメリダさんからお小言を頂戴する。
「黙ってお出かけはいけませんね」
「冒険に行かれるなら、なお更にです」
「悪かった…」
「すみません…」
余程の用事がないかぎり、冒険者をとめるつもりはないから、ちゃんと言うようにと…
確かに黙って出かけたのはいけないよね。
ダリルさんと二人で子供みたいな気分で叱られた。
夕食までシリウスと遊んで、黙って出かけたことを反省する。
でも、冒険に行く許可はされたわけだ。
冒険者ができるなら、魔術学院も復帰しても大丈夫かなと、ダリルさんと話して、メリダさんやリッターさんタラントさんの許可を得る。
毎日ではなく、用事のない日に、朝のうちに献立の確認を済ませ、アルスとシリウスに行ってきますの挨拶をして、魔術学院に転移する。
講義を取りなおし、教科書を買う。
研究室に久しぶりに顔を出し、みんなに会う
アルスが一歳にならないうちに復帰したのでマリアナさんは心配してくれた。
子供の世話をする人が増えたから大丈夫と、説明した。
図書館にも行って、読みたい本を探す。
繰り返し読みたい本が見つかれば、本屋で探して購入してもいい。
魔術学院のまったりした雰囲気を味わい、
屋敷に帰る。
少しずつダリルさんも私も自分のペースを見つけていけばいい。
侯爵家での仕事で大変だなあと思うことは、
お付き合い関係だ。
披露パーティーの後も、お祝いの書状を頂いた方には、返礼の手紙を出した。
執政のタラントさんが、素晴らしく細々とした、縁のある家のお祝い事を把握していて、
ダリルさんが確認して、お祝いの品や金額を決める。
手紙やお祝いの品を手配するのは私の仕事だ
メリダさんに相談して、手配する。
まだお祝いに呼ばれることはないが、そのうちあるだろう。憂鬱だ。
セシリア母様が、忙しそうだったのは、それだけ縁のある家が多いということかと思う。
今はまだ、侯爵家にしては、あまりお付き合いの多い方ではなさそうだ。
でも、新生ラトゥール侯爵家は王家とも関係がある。
縁を結ぼうと、書状や、当主との面会を望む貴族は多いそうだ。タラントさんが整理してダリルさんが、返事や会うかどうかを決めている。
中には、やはり側室の話もあり、断るのにも苦労しているようだ。
王家と関係があり、これから付き合いを広げていく侯爵家だ。狙われるよね。
ダリルさんが逃げ出すのも分かるな。
なので、時々冒険者をする。
ちゃんと許可を得て。
冒険者でも、王宮に仕事に行く時も、屋敷で仕事をしていても、ダリルさんは変わらないように見える。
シリウスとアルスの父さんで、私のパートナーだ。
アルスを抱き上げて笑い、シリウスと遊んで笑い、私も一緒に笑う。
ダリルさんとなら、何でもできそうな、何処にでも行けそうな気がしてくる。
まあ、今でも、ライラの人生遠い所まで来たな…とは思う。
シリウスは三歳、アルスは一歳にもならないから、まだ先は長いけど、ぼちぼちやって行こう。
屋敷の魔道具に魔力を込めながら、そんなことを考えていた。
魔道具の数もさすがに多い。
灯り、時計は、一箇所の配電盤みたいな所の
大きな魔石に魔力を注ぐ。
冷蔵庫は大きい。魔石も大きい。
洗濯機は大きいし、五台もある。
私たち夫婦は二人共、魔力がある。
けど…、ふと思いついた。
お抱え魔導師…雇うのが普通なんでは?
ダリルさんに聞いてみた
「ねえ、魔導師を雇ったりしないの?」
「雇う予定だ」
「あっそう…なんだ」
「デリック導師にお願いしてあるんだが…」
「だが?」
「ライラ以上の魔導師が…なかなかいない」
「…え…普通に、人柄の良い人ならいいでしょう?私の魔力量関係あるの?」
「お抱え魔導師は、護衛も兼ねるからな。大体当主夫婦が魔力持ちなんて、ほとんどあり得ない…」
「…そうなんだ」
「まあ、人柄の良くない魔導師なんか、デリック導師が推薦しないだろう」
「そうね…まあ、中級以上の魔力の人なら別に文句もないからね」
「ああ。デリック導師に言っておくよ」
私の魔力量は…まだ限界がきていない。
そんなこと言ってたら、誰も雇えないよ。
そう言いながらも、ラトゥール侯爵家お抱え魔導師は、なかなか決まらないらしく、魔術学院に通い、侯爵家の仕事をこなしながら、
日々は過ぎてゆく。