遺跡その後
弟のルシウスが貴族学校に入学し
私は普通科学校4年生になった
ルシウスは屋敷から通うので
セシリア母様は少しは
寂しくなくなったかなぁ
私は相変わらずの毎日で
放課後は図書館に
週末は狩りに出かけ
時々領地屋敷に転移して
父様に遺跡の調査状況を聞き
ダリルさんに報告する
たまに外食をする…ダリルさんも
付き合ってくれたりする
王都の安くて美味しい店を教えてもらい
冒険者話を聞いたりして…
4年生になってから
2ヶ月ほど過ぎた頃…デリック導師が
屋敷に来た…来週の休みの日
王宮に招かれていると…
「ああ…遺跡の件ですか?お疲れ様です」
「おい…何を言ってる?ライラもだ」
「……え?」
「……ダリルさんもだ」
「…………は?」
「で、彼はどこに居る?」
デリック導師とギルドに転移した
運良く…いや…ダリルさん的には…悪く?
ダリルさんは居た
デリック導師とダリルさん
話し合い中…
ダリルさんが王宮…
いや、なんか想像できない…ごめんなさい
デリック導師がダリルさんの肩を
ぽんっと叩いて戻ってくる
とりあえずギルドから出て
デリック導師を送る
すぐにギルドに戻り…
「ダリルさん…王宮…」
「ん…ああ…断るわけにもなぁ…」
「……行くんですか?」
「しょうが無いだろ…」
「……断れません…よね」
むむむ……
「来週…ライラの屋敷で待ってろだと」
「あ……そうですか…」
馬車か…あの紋章と護衛つきの…
いくら一度行った場所でも
王宮前に転移は…ないよなぁ…
「…S級依頼の方が…ましだな…」
「…確かに…」
「まぁ…週末の朝…マルノー屋敷に…
あ、ギルド前に迎えを頼むな…」
屋敷に帰る…と…
セシリア母様がすでに
マルノー家ご用達の服飾店の人と
待ち構えていた…
そうなりますよね…
念入りに採寸された
寄宿舎に早々に戻り食堂で夕食…
リーゼたちも一緒
「ライラ〜なんかあったの?」
「ん…あ〜…あった…」
「なになに?良いこと…なんか呆けてる
けど…」
「え〜と…あ、週末狩り行けないごめん」
王宮に遺跡発掘の件で…呼び出し食らっ…
招待されたことを話す
「ふぅん〜」
「へぇ〜」
意外とリアクションが薄い…が
寄宿舎に戻ると
「ライラの部屋行ったことないわね」
「ちょっとお邪魔して話そうか」
「え?いいけど…」
そう言えば個室なのに誰も来たこと
ないな…
はい、どうぞと…
お茶とお菓子を出して…
「で…最近…どうなの?」
「え?いつも通りでしょ?」
「遺跡発掘に…今度は王宮でしょう?
いつも通りじゃないよね」
「時々外食してるみたいだし…」
「あ〜最近付き合い悪いか…ごめん」
「「それはいいの!」」
「「ダリルさんと発掘ダリルさんと
外食ダリルさんと王宮!」」
「いや…それは…リーゼとメリッサこそ
…休暇中平日もお店に居なかったし…
そっちこそ…どうなの?」
反論する…が…
「「順調に決まってるよ!」」
堂々たるお返事…
「ライラ海水浴のあととか…不審だったよ」
「そうだよ…友達なのに…」
「「話してくれてもいいでしょ!」」
………洗いざらい聞き出されました…
「「いい感じかも〜」」
「でも!おでこ…に…子供扱いだよ〜」
「誘ったら食事行くんでしょ」
「保護者…的な感じかも…」
「そこで王宮でしょ」
「マルノー子爵令嬢な姿で…」
「もうひと押し!」
ダリルさんはそういうの…興味ない…かも
冒険者してる時の方が…楽しそう…
「私たちは気にしないで」
「そうそうダリルさんと冒険して…」
「応援するからねっ!」
応援されちゃった…
でもガールズトークは悪くないかも…
お茶を飲んでお菓子をつまんで
ひやかしたりひやかされたり…
その日はちょっと寝不足だった…
それからは2人の生暖かい視線に
さらされながら…
週末がきた…きてしまった
早朝…ギルド前にダリルさんを
迎えに行く…普通の服で
「ダリルさんおはようございます」
うわ…無精ヒゲも剃って…正装な
ダリルさん…初めて見た
「ああ…よろしく頼む」
屋敷に転移して応援室に
海水浴のおかげで
セシリア母様も弟も親しげに
軽食をつまんでいる
私は部屋で…メイドさんたちに
囲まれた…
獲物に囲まれる方が…まだ…
今日のドレスは紺色を基調に
薄い青色までの濃淡のゴシック調?
レースやフリルも華やかに
髪も結い上げられ…お化粧まで…
例の勲章をつけられ
アクセサリーもセシリア母様の
見立てで…なすがままに…
歩きにくい靴を履いて
応接室に行く
セシリア母様は満足そう
弟は誰?的な感じだった
動き辛いし緊張で…少しだけ軽食を
つまんでお茶を飲む
ダリルさんが眩しそうな顔をしている
ので…なんだか恥ずかしい
そうするうちに
デリック導師が迎えに来て
あの馬車に乗り込む
歩きにくいのでダリルさんが
エスコートしてくれた
緩やかな馬車のなか
デリック導師が当たり障りのない話など
してくれながら
王宮の門を抜けついに王城へ
また案内役に先導され
2度目になる謁見の間に通される
デリック導師を前に私たちはその後に
跪く
「このような堅苦しい場に呼んだこと
あいすまぬ…みな楽にして良い」
と言われても…デリック導師の真似を
して顔をあげる
「先の遺跡については王国が暫く管理する
こととなったが…」
「仔細はこののちに大臣より聞くがよい」
その方が少し気が楽です
「ときに…ダリル•フォン•ラトゥール
侯爵…久しいな」
は?
「陛下…久しくありますが…その名は…」
「…捨てた…と申すか」
「恐れながら…ただ今は一介の冒険者にて」
「そなたなればそのように申すと思っては
おったが…」
話が…読めない…
「しかしラトゥール侯爵家は王家にて
預かっておる」
「…陛下…」
「いずれラトゥール侯爵家の再興…余は
待ち望んでおるぞ」
デリック導師…知ってたな…
「ライラ•フォン•マルノー…ベルナール
侯爵家以来だの」
「はい…その際はお声かけ頂き弟共々
ありがとうございます」
「マルノー子爵も良き子弟を持ちなにより
だの」
「デリックより話は聞いておるがなかなか
の働き…無理はせぬようにの」
「はい…ありがとうございます」
「では…別室にて大臣より仔細聞くが
よい…本日は大儀であった」
その後豪華な会議室といった所に案内され
座りにくいドレスだけど座った
王国と魔術ギルドの合同調査の結果
飛行船はもちろん、たくさんの魔道具を
王国が買い取り…莫大な金額を
マルノー子爵家にも…
そしてまた王家の紋章の縫い取りつきの
袋が…私の前に1つダリルさんに6つ
さらに魔導通信機が大量に発見された
…正確な数は秘匿…ので
マルノー子爵家当主…父様と
ダリルさんと私にも王家から貸与された
携帯電話を手に入れたような感じ
通信機にはそれぞれ固有の番号がある
王家では誰に貸与したか番号も
記録されていて陛下なら誰にでも
通信できる…しないと思うけど
貸与された者は知っている番号にしか
通信できないが、緊急連絡用なので
初期の携帯電話のように
あらかじめ短縮登録がされている
1番が陛下だ…
押すなよ絶対に押すなよ…
20番まで登録できるのでなかなかの
ものだ
2番に父様に渡す通信機の番号を登録
3番はダリルさん4番に導師
赤外線通信とかできないので
地味に登録する
ダリルさんの通信機にも私の番号を登録
してもらう…聞きたいことがあり過ぎる
魔導通信機なのでもちろん
はめ込まれた魔石に充電…魔力を
込めて使う
魔石の魔力が切れると…
いやぁ引き落としできなかったから
携帯止まってたわ…
…になる
とまあ…遺跡発掘の依頼は完全完了
遺跡自体の管理やその後のことは
王家とマルノー子爵家が行う
また豪勢な馬車で送られて
ダリルさんと屋敷に帰る…疲れた
普通の姿に戻りダリルさんをギルド前に
送り…聞きたいことがあるから
無理矢理夕食の約束をさせた
次は領地に転移して父様に
報告して通信機を渡す
1番だけは押すなよ…
王都屋敷に転移
昼食がまだだったので…軽く
夕食の約束があるから…おやつ程度に
疲れていたのでちょっと昼寝…
夕方…
あまり着てあげてない服たち…
子爵家の普段着相当の
少し娘らしい服…飾りの少ない
ワンピースのような服に
ショールを羽織り靴も革のブーツとは
違うワンピースに合わせたもの
要はお洒落してみたのだ…
腰には魔法の袋を提げてるけど
セシリア母様にはちゃんと
ダリルさんと食事して来ると
言ってある…特に何も言われなかった
ギルド前に転移…
ダリルさんと合流して…
「どこへ行きますか?」
「ん…ああ…まあ話しやすい店だな」
ちょっと高給そうな居酒屋?
個室に通される
料理のオーダーはダリルさんにお任せ
飲み物は私はもちろんジュース
「今日は…お疲れさん」
乾杯する
王家の紋章つきの袋の中身を思い出し
「本当に…疲れましたよ…報酬見て
余計に…ふぅ」
「ああ…そうだな…はは…ひと財産
できちまったからなあ…」
白金貨100枚入ってたもんね
屋敷がいくつ買えるか…
と…そんな話じゃなくて
「ダリルさん…あの陛下との会話…
驚きました…」
「ああ…やっぱりその話だろうな…」
「ダリルさんは冒険者の話はしてくれ
ますけど…身の上話は…しませんよね」
「ああ…そうだな…」
暫く沈黙…料理を食べて…飲み物を
ダリルさんもお酒じゃない
ちゃんと話してくれるつもりなのか…
「俺は…確かにラトゥール侯爵家の者
だった…15才までは…」
「…………」
口を挟まないで…話を待つ
「ラトゥール侯爵の3男だった」
「両親はなかなか子供ができなくて…
縁のある男爵家の娘を妾にした…まあ
よくある話だ」
「2人の男子が生まれた…兄たちだ」
「…………」
料理を食べ…沈黙…飲み物を飲み…待つ
「長男が貴族学校に入る頃…俺が生まれた
………」
そこまではありそうな話だ…
でもダリルさんは話すのを迷っている
ように見える
「ダリルさん…私はダリルさんを信頼して
尊敬しています…私に話したくないのなら
…悲しいです…けど無理にとは…」
真っ直ぐにダリルさんの水色の目を見る
視線が合った…
そして…話し始めた
年の離れた3男は両親も驚き喜んだ
本妻の子だった…魔法適性もあり
しかし両親は跡継ぎは妾腹の長男に
決めていた…そこは曲げてはならないと
普通に育てられ…兄たちが貴族学校を
卒業し成人しても、3男は冒険者に憧れる
剣や弓も使え魔法適性のある男の子…
7才から冒険者予備校に入り
我儘を言って寄宿舎生活を送った
冒険者学校に行きたいと言うとさすがに
許されず貴族学校に入る
寄宿舎生活は許されたので
休暇は冒険者ばかりして
屋敷にはほとんど帰らなかった
兄たちが結婚した時も冒険していた
両親は心配しながらも
要らぬ軋轢を避けるように
3男には好きにさせていた
しかし…事は動き始めた
屋敷に寄り付かない3男の知らないうちに
家臣や縁のある貴族たちが
学生ながら冒険者の名を上げていく
魔法適性もある
3男を跡継ぎにすべきだと…
お家騒動だ…魔術が使えるということは
それほどに大きく扱われる
ダリルさんは私の目を見る
私は頷く…魔法はチートだ
努力など寄せ付けない特殊能力だ…
また暫く料理に手をつけ
飲み物を注文する…
事件が起きた
長男1家が郊外に遊びに行った
普通の日常のある日…
盗賊団に襲われ知らせに走った
護衛の1人だけを残し皆殺し…
あり得ない話だ
侯爵家の護衛は訓練も受けた武人
魔術師も1人いたというのに
遊びに出かけた貴族が金品を
持ち歩くわけもないのに…盗賊団
王家からも厳しい査察が入り…
しかし捜査は難航した
両親は心を痛めた…病になるほどに
屋敷内は猜疑心に満ちていった
3男は両親の病の知らせで
屋敷に向かったが
屋敷内の空気が怖かった
自分が居るべきではないと
更に屋敷から遠ざかる…
そして…
飲み物を飲む…喉が渇く話だ…
貴族学校の最終学年になる休暇中
3男は王都から遠く旅をしながら
冒険者をしていた
屋敷で事件が起きたのも知らずに…
毒殺…無差別ともいえる…
大量毒殺だった
夕食に…使用人が食べる物にまで
毒が入れられた。非常に珍しい毒…
治癒も間に合わず…
王家の観察下での事件…
今度は犯人がわかり捕らえられた
次男派と3男派…戦争は歴史でしか
知らない平和な時代…
侯爵家を取り巻く貴族たちの
闇が明らかにされた…
取り潰された貴族家も多く
処罰、処刑も行われた
3男がそれを知ったのは休暇が
終わり王都に戻ったあとだった
両親の葬儀も何もかもすでに終わり
侯爵家は王家の預りになっていた
自分はいったい何をしていたのか…
何かできることがあったのではないか…
卒業まで悩み成人になって卒業した
王宮に呼ばれて侯爵家を再興するよう
言われたが…断った
ラトゥール侯爵家は血筋も良い家柄
陛下は…待つと…いずれその時が
自らの心に答えを出せる時がくるのを
待つと…
「俺は…俺を許せない」
自分が生まれ魔法適性を持ち
その存在が多くの人を不幸にした
つと立ち上がりダリルさんの横に座る
両腕を差し伸べて…
ダリルさんの頭をそっと抱きしめる
「ダリルさんのせいじゃありません」
私の肩に頭を預けるようにしながら
「わかってる…わかっているが…」
「人が生まれるのは星の数ほどのなかの
偶然です…親は子を選べず子も親を選べ
ません…」
「…そうだな」
「でも…生まれてくることに意味はあり
ます…あるんです」
店員さんが飲み物を持ってきた
眉ひとつ動かさない…プロだ…
「ライラは…凄いな…生まれる意味か…」
「ダリルさんが生まれてご両親は喜んだ
はずです…お兄さんたちやそのお母さん
も…決して憎んだりはしていなかったと
思います」
「ああ…小さい頃は…家が好きだった…」
「あなたの存在は周りを幸せにしていた
…それだけでも充分な意味なんです」
そう…前世…息子たちが生まれるたびに
幸せが増えた…長男はおっとりし過ぎて
友達がなかなかできなくて心配しても…
次男はやんちゃで怪我をすることが多くても…末っ子は………
「愛情って愛されるより愛する方が幸せ
だと思います…ただ…正しくというか…
相手に合った愛情の注ぎ方を…間違え
なければ…」
「誰かが…どこかで間違えた…と?」
「はい…愛情を受け取る方も…受け方を
間違えることもあります…と思います」
「俺は…受け取ろうとしなかった…」
「それに…家族だけではなく…貴族社会
のしがらみも…これはもう…ダリルさん
のせいではありません…」
「それは…わかっているが…」
ぐいっとダリルさんの頬を両手で挟み
目を合わせる
「わかってるなら…もっと自分を…
ちゃんと愛してあげてください…
亡くなった人たちのためにも…」
もう一度ぎゅっと抱きしめてから
席に戻る…あ…まあ…恥ずかしいです
ふぅとため息をついて
ダリルさんは料理を食べ始める
私もちゃんと食べる
うん…美味しいよ
ちょっとスッキリしたし…
ダリルさんがお酒を飲み始め…
「えっと…ちゃんと話してくれてありがとうございます…」
「ライラに隠し事ってのも…まあ…俺も
聞いてもらって…良かった」
ダリルさんは話す…
最初に会った時から大人みたいな感じが
した…と
まあ…そうなんだけどね
でも大人びた子供にありがちな不幸さ
を感じなかった…
王都で会った時も大人なのか子供なのか
よくわからない印象で…
そりゃそうだ…
でも…真っ直ぐに生きているのが眩しくて
しかも周りを楽しく面白いことに
巻き込んでいく…
だって…ねぇ、一回死んでるし…
周りの人を少しでも幸せにしたいのが
一番の夢だし…
それからはまた
発掘の時の話をしたり
ダリルさん危機一髪な冒険の話を
聞いたり…
店を出たらすっかり夜
ギルド前に転移して…
「ライラといると楽しいな…」
「私も…ダリルさんといると楽しいです」
「また一緒に冒険…行こうな」
「もちろんです…通信機あるから…
逃がしませんよぉ〜」
「うわ…通信機が…逃げられんな」
あはは…と笑いあい
そっと抱きしめられ…今度は…ちゃんと…
「お休み…ライラ…」
「お休みなさい…ダリルさん…」
屋敷に転移した…
冬になった…
「寒〜い」
「じゃあ今週は…マルノー領地行く?」
「そうね…暖かいし…獲物も多いし」
狩りの話だ
ダリルさんも誘うか…
あれ以来リーゼとメリッサは
時々寮の部屋へ来襲し
ガールズトークしたりしている
通信機の話をして陛下にもし間違えて
かけたら…というと
2人共想像して笑い転げた
魔導飛行船が王国に1隻増えたので
父様は陛下から
「マルノー領地に飛行船発着場を
早く造るように」
と言われているそうだ…
通信機で…
ちなみに父様の通信機の魔力補充は
私がこまめにしている
陛下からの通信…父様の顔が浮かぶな
私も笑い事じゃなくなりつつある
最初はデリック導師からの通信で
レナート領地に転移をお願いされ
発達著しいマルノー領地へ
送ってほしい貴族を紹介されて
転移…
通信機を持つような重要人物を
転移させるのは…普通…
魔術ギルドの人の仕事…のはず
…なのに2回目からは直接
重要人物ご本人から通信がきたり…
無線タクシーか…メーター付けるぞ
領地持ちの大貴族様たちは密かに
私を何か理由付けて
領地に招待したいらしい…
一度行ったら…だから
というのはデリック導師の冗談半分の話
そのうち貴族街の屋敷の前を
すべて覚えさせられるかも…
週末…約束通り
マルノー領地のギルドに飛ぶ
依頼板をざっと見て
最初に見つけたフルーツの森より
南東にある魔の森を目指す
ここは休暇中に飛翔して見つけた
他にもマルノー領地にはまだまだ
魔の森がある
いくつかは飛翔しておいたので
いつでも行ける
この森にはコーヒーの実とカカオの実が
ある…魔の森なので普通より大きい
嗜好品には欠かせない
魔物を狩りながら
実をどんどん採取してゆく
昼食はあの便利グッズ
障壁を張る柱を使えば安全に
ゆっくり食べられる
狩りと採取に飽きたら
冬の海に飛んで…冬の魚釣り
帰りはちょっと領地屋敷で
アメリア母様に会い
ギルドで買い取り
魚は商店で買い取ってもらう
みんな色々と手慣れて
最近は便利になった
まあ、刺激が少ないけど
大掛かりな冒険は休暇中しかできない
地道に依頼をこなして
ランクアップを目指す
週末の狩りの夜は
なんとなくダリルさんと食事する
ようになった
1週間を前世風に月曜から日曜と呼ぶと
月曜から金曜まで学校
金曜の夜屋敷に帰り土曜が狩りとデート
になる
姉さんたちがいた頃はなんとなく
日曜の夜は屋敷で食事をせず
寮に戻っていた
弟が来てからは日曜の夜も
屋敷で食事をして寮に戻るか
月曜の朝直接学校に飛ぶか…になった
姉さんたちに遠慮していたわけ
ではなく、学校が好きだからだ
今はもちろん学校も好きだし
図書館にも行きたい
でも…女の子がいないと
セシリア母様がちょっと寂しそうなので
弟もちゃんとセシリア母様に
甘えて我儘を言ってみたりして
「男の子は手が掛かるわねぇ」
と、セシリア母様も嬉しそうだけど
そんな感じで冬の間を過ごし
春が近くなってきた頃
土曜日のデートの時
「暫く王都を離れる」
「…えっ?」
「久しぶりにギルド本部の依頼で…南西に
行く…マルノー領地のように開発中の領地
の調査だ」
「そう…ですか…お仕事ですね…」
ダリルさんはA級冒険者だ…滅多に居ない
S級に届きそうな…でも…
「そんな心配そうな顔するな…」
そう…ダリルさんに心を惹かれる前なら
暫く見なくても遠出して活躍中かな〜
くらいに思っていた…
「そう…ですねダリルさんの腕前は一応
知ってますからね」
「まあ…どんな場所があるか、どんな物が
狩れて採取できるか…調査するだけだ」
何か面白い物や事があれば、良い土産話
になるさ…と
「通信機もあるし…な」
あ…そうか…緊急連絡用と思ってた…
けど…別に普通に長電話?とかできる
「そう…でした」
携帯持ってるようなモノだ
ディスプレイも電話帳機能もないから
誰から通信が入ったのかは応じるまで
わからないけどね
でも…もし一緒に行けたら…
休暇中なら…その日行った場所から
転移して…とか考えてしまう
「次の週末に出かけるからな…来週は
その…何回か食事しよう…な」
「そうですね…それは…嬉しいです」
なんか…乙女心?…くすぐられる…
ような…はあ
次の週は…旅の準備は?というくらい
毎日外食した…
明日の早朝の馬車で旅立つという日は
別れ際…ちょっとだけ長くハグして…
ダリルさんは旅に出た。