目的地の連想
俺達は兵士から貰った地図で港町のロイヤール港へと向かうため南へと歩いていた
エルローラがワクワクしていて「ねーねーレイヤール!海に行けるんだよね!?海に!」
「あぁ~・・・確かに船にも乗るしそうなるな」
エルローラは目を瞑り想像を膨らませる「あぁ~どんな感じなんだろう・・・広くて広大な感じだって聞いたけど、向こう側の大陸とか見えたりするのかな!?」
俺は苦笑いして「それは無いと思うぞ・・・向こう側の大陸には数百キロとかある場合があるんだから見えないと思うぞ?」
エルローラはそれでも期待を膨らませ妄想している。
あぁ~後で大した事無くてガッカリさせちゃったらどうしよう・・・
森の中を歩き続けていると早速だが魔獣が襲いかかってきた
俺が初めて戦った魔物の狼だ
俺が作業するような顔でぶん殴ると、いつもより拳が軽く感じて思いっきり殴れた
「キャウン!!」魂がフシューと現れて俺が口からの飲みこむ
「ゴクン!」
「ごちそう様・・・」
エルローラが辺り見回して「この辺は私達が狩りをしている範囲の丁度外だから魔獣がここに逃げて溜まっているのね」
「あんまし派手に倒し過ぎると村へと行きそうだから、ある程度はセーブして行こう」
「そうだね」
思い返せば俺達も随分と魔獣退治も慣れた物だ、昔はエルローラは怯えてパニックになっていたのに・・・
俺も戦いなんか無縁の生活だったし戦闘に慣れるのも大変だった
意外にも人が歩いて踏み固められた道があり驚いた
「なぁエルローラ、ここは人は通るのか?」
エルローラは頷いて「うん、たまにだけど旅人とかが来るよ?」
「旅人?やっぱりごってり装備で魔獣やっつけます!みたな集団なの?」
「ううん、確かに剣は持っている人が多いけど、昔はそんなに魔獣も居なかったから」
「つまり最近になってたくさん出てきてこういった道も危険だから旅人も来なくなっちゃったって訳か」
エルローラは寂しげに頷く
「うん・・・」
「全く魔獣が増える原因はなんだろうなぁ」
「国が総力を挙げて研究しているみたいだけど原因不明だって」
「まぁそんなんだろうなぁ・・・」
歩き続ける事1時間ほど
「よし・・・じゃあ休憩しようか」
「そうだね!」
俺は村で作った木製の水筒を手に水をゴクゴクと飲む
エルローラが水筒に手を当てて「氷の精霊よ・・・アイスブロック!」水筒の中に氷が出来上がりゴクゴクと飲む
「うん!冷たくて美味しい!」
「なんだよそれ、俺にもやってくれよ」
エルローラは俺を見て「それじゃ、私に何かご褒美頂戴」
「えぇ~・・・褒美って言ったって・・・っお?」
側に花がたくさん生えていたので編んで指輪を作ってやる
「ほれ、俺の冷水にしてくれ」
エルローラは満足そうに受取り「えへへありがとう、氷の精霊よ・・・アイスブロック!」
俺の水筒の中で1か所が綺麗に正方形の氷が出来上がり、水筒を回すとヒンヤリした冷水になる
やっぱり冷たい水が大好きだ、ジュースとかよりも俺はナチュラルな冷たい水が好きだからな
エルローラが花の指輪を見て「それにしてもレイヤールって器用よね、そんな大きな手なのに」
「うーん・・・なんでかな」実際言われて思った、比較的大きい手なのに器用なのだから
実際前世の人間の頃に比べて一回り大きい、やっぱり昔に色々弄ってたから自然と慣れているのかもしれない
エルローラにもいずれ話しておかないとな・・・俺人間だったって事・・・なんかこう言い出しにくくなってしまった
俺が思いつめた表情をしているとエルローラが心配してくれて「どうしたの?やっぱり命が狙われてると思うと不安なの?」
「あ、あぁいや違うんだ気にしないでくれ」
休憩も終わり再び歩き出すが・・・こうも景色が変わらないと退屈な気分になってくる
「エルローラ確か地図だとこの山越えると景色が変わって草原になるのか?」
「そうみたいだけどね・・・山のふもとまでには今日中に行きたいね」
エルローラの言う通りだ、地図では山のふもとには旅小屋があるらしい。だったらそこで一泊して行きたい
俺は歩き続けると急に勾配がきつくなってきて歩きづらくなってきた
「エルローラ、足元にきをつけろ」
「大丈夫よ子供じゃないんだからキャ!!」
案の定足を滑らせて俺が大きい手でエルローラの腕を掴む
「はぁ・・・」
エルローラは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている
「大丈夫だ、16歳って言ったらまだ子供だから」
「15歳で成人なんです!!」
そうだったな、前世の感覚だとまだ子供だからな
俺が保護者、エルローラが子供って感覚がどうしても抜けない
だがそれにしてもキツイ勾配だ、俺はエルローラを背中に背負い
「よし・・・試してみるか・・・」
「試すって何を?」
「こうやって――」
俺はジャンプと同時に翼を羽ばたいてピョンピョン跳ねて上って行く
「お、おぉぉぉぉ!?」エルローラも最初はビクビク俺の背中に顔を隠していたがだんだん楽しくなってきたらしく
「凄い凄い~!!」
思いつきでやってみたが結構うまく行くもんだな
そうしてあっという間に登りきると大きな山が見える、雲の上まであるようだ
「これ登って降りるのか・・・こりゃキツイ・・・それに今の装備で大丈夫かな?」
エルローラが不思議そうに「大丈夫って何が?」
「圧倒的に服が足りてないんだ」
「服?」
「そう、山ってのは気温の変化が激しい所なんだ標高1000m超えるとなると気温もだいぶ変わる、体温調節できる装備が必要なんだ、俺はドラゴンだから大丈夫かもしれないけど・・・エルローラは人だろ?」
エルローラはフフーンと自慢するように笑い「氷の精霊よ!我に一時の冷気を届けたまえ!アイスブリーフ!」
エアコンのクーラーに当っているような涼しさがエルローラの周囲に現れる
「おぉ!?」
エルローラは自慢するように「どう!?私の魔法!」
「おお・・・これはすげぇ、温かいのもできるのか?」
「属性の反転だから楽だわ!」
うん問題無いな、山に登って低体温症でエルローラが死にましたなんて俺は御免だからな
俺は振り向いて「さてと・・・じゃあ予行練習って事でやってみますか」
「予行練習って?」
俺が背中に乗れ!と指を指してエルローラが察してジト目で「まさか・・・飛ぶ気?」
俺が頷くとエルローラは超不安そうに「だ、大丈夫なの?」
「多分」
「多分!?」
「まぁ駄目そうなら滑空に切り替えて着地するから安心しとけ」
「う、うん・・・」
俺は思い切って飛び立つが、翼を羽ばたいてもやはり高度の上昇はまだ無理そうだが、飛べている
エルローラも驚いて「すごい!!飛んでる飛んでる!!」
さてと・・・風向きを感じて・・・翼に角度をつけるイメージで・・・
風が吹いた瞬間翼に角度をつけるとブワッと高度があがる
「上がった!?」
なるほど、コツが掴めてきた
風が吹いた瞬間、空気を翼で掴む感じで羽ばたけばいいのか!
俺は風が吹いた瞬間バサッ!と羽ばたくとグワァ!!と高度があがる
エルローラは空の景色に感動して「凄い・・・これが・・・世界!」
あれだけ大きく見えた山が小さく見え、全てが小さく見える
エルローラが指を指して「見て見て!村が!」
確かに村が見えた
俺も空の景色は飛行機で見た程度で自分で飛んだのは初めてで気持ち良かった
これがドラゴンとしての竜生か・・・本当に悪くないかもしれない
だが山へと近づいた瞬間風が吹かなくなり高度はゆっくりと下がって行く
「向こう側まで飛ぶのは無理そうだ、予定通り山小屋へと向かうぞ?」
エルローラも頷いて「分かった!」
山小屋へと向かい俺はエルローラをお姫様抱っこして「よっこらせっ!っと」
高度を落した所でズドン!と地面に着地する
「うん!やっぱりドラゴンならこのぐらいの衝撃問題ないか」
「着地も完璧じゃない、練習してたの!?」
「うーん・・・イメージトレーニング?」
「何それ・・・」
「まぁ結果オーライって事で」
小屋は比較的ボロだが使いたくない!と思うほどでは無かった
ベットは綺麗に折りたたまれ俺はベットを広げて準備する
エルローラがベットに座り一息つく「ふぅ・・・ねぇレイヤール・・・」
「ん?」
「私・・・怖い」
「?」
「レイヤールが次死んだら戻ってくる保障はないからさ・・・」
「・・・・・・」
確かにそうだ、あのTシャツの子供が言っている事も全てが正しいかどうかと聞かれたら本当だと確証はない・・・正直回数付きの死亡なのかもしれないし
エルローラは俺に抱き着いて来て「レイヤールと会えなくなるのだけは絶対に嫌・・・もしそうなったら私も死ぬ」
エルローラ・・・・・・
俺も翼で包んで「俺も自ら命を投げ出すような事は絶対にしない・・・もしこの力が本当だったとしても・・・自分の命を捨てるような事は絶対にしない今ある“生”を大事する」
エルローラは笑って「絶対に死なないで」
「あぁ、約束する」
しばらくするエルローラが俺のマフラーの匂いを嗅いで
「このマフラー・・・懐かしい匂いがする・・・」
「懐かしい匂い?」
「おばあちゃんの匂い・・・」
「おばあちゃん?」俺が訪ねるが返事は無く、俺の腕の中でスースーと寝ていた
無理も無い、まだ15歳の女の子にここまでの長距離移動は体に堪える
俺はエルローラを優しくベットに寝かせ、俺も自分の布団へと入ろうとすると俺を掴んだ腕を放さなかった
「エルローラ・・・」俺も添い寝してやる事にした