魂の汚れ
村のエルローラの家で美しい白い髪の女性がにっこりと笑いながら私を撫でてくれる
「エルローラ!おいで!」
「おばあちゃん!」おばあちゃんと言う年齢には見えなくとても若い人に見えた
「よーしよしいい子ね!」
おばあちゃんは優しかった・・・誰よりも物知りで、誰よりも温かい人だった・・・
ある日私が家の屋根の修理を手伝おうと屋根に上ったけど落っこちてお母さんに怒鳴られた事があって泣き出して家出した事があった
私は夕方に泣きながら歩いているとどこからか優しい歌声が聞こえてくるおばあちゃんの歌だ
綺麗に澄んだ歌声で私はすぐに泣き止んだ
おばあちゃんの歌声は凄くて力があった、魔獣もその歌声に耳を傾け、心を落ち着かせおばあちゃんの手の中で狼もくつろいでいた
「おばあちゃん・・・」
狼は私を気付くやすぐに森へと逃げて行く
「あらあら・・・そんな酷い顔でどうしたの?」
「お母さんと喧嘩して家出てきた」
「あらま・・・駄目じゃない・・・」
「だって私・・・手伝おうと・・・」
「ママは貴方が心配で怒ったのよ、危ない事をしたら駄目って」
私はその時納得がいかず「ママ酷い・・・」
「そうねぇ・・・言い方はたくさんあったのに酷い言葉しかでなかったママもそうね・・・」
私はその時おばあちゃんが手にしていた黄色のマフラーを見た「おばあちゃんそれは?」
「これ?これは私が愛した人が残した物よ、あの人は・・・遠く、遠くへ行ってしまったから・・・」おばあちゃんは遠いで目で空を見る
「このマフラーには私の思いで全てが詰まっているの・・・彼と旅した事・・・彼と恋をした事・・・彼と子供を育んだ事・・・彼と・・・別れた事」
「どうして別れないと行けなかったの?」
「彼は・・・自分で決断したからよ」
「決断?決断って何?」
「エルローラにはまだ遠い話だわ・・・そうだ!さっきの歌教えてあげる・・・貴方が苦しい時辛い時・・・そんな時に貴方の助けになる歌・・・」
「名前は・・・竜の歌」
-------
「エ・・・ローラ!」
「ん・・・」
「エルローラ!!起きろ!」
「レ、レイヤール!おはよ・・・」
「ほらあの騎士が来るから早く行くぞ!」
「う、うん」
――――――
山登りを始めて俺はエルローラがさっきからおどおどしているのを見て
「どうした?」
「う、うん・・・昔の夢思い出して・・・」
「おばあちゃんの事か?」
「うん・・・私の歌、覚えてる?」
「ああ、あれは凄い物だった忘れる方が無理だ。澄んだ声に体が震えるようなあの凄い歌声・・・」
エルローラは照れながら「あれ実は・・・おばあちゃんの歌なんだ」
「おばあちゃんの?」
「うん・・・なんでも大昔になんどもこの歌に助けられたの・・・」
「そうか・・・俺もピンチになった時にでも歌ってもらうかな」
「や、やめてよ恥ずかしい」
「冗談だよ冗談!ハハハ!」
「もうレイヤールったら・・・」
そんな時エルローラは鼻歌であの歌を歌いだした
俺はそれに耳を傾けながら山を登り続けた、山はやがて高い木々が少なくなり、背丈の低い植物と岩が目立つようになってきた
「っと・・・雲の上辺りまで来たな!」
エルローラは雲海に感動して「凄い~!!雲の上だぁ!」
「エルローラしつこく聞くが体温は大丈夫そうか?」
「うん!自分で調節してる!」
俺も頷いて「さぁ、下山だ、下りれば広い草原が見てくるって話しだ」
そんな時だった
ギエエェェェェ!!
空高く響く鷲とライオンの咆哮を混ぜたよう声
「っ!!」空を見上げると、ライオンの体に大鷲の翼、そして鷲の頭
伝説で見たことあるグリフォンだった
「グリフォン!?どうしてこんなでかい魔獣が!?」
エルローラが杖を回して構え「炎の精霊よ!熱き魂を放て!!ファイアエクスプロージョン!!」
グリフォンの頭上に火球が形成されていく
「よし!!おぉぉぉらぁぁぁ!!」グリフォンの腹部へとぶん殴り怯ませる
「いまだエルローラ!!」
エルローラの魔法で大爆発してグリフォンは爆発に巻き込まれる
「ギェェェェ!!」
俺はすかさずガントレツトの腕を構え警戒する
「あの程度で死んだとも思えない警戒しろ!」
「うん!」
俺は辺りを見回すが運悪く雲が上へと上がってきて霧のような状態になり視界が悪い
「くそっ!!なんて最悪なタイミングだ!!奴はこれを待ってたのか!?」
そんな瞬間だった、俺の背中に激痛が走る
「っぐ!!」
背中が爪で引っかかれ血が出る
「っつ!!痛てぇ・・・」
「レイヤール!!っく!!」
このままじゃエルローラも俺の二の舞だ・・・
俺はエルローラに攻撃する瞬間が見えた
「させねぇぞゴラァァァァ!!」
拳で鷲の爪を叩き割ってやる
「ギェエ!!ギェェェ!!」
だが背中の傷が開いて血がドハドバ出てくる
「っぐ・・・」
「レイヤール・・・出血が・・・」
「構うな!!ドラゴンはこの程度で死にゃしねぇ!!警戒し続けろ!!」
エルローラは杖に何本もの魔法の矢を装填して辺りを構えて警戒する
空気が流れる音・・・「左から来るぞ!!エルローラ!!」
「っく!!」エルローラが炎を帯びた矢を放つ、だが当りはしたものの強引に飛びつく
「エルローラ!!」俺がエルローラの前に出て防御する
ガントレットで何とか防ぐが相手の爪の方が鋭くガントレットに食い込み血が垂れる
「くそ・・・鱗ですら貫通かよっ!!」
エルローラが後ろから「レイヤール!!離れて!!」
俺はグリフォンを殴って引き離すとエルローラが杖を構え
「雷の精霊よ・・・空を震わせ大地へ刻み込め!!ボルテージノヴァ!!」
空に雷が現れグリフォンに雷が落ちる
「ギェェェェェ!!」感電してビクビクして地面へと落ちる
俺は側を見ると俺はバックからファルコンの卵を取り出す
「へへっ!!ソウルチャージアタックができるように常備していたのさ!!」
卵を砕いて俺の翼から火が溢れ、俺腕が真っ赤に燃える
その瞬間俺のイヤリングのダイヤが輝き俺のガントレットが黄色く黄金に燃え上がる
「!!行ける!!力が湧きあがる!!行くぜ!!」
炎の腕で落ちたグリフォンに炎を叩き込む
「ギュエェェェェェ!!」グリフォンは引火してじたばたもがき回る
黄金の炎はいくら転げまわっても消えず燃え盛る
だがその瞬間グリフォンは目をギラギラさせてエルローラへと飛びつく
アイツ!エルローラを道連れにする気かっ!!
「エルローラ!!」
エルローラは目を開け「大丈夫・・・」
杖を回して
「風の精霊よ・・・嵐の如く吹き荒れろ!!フィストストーム!!」
風が現れグリフォンは風に阻まれ前に進めない
「ギュ、ギユェェェ・・・・」
地面へとドタン!!と落ちてボウボウと燃え盛る
その瞬間大きい魂が現れて俺の口へと飛び込んでくる
「ガブッ!!」喰らうと体の傷が癒えていく
「ふぅ・・・ソウルチャージに使うか治癒に使うか選べるってのはお得だな」
エルローラは座って「もう・・・全くなんでこんな大型魔獣が山に住みついてるのよ・・・王国の部隊が派遣される程の敵なんだよ!?」
俺は溜息を吐いて「ハァ・・・怒ったって仕方ないだろ、居たんだから。それよりも歩いて進まないと」
エルローラは嫌そうに「疲れたぁ・・・」
エルローラを見た後俺は地形や風景を見渡し「行ってみるか・・・エルローラ!また飛ぶぞ!」
「えぇ!?こんなに視界が悪いのに!?」
「何とかしてみる」
エルローラは溜息を吐いて「ハァ・・・まぁ私が悪いし分かったわ、危ないと思ったらすぐ中止してね」
「おう!」
俺は翼を開いて準備運動して、エルローラを背中に乗っける
「行くぞ!」
「うん!!」
霧の中に飛び立つ、地形は大体見える範囲で予想できる、かなり急に下りになっている
これなら上昇できるかもしれん
その時丁度良く風が吹き風を翼で掴んで羽ばたく
高度はみるみる上がり霧を抜ける
ふぅ・・・予想通り抜けられた
俺の目だと若干の地形は霧の中でも見えるから、その先がうっすらと見えていた、もしかしたら気のせいかもと思ってたけど気のせいじゃなかった
霧を抜けるとエルローラがホッと胸をなでおろし「あぁ・・・怖かった・・・」
エルローラは安心すると景色を見渡してのんびりし始める
俺も全然余力あるし、飛び続けられそうだ
できるなら飛んで距離を稼ぎたい、その騎士は飛べないだろうから、圧倒的に逃げるならこちらにアドバンテージがある、あの山も下山したら一泊必要だろうし・・・
そろそろ村についてる頃かもしれないな・・・村の連中も余計な事しなければいいんだが・・・
――――――
村にライオンのヘルメットの騎士がやってきた
「アレアレ?なんかものすごく警戒されてるかんじぃ~?」
村人がギラギラした目で見られ戸惑っている「ギャハハ!そりゃ無理ないかドラゴンちゃんを信仰してるんだもんね~・・・っと!」
騎士はピッケルを持った人を見て「鉱山があったのか!そりゃ俺が手出ししたら国際問題になっちゃいそうだから手出ししないでおこう・・・あの人にぶちキレられたら面倒しだねぇ~」
大主が歩いて騎士に近寄り「レイヤール様をどうする気なんだ?お前は」
騎士は頷いて「そりゃもちろんドラゴンの装備さ!大昔にもドラゴン居たらしいけど行方不明だからとうに諦めてたんだけど・・・居るなら欲しいじゃん!」
大主が歯ぎしりして今にも手出ししそうな感じであったためエルローラの母親が大主を神社へと押し込む
「ここの村は一切貴方は支援したりしない、用が無いなら早々に行って、私達はあなたを止める力も無いから早々に立ち去って、皆いつあなたに襲いかかるか分からないから」
「おう!こりゃおっかない!アンタ良い人だねー、お言葉に甘えて早々にトンズラさせてもらうとするよ・・・」
馬に乗って行こうとすると「そうだ!!あんた良い人だから言っておくよ!!」
騎士が馬から降りて母親の耳に「あんたらが信仰してるドラゴンはとんでも無い奴だよ・・・いずれ放置していれば娘は死ぬぞ・・・じゃあねギャハハ!!」
母親は騎士につかみかかり「お、おい!!それはどうゆう事だ!?」
「自分で調べれば~?帝国の書物庫の黒竜伝説第5章に記されているよ~ギャハハ!」
そう言って行ってしまった
「あいつ・・・一体・・・」母親は神社へと走り
「大主様!聞きたい事がある、レイヤールと私の娘が一緒にいたらアイツは死ぬと言っていた!!あんた伝説については全て知っていると言ってたな!!話せ!!」
大主は溜息を吐いて「いずれ話そうと思っていた・・・竜巫女はドラゴンの手足になる存在と・・・もう一つ重要な役割がある・・・それは・・・」
――――――
俺達は高度が下がって行って「ここまでだな」
俺が着地するとエルローラは飛び降りて「ふぅ!山があんなに遠くに!これなら馬でも1日以上はかかるからだいぶ引き離したよね!」
「あぁ、もう一つ山を越える前にセルフィア村という村があるらしい。そこまでは今日中になんとか辿り着きたいから頑張れよエルローラ」
エルローラは体を動かして準備運動すると「エルローラの上でばっちり休ませてもらったから大丈夫!エルローラの方こそ大丈夫?疲れてない?」
「ああ、問題ない、翼と足とは全く別の疲れ方だしな」
エルローラが頷いて「それじゃ!行こうか!」
俺も頷いて歩くと胸が苦しくなった
「っ!?ウグッ!!ッガ!!」
胸が苦しい、なんだこの感情・・・これは・・・餓え?
息が上がり心拍数が上昇している、体が熱い!
『オナカ・・・スイタ・・・』
俺は意識が朦朧とし始めエルローラを見て「エ、エルローラ・・・」
エルローラが気が付いて「レイヤール!?だ、大丈夫なの!?ちょっと休んだ方が・・・」
俺の左腕が勝手に動いてエルローラの腕を掴む
『な、何やってんだ俺の体!!動け!動け!!』
そうすると俺の体は信じられない行動を始めた、口を開け捕食の準備を始めた
だが声は出せないし、体は動かない、まるで操られているように
エルローラは猛然としていて「レ、レイヤール・・・?」
『エルローラ!!頼む逃げてくれ!!』
だが俺の声は届かないし聞こえない
俺の体は姿勢を低くして獣のようにしている
レイヤールは異様な雰囲気に気づいて「レ、レイヤール!まさか・・・!」
そうして頭に何度も俺の声で響く『人間ノ魂ガ・・・欲シイ・・・オナカ・・・スイタ』
『やめろ!!やめろぉぉぉぉぉ!!』
―――――――
大主が喋った「竜巫女のもう一つの役割は時が来れば身を捧げ・・・竜の魂を清める事」
母親が耳を疑う「身を捧げる・・・?あんた!!まさか!!」
「その通りだ・・・竜の魂は魔獣の魂を喰らい過ぎると、己の魂も魔獣へと化そうとする、だからそれを抑制する・・・つまり竜は時として人の魂が必要となる時がある、その時は竜巫女が他の者を食わせぬため・・・身を捧げる」
母親は大主をぶん殴り「貴様!!私の娘がそうなるのを知ってて・・・!レイヤールもそんな事は望んでない!!」
大主は自分の頬を撫でて起き上がり「これは運命なのだ・・・それにそう焦るでない、過去の竜も暴走するまでの間は3年以上期間ごとになっていた、だからすぐに必要になるわけではない!」
「それでもエルローラとレイヤールを引き離さないと!!」
母親は走り始める
「最後まで話を聞け!!」
母親が振り向くと「それを抑止するアイテムを奴に持たせた!」
「本当に効果はあるのか?」
「分からぬ・・・だが今は信じるのだ無事である事に」
――――――
エルローラは俺の異変を感じ取り「レイヤール!!お願い正気に戻って!!」
『エルローラ!駄目だ!!早く逃げろ!!逃げてくれ!!』
俺の体はガントレットの腕でエルローラの首を掴んだ
『やめろ!!やめてくれ!!』
エルローラは俺のガントレットの腕を持ち「レ、イヤール・・・」
苦しそうに俺の目を見てくる
だがその瞬間だった、俺の角に取り付けた輪っかの刻印が輝いて
俺の首に取りつき引き締めてくる
「っが!!」
く、苦しい!し、死ぬ!!
俺は意識を失う
「もう、駄目だ・・・」
明日もしかしたらいつもの時間に間に合わないかもしれないです・・・
理由は会社で残業がありそうだからです・・・