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侯爵家へ

二人の子供に恵まれ、この家も何だか狭くなってきたなあと思い始めた頃、

執事のリッターさんが、体裁を整えた侯爵家の屋敷に移り住むことになった。


ラトゥール侯爵家の家臣たちと、先に仕事を始めるというわけだ。


寒くなる頃には、メリダさんもメイド頭として屋敷に移り、メイドさんたちの指導をする予定だそうだ。

通いのメイドのマリアさんも、屋敷に住み込みになる。


その辺りで、ダリルさんが国王陛下から、正式にラトゥール侯爵家再興を認められる。


…で、私は…?

正式な礼儀作法とか…習うべきでは?


「ダリルさん…私は何かすることは?」

「いや、別に…必要な物とか持って行きたい物があるなら、魔法の袋もあるだろう」

「…あ、うん。いや…このままでいいの?」

「この家はとりあえず売らないつもりだ」

「あ…そうなんだ…」

「着る物とかなら準備させてるぞ」

「…そうじゃなくて…えっと…私貴族学校にも行ってないし…礼儀作法とか…」

「そんなの、そのうちメリダが教えてくれるさ…大体俺が当主だぞ…ハハッ」

「そんな…気軽な…私は子爵家の娘だけど妾腹だし…そうだ!側室とかって話になったら確か…格上の人なら私が側室になるんだ」

「はあ?あのなあ…俺はライラと結婚したから侯爵になるんだぞ」

「うん…でも、貴族って色々あるでしょ?」

「側室とか無いからな。ベルナール侯爵も奥さんひとりだけだぞ」


そうなんだ…デリック導師…


しかし…不安はあるなあ


「国王陛下の謁見は俺だけでいいし…その後は、披露パーティーくらいかな」

「ぶっふ…」

お茶が…鼻に…

「その辺もメリダがよく分かってるからな」

「パーティーって…私は…何を?」

「俺と一緒に挨拶しときゃいい」

「その…挨拶が…」

「ライラ?おまえ、前に国王陛下とちゃんと挨拶してたじゃないか?あれくらいできりゃいいだろ」

あれは…立場が…

「ダリルさんって…凄く大物に見えてきた」

「何言ってるんだよ…まあ、まずは屋敷に入ったら、家臣たちに紹介するから、大丈夫だ。信頼できる人たちだから、何でも相談しながらやればいい」


そうですか…って、いや、大丈夫なの?

ダリルさんの奥さんやってるけど、侯爵家だよ…イリス姉さんの結婚の時にデリック導師の侯爵屋敷に行ったけど、パーティー会場の広間と庭だけでも広かった。


家臣とかメイドさんとか、どれだけいるのかすら不安だよ。



悩みつつも…とりあえず子育てに忙しい。

セシリア母様にはお辞儀のし方くらいは教えて貰うか…


家事や子供たちの世話をしながら、メリダさんにも色々聞いてみる


「ライラ様なら大丈夫ですよ」

いや、その大丈夫な根拠が知りたい…

「子爵家のセシリア母様は、とても忙しそうにしています…私はその内容も知りません」

「そうですね…私が申し上げるのも何ですけど、侯爵家は上には公爵様と王族の方しかいらっしゃいません」

「確かに…そうですね」

「ですから、縁のある貴族の方は階級で言えば下の方が多くなります。後は家臣や使用人に慕われる方かどうか…」

「そうです…ね」

「ダリル様がリッターや私をこの家に連れて来られたのは大丈夫だとお考えになってのことです。私たちもライラ様なら…と思っておりますよ」

「メリダさん…」

「悩まれることはありません。ダリル様とお二人で、新たなラトゥール家を作るのですから」


そんな風に言われてしまうと…

でも、そうだよね。ダリルさんと家庭を作り守る。それは変わらないわけだ。



アルスの首がすわり、日々子供たちの成長を感じながら、今のうちにと時々冒険にも出かけ、あまり悩まないように過ごす。


ルシウスを領地屋敷に送ったり、父様やアメリア母様を連れて来たりはしている。

勿論領地のフルーツもちゃっかり採取して、

溜め込んでいたりする。


魔法の袋の中…結構色々入れっぱなしだ。

鞄の中を整理できない人は…頭が良くないんだっけ?マズいかも。

一応整理…って、取り出すか入れるしかできないんだった。リスト作る?


魔法の袋一号には本当に色んな物が入っている。二号は獲物が主だ。

一号はシリウスが触ると危ない物もありそうだ。またそのうちにしよう。


そんな感じで過ごすうちに、寒い季節になり始めた。

メリダさんとマリアさんが屋敷に移る。


暫く、普通に夫婦二人で家事や子供たちの世話をする。ダリルさんは頻繁に侯爵屋敷に出かけ、そろそろかなあと思っていたら、ある日正装して、王家のではない紋章付きの馬車が来て、多分謁見に行った。


帰って来てから聞いてみたら、今日から正式にラトゥール侯爵になったらしい。


「お疲れ様…旦那様…かな?」

「疲れたなあ…旦那様はやめてくれ…」

「ふふ…で?ラトゥール侯爵家は執政でしょう?何か政治的な仕事をするの?」

「執政も色々ある…聞いて驚け。俺は冒険者ギルド担当だ!」

「おおー国王陛下も考えていらっしゃる」

「これなら、ギルドの視察で冒険者できるわけだ。勿論ライラも一緒にな」

「そんな感じでいいの?」

「そうしてやるさ」


…ダリルさんがいいならそんなものか?


屋敷に移るのは一週間後で、パーティーは年が明けてから…の予定らしい。

一週間を親子四人で普通に過ごす。


「シリウス、大きなお家に住むぞ」

「おっきなおうち?」

「そうだ。本も一杯ある」

「わぁい、いっぱいだあ」

「お庭も広いから遊べるぞ」

「おっきなおにわ?」

「メリダさんもリッターさんもいる」

「あそんでくれる?」

「遊んでくれる人も一杯いるぞ」

「いっぱいあそぶー」


子供の順応力に期待しよう…



一週間はすぐに過ぎて、いよいよ…

引っ越しの朝。

ラトゥール侯爵家の馬車が迎えに来た。


服装は、事前に届けられた服を、シリウスにも着せて、私も着替える。

思ったほど派手で窮屈な服ではなく、仕立ての良いブラウスに長いスカートにブローチを付けるくらい。


ダリルさんも仕立ては良いけど簡素な上着を着て、それまでの服は魔法の袋に入れる。


家に状態保存をかけて、アルスを抱っこして

馬車に乗る。


貴族街に向かう。男爵、子爵、伯爵、辺境伯爵家のある通りを過ぎて、侯爵家のある場所へ…デリック導師とはお隣さんではなかったけど、ご近所さんになるのかな?



到着した屋敷は…邸宅?

門番小屋がある。通り過ぎて、庭…手入れされた庭園が広がっている。

規模が違うよ…屋敷の玄関に馬車は止まる。


玄関の扉は大きな両開き。

扉が開けられ、ダリルさんはシリウスと手を繋ぎ、私はアルスを抱っこしたまま…


「旦那様、奥様、坊っちゃんたちもお待ちしておりました」

リッターさんがいる。

「旦那様、奥様、シリウス様アルス様…」

メリダさんもいる。


家臣や使用人の人たち…

広間の奥まで歩き、沢山の人たちと向かい合う。


「みんな、待たせたな。今日からラトゥール侯爵家の新たな始まりだ」

ダリルさんが声をかける。

「妻のライラ長男のシリウス次男のアルスだみんなよろしく頼む」

「皆さんよろしくお願いしますね」

とりあえず挨拶する。

「タラント…執政のタラントだ」

落ち着いた感じの人を紹介される。

「他の者たちは…まあ、おいおい慣れていくだろう。まずは披露パーティーの準備を、みんなで進める」

「畏まりました」

「奥様をお迎えして嬉しいかぎりです」

「奥様には後ほど料理人たちも紹介させて頂きますね」

タラントさんリッターさんメリダさんが、笑顔で応える。


その後は、まず主寝室に案内された。

広いし、お風呂もある。クローゼットは隠れんぼできそうだ。

寛ぐためにソファーセットも、ゆったり配置されている。


シリウスの部屋も、お風呂とクローゼット付きで、勉強用の机と椅子、ソファーとテーブルもある。


アルスの部屋は、赤ちゃん用に、床はふかふかの絨毯。ベビーベッドが置かれ、おもちゃ箱もある。


全て、紋章入り…


三階建ての屋敷の三階部分が居室と、とりあえずは客室…子供が増えたら居室になる。


二階は客室と、書庫、書斎…私のもあった。


広い一階は、広間を前面の中心に、応接室や執務室と、家臣の部屋がある場所。

ダイニングと厨房がある側には、メイド室がある。一階にも書庫があった…執務関係のものだろう。


迷子になりそうな気分だ。

シリウスが、本気で隠れんぼしたら見つけられないぞ。


庭園には、庭番小屋に、庭師がいるし、馬車も三台あって、馬車小屋、厩…

庭園はあちこちに四阿やベンチもある。


ダリルさんの案内で、シリウスと一緒に見て回り、お昼になったので、ダイニングへ行く


昼食は軽く食べるくらい。とても美味しい。

料理人さんたちの腕は確かだな。


メリダさんはメイド頭で、シリウスの世話係はマリアさん。

知っている人なので、シリウスも喜んだ。


アルスの世話は、シリルさんという、ベテランのメイドさんが主に担当して、私も勿論子供たちの世話はする。


今日私がすることは、夕食の献立を確認するくらいだった。

夕食はミヤビ料理なので、ダリルさんは本当にミヤビ料理人を雇ったようだ。


アルスの顔を見て、ちょっと疲れて眠くなったシリウスを寝かせて、ダリルさんと主寝室のソファーで休憩する。


「ふぅー…しかし広いね…」

「ハハ驚いたか?」

「やっぱり…驚かすつもりだったなあ」

「いいじゃないか…すぐ慣れるさ」

「慣れるまで…迷子になるよ」

「ハハまさか…そんなことないだろう」

「シリウスと隠れんぼしようかな」

「すぐ誰かに見つかるぞ」

「人も多いよね…ダリルさんの夢、これで叶うのかな?」

「これから一緒に…だな」

「そうね…ダリルさんと一緒なら…」

「明るくて楽しい家にする…頑張るぞ」

「私の夢も同じ。頑張るね」


場所や立場は今までと違うけど、一緒になら幸せを感じる家庭を作る…夢は変わらない。


夕食の時、改めて料理人さんたちを紹介された。五人もいる…ミヤビ料理人は二人。パーティーの時は、それぞれの料理人たちが知り合いを呼び、凄いことになりそうだ。


夕食後は、家臣や使用人たちが、交代で食事をするようなので、お茶とお菓子を持って主寝室で、シリウスとアルスも一緒に団欒。


落ち着いた頃に、アルスを寝かせて、シリウスにお休みと言ってマリアさんに任せて、ラトゥール侯爵家初日は終わった。






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