吐露
実・視点です。
「家、誰かいる?」
「いや、俺だけ。親父は昨日から海外出張で、母さんは隣町まで買い物」
「ふうん。まぁ、よかった」
そう言うと、悟は焦ったみたいだった。不自然に俺から目を逸らし、小さい声で、上がって、と言った。
「お邪魔します」
玄関から入ってすぐ右にある階段を悟の後に続いて上る。この先は悟の部屋だ。
「どうぞ……」
久しぶりに訪れた部屋は、まるで見たことのない別の場所のように感じられた。小さな窓から漏れる外の光が、部屋全体をふわっと包み込んでいる。男の部屋にしては整理整頓がしっかりされていて、悟の性格をよく表しているな、と改めて思った。
悟が部屋のドアを閉める。それを合図にして、俺は話し出すことにした。
「悟はさ、俺の好きな人知ってる?」
悟は今日のことを話すと思っていたのだろう。不思議そうな顔で首を横に振った。
「……知らない」
「だよね。俺、言ったことないし」
「……」
「俺、ずっと……、悟が好き」
今まで隠してきた想いを口にしたのは、今言わなければ一生言えないだろうと思ったからだった。今日、悟の家に来たのも、気持ちを伝える機会を逃したくなかったからだ。悟のことだから、きっと今日のことを気にし続けるに違いないし、そうなったら、俺たちの関係だってギクシャクするに決まっている。……本音を言えば、今なら俺への申し訳なさで断りにくいだろう、と思ったのもあった。
ドラマや映画の中では、より想いの強い奴が恋を実らせることができるかもしれない。しかし、現実は甘くない。ただ待っていても何も起きはしないのだ。俺は満足していない。好きな人の隣にいられるこの状況に、満足していない。だから、もっと。今以上に、あいつに近付きたいと思うから。
この話は、もう少し続きます。
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